「神聖な戦争の勝利を確信する」
朝鮮中央通信(KCNA)が9月15日に伝えた内容によると、金正恩は返信の中でこう述べた。
「ロシア連邦が国の安全保障上の利益と国際的な正義を守るために遂行している現在の神聖な戦争で勝利することを確信している」
そして「不変の支持」をプーチンと「ロシア人民」に誓った。
さらに金正恩は、友好と相互援助、そして「同盟関係」に基づき、ロシアとの共同作業を「包括的な形で拡大・深化させる」固い意志があると表明した。
「神聖な戦争」という表現は、ウクライナへの侵攻を指すものとみられる。ロシアや北朝鮮の公式声明では「特別軍事作戦」という言葉が使われることが多いが、今回はそれより踏み込んだ宗教的・道徳的な表現を選んでいる。
2年で2兆円になった「戦争収入」
北朝鮮がウクライナ戦争からどれだけ実利を得ているかについて、韓国や西側の情報機関はさまざまな試算を出してきた。
日本経済新聞をはじめ複数のメディアが報じたところによれば、武器輸出や派兵の見返りとして北朝鮮が得た外貨やエネルギーなどの収益は、3年ほどで北朝鮮のGDPに匹敵する2兆円規模にのぼる可能性がある。
2024年秋から始まったとされる北朝鮮兵士のロシア派遣は、今年9月の時点でもロシア西部各地での展開が続いているとみられている。直近では、ロシアの弾道ミサイル基地での活動も確認されたと報じられている。
武器・兵員を供与し、エネルギーと外貨を受け取る。北朝鮮にとって、ロシアとの戦時協力は貴重な収入源になっている。
ロシアが北朝鮮に渡すもの
ロシアから北朝鮮への見返りは、エネルギーだけではないとみられている。
韓国の軍事専門家の間では、北朝鮮がロシアから再突入技術や潜水艦推進技術など、軍事的に重要な技術の移転を受けている可能性が指摘されてきた。
また、国連安保理の制裁を軽視する姿勢においても、ロシアは北朝鮮の後ろ盾になっている。ロシアが拒否権を持つ安保理では、北朝鮮への制裁強化は事実上止まっている。
金正恩にとって、ロシアは「体制を守るための外交カード」として機能している。その意味で今回の支持表明は、利益の確認であり、関係の強化宣言でもある。
韓国と日本への波紋
金正恩が「同盟関係」という言葉を使ったことは、韓国と日本にとって無視できない変化だ。
北朝鮮がロシアと公式な軍事同盟に近い関係を結んだとしたら、朝鮮半島の安全保障環境は変わる。北朝鮮の軍事力が実戦経験を積みながら近代化されると同時に、ロシアの後ろ盾が加わる構図だ。
韓国政府は今年これまでにも、北朝鮮兵士の派遣と死傷状況の把握を試みており、北朝鮮がウクライナ戦場からサイバー偵察情報を収集している可能性も指摘している。
日本では、北朝鮮の弾道ミサイル発射が9月13日にも確認されている。今回の金正恩の宣言は、その翌々日に出てきた。
次に見るべき
今後の焦点になるのは、ロシアと北朝鮮の関係が「口頭の支持」から「公式な条約」へと進むかどうかだ。
2024年には両国間で相互防衛条約が締結されたと伝えられているが、その内容の詳細はまだ明らかにされていない。
金正恩が「同盟関係」と明言したことは、その条約の実効性についての一つの証言になる。
最後に一つ問いだけ残しておく。
「神聖な戦争」に勝利すると確信する北朝鮮と、その戦争を起こした国。その関係が深まるほど、東アジアの安全保障の計算はどう変わっていくのだろうか。
まとめ
- 金正恩は9月15日、プーチンへの返信でロシアの戦争を「神聖な戦争」と呼び、「不変の支持」を表明した。同時にロシアとの関係を「包括的に拡大・深化」させると宣言した
- 北朝鮮はウクライナ戦争への協力で2兆円規模の収益を得た可能性があり、軍事技術の移転も受けているとみられており、この関係は純粋な政治的支持にとどまらない
- 金正恩が「同盟関係」という表現を使ったことは、韓国・日本の安全保障環境にとって無視できない変化を意味する可能性がある
出典・参考
- North Korea's Kim vows to expand ties with Russia, backs victory in 'sacred war' — Yahoo News(2026/9/15)
- Kim Jong Un pledges 'invariable support' for Russia in letter to Putin — UPI(2026/9/15)
- Kim Jong-un vows deeper North Korea-Russia ties in message to Putin — Korea JoongAng Daily(2026/9/15)
- N. Korea's Kim vows to deepen ties with Russia in reply to Putin — Korea Herald(2026/9/15)






