「訓練場の朝」が標的になった
ハドラマウト州はイエメン最大の石油産出地帯だ。
フーシ派は2022年の暫定停戦以降、この地域の制圧を繰り返し試みてきた。 停戦は公式には「継続中」とされているが、双方の戦闘は散発的に続いている。
攻撃があったのは訓練場の朝の点呼時間帯だった。 フーシ派の軍事報道官ヤヒヤ・サリア氏は声明で「作戦は成功した」と述べ、攻撃を認めた。
「訓練中の新兵が集まる時間を狙った計画的な攻撃だ」という分析が、イエメン政府軍の関係者から出ている。 今回のような朝の集合時間への攻撃は、フーシ派が政府軍の日課を監視していることを示唆している。 同日、西部のマリブ州でも政府軍の拠点が攻撃され、施設の一部が破壊された。
国境を越えた被害
同じ8月7日、フーシ派のロケット弾がサウジアラビア南部のナジュラン州に着弾した。
住宅街に落下し、市民11人が負傷した。 負傷者の中には4歳の子どもが含まれており、全身に火傷を負って地元の病院に搬送された。
ナジュラン州は2022年以前も繰り返し標的にされてきた地域だ。 「停戦期間中も、民間人は安全ではなかった」と国連の仲介関係者は述べている。
サウジアラビア政府は声明を発表し、「フーシ派のテロ行為を強く非難する」と表明した。 ただし直接的な軍事報復に踏み切るかどうかについては言及しなかった。
ナジュラン州の知事は病院を訪問し、負傷者を見舞った。 4歳の子どもは集中治療室に入っており、担当医は「全身の30%以上に深刻な火傷を負っている」と述べた。
「停戦4年」の実態
2022年4月に成立したイエメンの停戦合意は、当初6ヶ月の期限付きだった。
それが延長を繰り返し、今は半停戦のような状態が続いている。 国連が仲介した「和平プロセス」は正式には継続中とされているが、実質的な交渉は2025年から止まっている。
フーシ派は紅海での船舶攻撃を2024年から続けており、独自の軍事作戦を展開している。 「停戦」という言葉はイエメン内部の地上戦を指すものであり、フーシ派の全軍事行動を縛るものではないというのが彼らの立場だ。
今年に入ってからのフーシ派の攻撃回数は、昨年同期比で約37%増えている。 国連特使のハンス・グルンドベルク氏は「停戦の枠組みは崩壊寸前だ」と警告した。
フーシ派は現在、イランから弾道ミサイルや無人機の部品を輸入し続けている。 2023年の国連兵器禁輸決議違反だが、実効的な摘発は行われておらず、武器供給の流れは止まっていない。
ハドラマウトの石油が狙われている
ハドラマウト州には、イエメン全体の石油埋蔵量の6割以上が集中している。
この地域を制圧すれば、石油収入を巡る交渉で圧倒的に優位に立てる。 フーシ派が繰り返しハドラマウトを攻撃する背景には、この経済的な争奪戦がある。
石油施設そのものは今回の攻撃では標的にされていないが、軍の訓練場を壊滅させることで政府軍の防衛能力を削ぐ狙いがあるとみられる。 国際エネルギー機関(IEA)はハドラマウトの石油生産停止リスクを注視しており、アジア向け輸出への影響を分析中だ。
ハドラマウト州は、イエメン暫定政府の中でも比較的安定していた地域だった。 今回の攻撃でその安全神話が崩れたことで、民間の石油企業が進めてきた石油田再開発計画も一時停止する見通しになった。
ハドラマウトの訓練場で死んだ兵士たちの家族は、何に抗議すればいいかわからないと現地メディアは伝えている。 停戦という言葉が使われ続ける間も、戦争は止まっていない。
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