「迎撃弾が尽きかけている」
ゼレンスキー大統領は8日、自身の声明でこう述べた。 「防空の弾が尽きかけている。西側のパートナーに何度も伝えているが、供給が間に合っていない」。
今回の攻撃でロシアは151機の無人機と6発のイスカンデルM弾道ミサイルを使用した。 無人機の大半は撃墜されたが、弾道ミサイルは1発も止められなかった。
パトリオット迎撃ミサイルの備蓄が消耗していることは、ウクライナ軍の内部でも認識されている。 米国の追加供与は議会での承認が遅れており、前線では「ないものを前提にした運用」が続く。
パトリオット1発でイスカンデルを撃墜するには、迎撃ミサイルを2〜3発使う必要がある場合が多い。 ロシアが1晩に複数の弾道ミサイルを撃ち込む作戦を続ければ、備蓄はさらに速く枯渇する。
ウクライナのザルジニー元総司令官は今年7月、メディアのインタビューで「防空の弾薬不足がウクライナの最大の脆弱性だ」と述べた。 当時は「元」司令官の発言として軽く扱われたが、ブロワリへの攻撃はその懸念が現実になった一例だ。
ブロワリは「遠い後方」ではなかった
ブロワリはキーウ市街から北東に約20キロの住宅地だ。
今年に入ってから、この地区には数回の着弾がある。 にもかかわらず多くの住民が「シェルターに入るほどではない」と考え、地下に降りていなかった。
「夜中に警報が鳴るたびにシェルターに行けるか。仕事がある、子どもがいる、老いた親がいる」。 近くに住む会社員のセルヒー・ドボルニコフさん(42)はそう話した。
3歳の子と祖父母がいた家族も、同じ判断をしていたかもしれない。 ウクライナ全土で今夜も何万人もの人が同じ選択を迫られる。
7月は2022年4月以来最悪の月だった
国連人道問題調整事務所(OCHA)のウクライナ担当調整官、マティアス・シュマレ氏は8日、報告書でこう記した。 「2026年7月は、2022年4月以来、民間人の死者が最も多い月だった」。
上半期だけで民間人1,396人が死亡した。 このうち子どもは189人だ。
ロシアがドネツク州で繰り返す砲撃と、こうした広域弾道ミサイル攻撃の組み合わせが、死者数を押し上げている。 前線では毎日100人前後の民間人が避難を強いられ、UNHCRは今月中に国内避難民が700万人を超えると見ている。
病院や学校を狙った攻撃も続いており、インフラ復旧が追いつかないまま冬を迎えることへの懸念が専門家から出ている。 ロシアがエネルギーインフラを標的にする「冬季攻勢」を準備しているという情報は、ウクライナ政府も把握している。
西側は何を「約束」したか
イギリスはこの1ヶ月で、パトリオット用の迎撃ミサイル「PAC-2」を32発追加供与した。 しかし消費速度が補充を上回っており、現場では「積み上がる前に使い切る」状況が続く。
ドイツは8日、防空支援の新パッケージを発表したが、具体的な弾薬数は非公表だ。 ウクライナ外務省の報道官は「数量が非公表というのは、十分ではないということの裏返しだ」と述べた。
米議会では超党派の「ウクライナ安全保障支援法」の審議が続いているが、今会期中の採決は不透明だ。 NATOが「戦略的優先事項」と位置づける声明と、個別国の供与ペースの間には明確なギャップがある。 フランスは8日、長距離巡航ミサイル「スカルプ」の追加供与を検討中と発表したが、実際の到着は早くても3週間後とされる。
ブロワリで3人が亡くなった夜、キーウでは防空監視員がレーダーを見つめていた。 弾道ミサイルの着弾まで飛行時間にして5分足らず。それが現在のウクライナで迎撃のための猶予だ。
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