求人数の増加と、転職希望者数の減少
dodaの8月レポートが示す主な変化は、次のとおりだ。
| 指標 | 前月との比較 | 前年同月との比較 |
|---|---|---|
| 転職求人倍率 | 0.15ポイント上昇 | 0.44ポイント上昇 |
| 求人数 | 0.3%増 | 18.7%増 |
| 転職希望者数 | 5.1%減 | 0.3%増 |
dodaの倍率は、採用予定人員としての求人数を転職希望者数で割って算出する。会員登録者を対象とし、両者の数は同社独自の定義による。日本国内に存在するすべての求人と求職者を数えた数字ではない。
前月比では、求人数の増加率は小さく、転職希望者数の減少率のほうが大きい。同じ数の求人があっても、求職者が減れば倍率は上がる。今回の上昇を「企業が急に大量採用へ動いた」とだけ受け取ると、変化の内訳を見落とす。
一方、前年同月比では、転職希望者数がほぼ横ばいのなかで求人数が18.7%増えている。月単位の動きと、1年前からの変化は分けて捉えたい。前者からは直近の人数の変動が、後者からは前年の同じ月に比べた求人の厚みが見える。
ただし、ここから採用成立数や転職後の年収まで読み取ることはできない。採用予定があっても、企業が求める経験と応募者の条件が合わなければ、採用は決まらないからだ。
ITエンジニアと事務では、倍率に大きな差
全体の2.86倍よりも、自分の仕事に近い分類を見ると違いがはっきりする。dodaの職種別データから4分類を抜き出した。
| 職種 | 2026年7月 | 2026年8月 |
|---|---|---|
| エンジニア(IT・通信) | 11.26倍 | 12.04倍 |
| 企画・管理 | 3.14倍 | 3.28倍 |
| クリエイター | 1.18倍 | 1.21倍 |
| 事務・アシスタント | 0.58倍 | 0.65倍 |
ここで注意したいのが、転職希望者を分類する基準だ。dodaは、希望する職種ではなく、直近の仕事の職種で分類している。ITエンジニアになりたい人の数に対して、未経験者向けの求人が12倍あるという意味ではない。
また、「エンジニア(IT・通信)」という区分の中でも、募集される仕事内容や経験年数は求人ごとに異なる。高い倍率だけを見て転職先を決めるより、自分が応募できる求人に絞ったときに、選択肢がどれだけ残るかを確かめるほうが判断につながる。
事務・アシスタントの0.65倍も、個人の内定確率が65%という意味ではない。求人と転職希望者の人数の比率を、応募から採用までの成功率へ置き換えることはできない。
職種変更を考える場合は、倍率の比較に加え、仕事そのものの理解を進めたい。たとえば制作に関わる仕事なら、Webディレクターになるには?で、担当業務や未経験者が準備できる資料を整理している。統計で関心を持った職種を、具体的な仕事と応募条件にまで落とし込む入口になる。
ハローワークの求人倍率と、そのまま比べられる?
求人倍率には別の統計もある。厚生労働省が8月28日に発表した一般職業紹介状況の7月分では、有効求人倍率は1.18倍で、前月と同じ水準だった。
この1.18倍とdodaの2.86倍を並べて、一方のほうが転職しやすいと判断することはできない。今回は対象月も違い、集計する求人と求職者の範囲も異なる。
| 比較項目 | dodaの今回の公表値 | 厚生労働省の今回の参照値 |
|---|---|---|
| 対象月 | 2026年8月 | 2026年7月 |
| 指標 | 転職求人倍率 | 有効求人倍率(季節調整値) |
| 対象 | doda独自の定義による求人・転職希望者 | ハローワークの求人・求職 |
| 倍率 | 2.86倍 | 1.18倍 |
季節調整値は、毎年繰り返す季節的な変動の影響を調整した数値だ。名称に同じ「求人倍率」が入っていても、異なる母集団と集計方法の数字をつなげて一つの推移として扱わないことが大切になる。
自分が使う求人サービスでどのような募集があるかを知るには、そのサービスの求人を見る。より広い雇用環境を考えるには、公的統計も併せて見る。それぞれが何を数えているかを確認すれば、数字の違いを矛盾と捉えずに使える。
応募前は、倍率から求人の条件へ進む
今回の統計を踏まえた編集部の提案は、まず希望条件を少数に絞り、実際の求人を比較することだ。応募先を増やすか、職種の範囲を広げるか、先に学習へ時間を使うかは、その結果から考えられる。
最初に、仕事内容、勤務地や出社条件、給与について、譲れない条件を書き出す。次に、条件に合う求人の必須経験と歓迎経験を分けて読む。「歓迎」に当てはまらないだけで候補から外す必要があるのか、担当者へ確認すべき点も見えてくる。
同じ職種名でも、企画を担う募集と運用を担う募集では、求められる実績が違う。職務経歴書には職種名だけでなく、担当した範囲、工夫した点、成果を説明できる材料を揃えたい。倍率は市場を見る入口だが、選考で説明するのは自分の経験になる。
比較した求人は、確認日とともに記録しておくとよい。後日、募集が終了したのか、条件が変わったのかを区別できる。掲載件数の増減だけで急いで退職を決めるのではなく、応募条件や選考の見通しを確認しながら進めたい。
求人の入口は、doda公式レポート内の職種別求人一覧からもたどれる。今回の統計には、AI導入の有無と採用増減を結びつける検証は含まれていない。IT分野の倍率の高さから、AIによって採用が増えたと原因を決めることも避けたい。
まとめ
- 8月のdoda転職求人倍率の上昇には、求人数の微増と転職希望者数の減少の両方が関わる。倍率だけでなく分子・分母を見ると、変化の中身がわかる。
- 職種別の差は大きいが、倍率は個人の内定確率ではない。未経験での転職も、実際の募集で求められる経験との照合が必要になる。
- 公的統計と求人サービスの数字は、対象月・母集団・集計方法を揃えて読む。転職活動では、統計から関心のある職種を探し、具体的な求人条件へ進むことが役立つ。
出典・参考
- doda「転職求人倍率レポート(2026年8月)」(2026年9月17日発表)
- doda「転職求人倍率レポート(データ)」(2026年8月までの数値を参照)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」(2026年8月28日発表)
※数値・参照ページは2026年9月21日確認。






