イランの「肺」が塞がれた
イランにとってUAEは、酸素の供給源に等しい経済パートナーだ。
直前の決算期(2025年3月〜2026年1月)、イランはUAEへ約65億ドルの非石油製品を輸出し、逆にUAEから約148億ドルの商品を輸入していた。これはイランの総輸入の30%を超える水準だ。
さらに深刻なのは外貨の流れだ。 イランが受け取る外貨の約80%がUAE経由だと報告されている。制裁で凍結された外国資産を迂回するルートを断ち切る意味が、今回の措置には含まれている。
アナリストたちは「これはイランに残された経済的逃げ道の一つだ」と評価した。
「ホルムズの次の手」を警戒する
6月の停戦交渉が頓挫して以降、ホルムズ海峡はまだ完全には正常化していない。
そこへ来て、UAEの港と金融チャンネルが閉まった。 原子力空母USSジョージ・ワシントンが中東に到着し、アブラハム・リンカーンと交替した。原油価格は1バレル94ドル近くまで上昇した。7月末以来の高水準だ。
イランは「生存型経済」と呼ばれる状態で運営されているという分析がある。制裁に慣れているため、ある程度の経済的苦痛には耐えられる。しかし今回の措置が積み重なると、その耐久力も問われてくる。
UAEが「節度を捨てた」理由
アブダビは長年、イランと米国の間でバランスを取り続けてきた。
湾岸諸国でも特に経済規模が大きく、ドバイはイランの迂回貿易の重要な拠点だった。それほど慎重だった国が今回、「全面停止」という最強の選択をした。
なぜか。直接のきっかけは、イランがエミレーツのタンカーを攻撃したことだとされる。UAEに住民がシェルターへの避難を求めるサイレンが鳴ったのは、今月に入ってからも続いていた。
「地域の安定にとって、これ以上の沈黙は危険だと判断した」。UAEの当局者は声明でこう表現したが、公式文書に個人名は出ていない。
「生存型経済」の限界はどこか
「生存型経済ならより長く経済的苦痛に耐えられる」という評価は、それ自体が両刃だ。
耐えられる、ということは、今の圧力では行動を変えないという意味にもなる。米国とイスラエルが求める「核プログラムの完全停止」まで追い詰めるには、包囲網をどこまで締め上げる必要があるのか。
UAEの参加によって、イランに残された主な選択肢はオマーンとの窓口だけに絞られつつある。 オマーンは現在、ホルムズ通航を一部緩和するための仲介を続けているが、合意には至っていない。
日本のガソリンスタンドまでの距離
原油94ドルは、エンドユーザーにとって何を意味するか。
日本はイランから直接石油を輸入してはいないが、ホルムズへの依存構造は変わっていない。日本が輸入する原油の約9割が中東経由で、そのほぼ全てがホルムズ海峡を通る。
補助金でガソリン価格はかなり緩和されているが、補助金が切れれば直撃する。 原油が100ドルに戻れば、1リットルあたり10円以上の跳ね返りが来るとアナリストは試算している。
UAEの一声は、遠い中東の話ではない。
日本政府はエネルギー安全保障の観点から中東情勢を注視しており、経済産業省は国内の石油備蓄が約120日分あることを確認している。しかし備蓄は緊急時の「時間稼ぎ」であって、長期化する緊張には対応できない。
外務省は18日以降、UAE・イラン両国の大使を通じた情報収集を強化しているが、公式コメントは出していない。日本はホルムズ封鎖時に独自の外交ルートを持っていないことが、改めて浮き彫りになっている。
8月25日現在、ホルムズを通る通航量は2026年初頭の水準に戻っていない。
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