「生態系テロ」と呼んだ
プラボウォ大統領は16日の閣議で、森林・土地火災の実行者への制裁強化を指示した。個人だけでなく、関与した企業も対象にする方針だ。
大統領府の発表によると、プラボウォ氏は法務当局に処罰のあり方を検討するよう求めた。「生態系テロ」という分類まで視野に入れる。
翌17日、警察当局者モハマド・イルハムニ氏は、火災に関連して219件の捜査を始め、162人を容疑者としたと説明した。
ただし、容疑者数は火災原因がすべて人為だと確定した数字ではない。個別事件の責任は捜査と司法手続きで確かめる必要がある。
大統領が強い言葉を選んだ背景には、火を安く土地整備へ使う慣行がある。泥炭地では地表の下に火が潜り、雨が少し降っただけでは消えない。
いったん潜った火は手に負えない。煙だけが長く残り、火元から離れた街へ流れていく。
煙が「国境」を消した
被害はインドネシア国内で終わっていない。煙はマレーシア、シンガポール、フィリピンまで広がった。
AP通信は、南スマトラ州の州都パレンバンで学校が遠隔授業へ切り替わったと報じた。国内で影響を受けた児童・生徒は140万人を超える。
西カリマンタン州ポンティアナックでは、視界が1キロ未満に落ちた。航空便は数日間にわたり乱れ、消火活動そのものも煙に邪魔された。
煙害は火災現場の外へ費用を押し出す。学校は授業方法を変え、航空会社は運航を組み直し、家庭は外出と換気を控える。
マレーシアの町では、大気汚染が緊急水準に達した例も出た。火元がどの国にあるかにかかわらず、吸う空気は選べない。
煙に含まれる微小な粒子は、のどや目の痛みだけでなく、呼吸器疾患を悪化させる。屋外活動を減らせない配達員や建設作業員ほど、避けにくい負担になる。
雨なし六十日の土地
インドネシア気象気候地球物理庁は、9月前半に1637地点で60日を超える無降雨を観測した。季節区分の約81%は乾季に入っている。
太平洋の海面水温を示す指標は、平年より2.76度高かった。強いエルニーニョが、雨の少ない状態をさらに乾かしている。
9月13日の衛星監視では、信頼度の高い高温地点がカリマンタンで627カ所確認された。パプアとマルクで200カ所、スラウェシで104カ所、スマトラで86カ所だった。
高温地点は火災件数そのものではない。雲や地表条件の影響も受けるため、現地確認と組み合わせて読む数字である。
それでも、乾燥の広がりははっきりしている。政府は気象条件を変えるための人工降雨も使うが、空に適した雲がなければ水は落とせない。
日本の機材も火口へ
日本は9月10日、自衛隊の輸送艦と大型輸送ヘリをカリマンタンへ送った。約300人が参加する海外での消火支援である。
現地で活動する中原俊二1等陸佐は、インドネシア軍の運用経験から学びながら連携すると述べた。日本側にとっても珍しい任務だ。
だが、空から水を落とすだけでは泥炭火災を断ち切れない。地下水位を戻し、排水された泥炭を乾かさず、火入れより安い土地整備手段を用意する必要がある。
違法な火入れを摘発しても、次の乾季に同じ経済条件が残れば再発する。罰則は入口であり、予防の全部ではない。
企業の土地だけを調べても足りない。周辺の水路や地下水位を含め、誰が泥炭を乾かしたかまで追わなければ、火元と責任の線はつながらない。
十一月まで続く可能性
気象当局は、強いエルニーニョが2027年初めまで残るとみている。9月18日以降も、乾燥と煙の拡大へ警戒を続ける予報だ。
火災が弱まった地域があっても、広い範囲で一斉に終わるとは限らない。風向きが変われば、昨日は澄んでいた都市へ翌日煙が届く。
ラジャ・ジュリ・アントニ林業相は、火災が11月初めまで続く可能性を警告した。雨季の到来が従来の予想より遅れるためである。
政府集計では、1月から7月までに20万2000ヘクタールが焼けた。8月だけでも被害が大きく広がったと環境団体は推計している。
燃えた面積の推計には差がある。衛星で火を捉える方法と、現地で焼失域を確認する方法が異なるからだ。
同じ東南アジアでは、ベトナム北部の洪水が住宅と農地をのみ込んでいる。雨が足りない地域と、多すぎる地域が同時にある。
プラボウォ氏の「生態系テロ」という呼び方は、責任追及を前へ進めるかもしれない。次に見るべきは、逮捕者の数ではなく、火を出さない土地利用へ変わるかどうかだ。
まとめ
- インドネシアの森林・泥炭地火災は、学校、航空、健康へ損失を広げ、煙を周辺国へ運んでいる。
- 強いエルニーニョと長い無降雨が消火を難しくする一方、原因捜査では人為的な火入れも問われている。
- 強い処罰だけでなく、泥炭を乾かさない管理と、火入れに頼らない土地整備が再発防止の分岐点になる。
出典・参考
- Presiden Prabowo Tegaskan Sanksi terhadap Karhutla — インドネシア大統領府(2026年9月16日)
- Prakiraan Cuaca Indonesia Sepekan 18–24 September 2026 — BMKG(2026年9月17日)
- Indonesian president calls for stricter sanctions against forest fire perpetrators — Reuters(2026年9月17日)
- More schools close in Indonesia due to worsening haze — AP(2026年9月9日)
- Japan deploys equipment to Indonesia's Borneo — AP(2026年9月10日)






