「安全保障の問題である」
根拠として示されたのは、供給網とサイバーセキュリティである。
商務省は、米国が海外製のドローンと重要部品に依存していることが安全保障上の脆弱性を生んでいると結論づけた。実質的に念頭にあるのは中国製である。
民生用ドローンの世界市場は中国メーカーの寡占状態が長く続いてきた。米国の農業、測量、インフラ点検、警察や消防の現場でも同じ機体が使われている。
関税はその依存を断つための道具として設計されている。国内メーカーを育てるまでの時間を、価格差で稼ごうという発想である。
サイバーセキュリティが理由に挙がるのは、ドローンが飛行の記録と撮影した画像を扱う機器だからである。インフラや農地の詳細なデータが海外の事業者の管理下に置かれることを、米当局は以前から問題視してきた。
すでに連邦政府機関の調達では特定国製の機体を排除する措置が取られており、今回はその範囲を民間市場まで広げた形になる。
現場のコストが先に動く
ただし国内の生産能力はすぐには育たない。
先に動くのは、いま機体を買っている側のコストである。二十五キロを超える機体は、農薬散布や大型の測量、長距離の点検で使われることが多い。
赤外線カメラを積んだ機体は、太陽光パネルの不良検出、建物の断熱調査、夜間の捜索救助で使われる。どちらも代替が効きにくい用途にあたる。
そこに百パーセントの関税がかかれば、調達価格は単純に倍になる。機体を使う事業者にとっては、更新のタイミングを遅らせるか、価格を発注元に転嫁するかの判断が要ることになる。
日本は軽減の枠に入った
一部の国と地域には軽減税率が用意されている。
対象に挙がっているのは欧州連合、日本、韓国、スイス、台湾、リヒテンシュタイン、英国である。
日本の産業用ドローンメーカーにとっては、米国市場での価格競争力が相対的に上がる方向に働く。もっとも、部品の多くを中国から調達している場合は、原価の側で影響を受ける可能性が残る。
部品の一部に対する関税は二〇二七年二月九日に発効する予定になっている。この半年ほどの猶予をどう使うかで、各社の立ち位置は変わってくる。
「機体より部品が難しい」
ドローンの国産化でよく指摘されるのは、完成品の組み立てより部品の調達のほうが難しいという点である。
モーター、バッテリー、飛行制御の基板、カメラのセンサー。いずれも中国の供給網に組み込まれた品目で、単価が低く量が出るため、他国で作ろうとすると採算が合いにくい。
米国内にも産業用ドローンの製造企業はあるが、多くは部品を輸入して組み立てる形をとってきた。完成品の関税だけなら国内メーカーには追い風になる。
だが部品にも関税がかかれば、その恩恵は薄まる。二〇二七年二月という時期がずらして設定されているのは、その間に調達先を移す時間を見込んだものだと考えられる。
二三二条という道具
通商拡大法二三二条は、安全保障を理由に大統領が関税を課せる仕組みである。
議会の承認を要さず、対象品目も行政の判断で決められる。近年は鉄鋼、アルミ、自動車と適用範囲が広がってきた。
ドローンが加わったことで、この枠組みが完成品だけでなく部品レベルまで及ぶ形が示されたことになる。
供給網を国内に戻す政策としては直接的だが、育つまでのあいだ誰がコストを負担するのかという問題は残る。今回は現場の事業者がその位置にいる。
まとめ
- 九月三日に発効した米国の新関税は、最大離陸重量二十五キロ超または赤外線カメラ搭載のドローンに最大百パーセントを課す。それ以下の機体にも二十五パーセントがかかる
- 農薬散布、インフラ点検、太陽光パネル検査など代替の効きにくい用途で調達価格が上がり、負担は当面のあいだ現場の事業者に乗る
- 日本を含む一部の国と地域には軽減税率があり、部品の一部への関税は二〇二七年二月九日に発効する
出典・参考
- 米大統領布告 通商拡大法232条にもとづく無人航空機システム関税(2026年8月13日署名)
- 米商務省 産業安全保障局 調査結果
- KPMG TaxNewsFlash
- Inside Unmanned Systems
- Mohawk Global Trade Advisory



