ホルムズが半年前に閉まった
2026年2月末、イスラエルと米国がイランの核施設を攻撃した。イランは報復として実質的にホルムズ海峡を封鎖し、タンカーの通過を制限した。
ホルムズは1日あたり2,000万バレル前後の石油が通る場所だ。世界の石油貿易量の約20%が通り抜ける。日本にとっては、輸入原油の9割超がここを経由する。
6月に暫定停戦が成立したが、7月にイラン革命防衛隊が再閉鎖を宣言した。米国の追加制裁が重なり、実質的な通航制限は続いている。8月22日と23日の2日間、ホルムズを通過した商品輸送船は20隻未満だったと、船舶追跡大手ケプラーは明らかにしている。
なぜコメが上がったのか
コメは国内産で自給率ほぼ100%だ。なぜ輸入エネルギーが上がるとコメが高くなるのか。
農業には肥料が要る。肥料の主原料は天然ガスと原油から作られるアンモニアだ。輸送コストも上がる。農業機械のディーゼル代も上がる。コメの価格は、石油価格の「遅行指標」として動く。
食料指数全体も128.4を記録した。食品2,566品目が値上げされたが、うち24.7%が「中東・エネルギー要因」と分類されている。
ガソリンと電気も連動する
原油高はガソリン代に直接出る。
政府の補助金でかなり緩和されているが、その補助金の予算も限界がある。試算では、原油がWTI100ドルに到達し補助がなければ、ガソリン1リットルあたり235円になるとされる。
電力も同様だ。LNG(液化天然ガス)価格が上昇すると、火力発電のコストが上がり、電気代が追う。
4人家族の年間家計負担増は約11万円という試算がある。「中東の話」ではなく、毎月の出費の話だ。
食費はどこまで上がるのか
農林水産省の発表では、2026年に入ってから値上げが確認された食品は2,566品目にのぼる。うち1割強が「エネルギー・輸送コスト上昇」を主な理由に挙げた。
「何かを削る」という家庭の行動も出始めている。節約意識の高まりを示す指標として、スーパーのPB(プライベートブランド)商品の販売比率が今年に入り上昇傾向にある。コメの5,000円台は「値段を見て戻す」判断を生む水準であり、低所得世帯ほど食費への影響が直撃する。「食べる量を減らした」「主食をパスタに切り替えた」という声が、消費者調査にも出始めている。
代替調達は進んでいるが
日本は今年に入り、米国・中南米・中央アジア・アフリカから原油の代替調達を進めた。
ただし完全な代替は難しい。代替調達先からの原油は品質や輸送ルートが異なり、精製コストが上がるケースがある。また、アフリカ産の一部原油は輸送距離が長く、タンカー不足が重なると調達コストがさらに増す。
経済産業省は「国内備蓄は約120日分ある」と説明している。長期化する緊張には時間稼ぎにしかならない、と指摘する専門家もいる。エネルギーの地政学は、誰もが「うちは関係ない」と言えない場所まで来ている。
日本に外交ルートはあるか
8月5日、イラン外務省のバガイ報道官は「オマーンとの間でホルムズ通航に関する共同声明が最終段階にある」と述べた。しかしその後も合意は実現していない。
日本は外務省がUAEとイランの大使を通じた情報収集を続けているが、独自の仲介機能は持っていない。中東の地政学に直接介入できないまま、価格だけが上がり続けている。
LIXIL(住宅建材最大手)は今月、主要製品を13%値上げした。建材は食料のように「国産に切り替える」という選択肢が取りにくい分、じわじわと広がっていく。
まとめ
- ホルムズ海峡の通航制限が続く中、日本の食料指数は統計史上最高を更新し、コメは5,002円に達した。肥料・輸送・農機燃料を通じてエネルギー価格が農産物価格に遅行して反映されるため、解消は停戦後もすぐには来ない
- ガソリン・電気代も上昇し、4人家族の年間家計負担増は約11万円と試算されている
- 日本は原油代替調達を進めているが完全代替は困難で、独自の外交仲介機能もない状況が続いている
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