「海峡の5分の1」になった
ホルムズ海峡を通過するタンカーが今週に入って航路変更に動いている。
英国の海上保険会社ロイズ・マーケット・アソシエーションによれば、空爆のニュースが流れた直後から約七割のタンカーが迂回ルートへと切り替えた。 一日あたりの海峡通航量は通常の五分の一にまで落ち込んだという。
スエズ運河を経由する迂回ルートは距離が大幅に伸びる。 輸送日数が増え、燃料費と戦争危険保険が乗り、最終的な輸送コストは通常の二倍を超えるとされる。
この保険コストの上昇は、海運会社の経費に乗って最後は荷受け側の価格に転嫁されていく。 日本が輸入する原油や液化天然ガスの多くは、このルートを通って届く。
95ドルが示すもの
ブレント原油先物は週明け比で十一ドル上昇し、一バレル九十五ドルを超えた。
国際エネルギー機関(IEA)は、ホルムズ海峡が完全に封鎖されれば世界の原油供給量の約二十パーセントが消えると試算している。 日本はこの影響を特に受けやすい立場にある。
リヤド在住のエネルギーコンサルタント、アフマド・カリミ氏はこう話す。「短期的にはサウジの財政には追い風だが、地域の不安定化は長期的にサウジ自身にも跳ね返る。イランはすでに迂回路を使った輸出ルートを持っているので、空爆で供給量がゼロになるとは思わない」。
現地時間の九月初旬、サウジアラムコの株価は続伸した。 一方でアジア市場では精製業者の原料調達コストが一気に上昇し、週内に修正されるかどうかは見通せない状況にある。
「また繰り返すのか」
在日イラン人コミュニティに属するある人物はこう言った。「二〇一九年にも同じことがあった。そのたびに一般市民が割を食う。核の話は政治家がするが、値上がりするのは日常の食料品だ」。
イランのファルハニ副外相は「敵対行為が続けば、核合意の枠組み自体を破棄する」と警告を発した。 米国務省はこの発言に対してまだ正式な反応を出していない。
カタールとオマーンを通じた外交チャンネルは継続しているとされる。 停戦の具体的な枠組みが文書化されたという発表は、記事執筆の段階では確認されていない。
イラン革命防衛隊の報道官フセイン・モヘビは「米国は新たな攻撃を後悔することになる」と述べた。 この種の報復予告が実際の軍事行動につながるのか、国内向けの姿勢表明にとどまるのかは外から判断する材料が少ない。
日本への距離
日本では電力各社が代替調達先の確保に動き始めた。
政府内の会議では「原発の稼働率が上がる前の二〇一一年以来、最も厳しい調達環境になる可能性がある」との見方が出たとされ、複数のエネルギー業界関係者が同様の認識を示している。
ガソリン価格はすでに上昇基調に入っている。 電気料金への転嫁は通常三カ月から六カ月の遅れを伴うため、家計への影響が表面化するのは年末以降になる可能性がある。
海峡の緊張が長引くほど、前線から遠い場所での影響の割合が増えていく。 それが半年という時間が持っている性質だ。
日本の企業が中東向けに輸出している製品も、逆方向の輸送コスト上昇に影響を受ける。 エネルギーだけの問題ではなく、貿易全体に波及する性格がある。
補助金で価格が据え置かれている間も、石油会社の仕入れコストは市場連動で動いている。 一定期間ごとに補助金の水準を見直す際に、この乖離が家計に届いてくる仕組みになっている。 長期的にはエネルギーの調達先の多角化が求められるが、中東依存の構造を短期間で変えることは難しい。
まとめ
- 米軍がイランの核関連施設と弾道ミサイル拠点に再空爆を実施した。ペンタゴンは精密打撃と説明したが、独立した被害確認は行われていない
- ホルムズ海峡の通航量は通常の5分の1に落ち込み、ブレント原油は週明け比11ドル上昇して95ドルを超えた。IEAは完全封鎖で世界供給の20%が消えると試算している
- イランは核合意枠組みの破棄を示唆し、外交チャンネルは継続しているものの停戦の枠組みは文書化されていない。日本の電力各社は代替調達先の確保に動き始めている
出典・参考
- Pentagon Press Briefing, September 2, 2026
- Lloyd's Market Association, Weekly Security Report
- International Energy Agency (IEA), Oil Market Report September 2026
- ロイター
- AP通信



