30人が死んだ前日
攻撃の前日、8月8日。フーシ派はイエメン国内で別の作戦を実行していた。
マリブ州とハドラマウト州の複数の軍事拠点に対し、砲撃とドローンの組み合わせで攻撃が集中した。イエメン国防省は「少なくとも30名が死亡した」と発表した。今年2月にイランへの米国・イスラエルの空爆が始まってから最大の死者数となった。
生還した兵士の一人はAFP通信にこう話した。 「砲撃の中で仲間が次々と倒れた。生き残ったことが信じられない」
アラムコが標的になる理由
フーシ派のアラムコ攻撃は2019年以来のことではない。過去3年間で断続的に続いてきた。
2019年9月のアブカイク・クライス攻撃では、世界の石油供給量の約5%が一時的に失われ、原油価格が1日で15%急騰した。今回のジャザン施設はアブカイクほどの規模ではないが、サウジ国内の精製能力の一翼を担う重要施設だ。
フーシ派の報道官は声明で述べた。 「サウジアラビアがイエメンへの軍事支援を続ける限り、アラムコは標的であり続ける」
施設の損傷程度はサウジ当局から非公表とされている。「鎮火した」という発表だけでは、どれだけのダメージがあったかは分からない。市場が翌日も落ち着かなかったのは、その不透明感のためでもある。
「第5条」が動き出す
8月7日、サウジアラビア、パキスタン、トルコの三カ国が「相互防衛協定」に署名した。
「いずれかの国に対する攻撃は、三カ国全体への攻撃とみなして対処する」
これはNATOの第5条と同じ論理だ。中東に独自の多国間防衛体制を作ろうという動きで、フーシ派の攻撃激化がその背景にある。
トルコのエルドアン大統領は署名式で「中東の安定に向けた歴史的な一歩だ」と述べた。パキスタン首相シェリフも「地域の平和は全体の平和だ」と続けた。
フーシ派はジャザン攻撃をこの協定署名の2日後に実行した。「三カ国の連合が機能するかどうかを試した」という解釈が、安全保障アナリストの間で広がっている。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 8月6日 | フーシ派がイエメン軍基地攻撃、30人死亡 |
| 8月7日 | フーシ派がサウジ領内を攻撃、11人負傷 |
| 8月7日 | サウジ・パキスタン・トルコ防衛協定に署名 |
| 8月9日 | フーシ派がアラムコ・ジャザン施設を攻撃 |
ガソリン代はまた上がるか
日本への影響の経路は二つある。
一つは原油価格だ。ジャザン攻撃後に市場は短期的に反応したが、アラムコが「供給への影響はない」と発表したことで落ち着きを取り戻した。ただし施設の損傷程度が後で明らかになれば、再度動く可能性がある。
もう一つはサウジアラビアの生産方針だ。攻撃が続くことで、アラムコがインフラ保護を優先して増産を渋る場面が生まれ得る。2019年のアブカイク攻撃の際、日本の石油各社は緊急在庫の確認と代替調達先の探索を同時に始めた。あのときの価格急騰は3週間で落ち着いたが、その3週間の輸送コスト増は製造業の損益にじわじわと効いた。
ホルムズ海峡の半封鎖が続く今、アラムコへの直接攻撃は「二重のショック」として市場に響く。一発の攻撃が大きく効くのは、すでに市場がぎりぎりで動いているからだ。
ソース:



