Web制作を動かす仕事
Webディレクターは、サイトの目的を制作チームが動ける形にし、完成まで進める役割です。厚生労働省のjob tagは、依頼主との打ち合わせから企画・設計、制作進行、運用までを仕事として挙げています。予算や納期、品質の管理も含まれます。
たとえば依頼主が「問い合わせを増やしたい」と話したとき、その一言だけでは制作を始められません。誰からの、どんな問い合わせを増やしたいのか。今のサイトのどこで困っているのか。公開までに何を決めるのか。こうした問いを具体化します。
仕事をイメージするために、編集部では判断する内容を次のように整理しました。
| 場面 | ディレクターが整理すること | 残す資料の例 |
|---|---|---|
| 制作を始める前 | 読者、目的、必要な情報、今回つくる範囲 | 企画書、必要な機能の一覧 |
| 制作の途中 | 担当者、確認する順番、遅れや変更への対応 | 進行表、決定事項の記録 |
| 公開の前後 | 表示や動作の確認、公開後に確かめる結果 | 確認表、改善案 |
同じ肩書きでも、記事の制作進行が中心なのか、サイト全体の改修まで担当するのかで仕事は変わります。「人と話すのが得意」という強みがあるなら、話し合いの結果を、担当者が判断に使える記録へ変えるところまで練習すると、仕事との接点が見えてきます。
未経験の入口を見分ける
「ディレクター未経験」と「Web制作を一度も経験していない」は、分けて考えたい条件です。デザイナーとして制作に関わってきた人と、異業種からはじめてWeb制作を学ぶ人では、応募前に補う知識が異なります。
job tagでは、就業に特定の学歴や資格は必要とされない一方、Webデザイナーやプログラマーなどの実務を経てディレクターになる経路を紹介しています。資格が必須でないという説明を、経験も問われないという意味には読み替えられません。
実際に、株式会社フェイバーの公式採用ページでは、Webディレクターの応募条件を実務経験3年以上とし、アシスタントは未経験者歓迎と分けています。同じ会社でも、任される立場によって入口が違います。これは1社の掲載例であり、業界全体の採用条件ではありません。
求人を読むときは、肩書きの検索に加えて、次の組み合わせを確かめてみてください。
| 求人の入口 | 特に確認したい内容 |
|---|---|
| ディレクター経験者向け | 必要な経験年数、サイトの規模、自分で担う範囲 |
| アシスタント・育成枠 | 未経験可の対象、最初の担当業務、レビューする人 |
| 制作・運用などの隣接職 | 現在の経験で応募できるか、企画や進行にも関われるか |
「未経験歓迎」という一語だけで判断せず、必須条件と歓迎条件を分けて読みます。学習中の制作物を応募資料に使えるか、入社後にどんな指導があるかも、募集要項でわからなければ選考時に確認したい点です。受付状況や条件は変わるため、応募時には最新の公式情報を見直してください。
学ぶ順番を決める
最初から多数のツールを覚えようとすると、何のための操作なのかを見失いやすくなります。ここでは、応募に向けた学習を次の順番で進める方法を提案します。企業が指定する研修課程ではなく、自分の不足を確かめるための順番です。
- Webページが動く仕組みを知る。HTMLが内容の構造、CSSが見た目、JavaScriptが動作を担うという関係を、小さなページで確かめます。
- 読者の行動から画面を考える。必要な情報を並べ、どのページからどのページへ進むかを図にします。
- 制作の進め方を決める。誰が何を用意し、いつ確認するか、変更が入ったら何を調整するかを記録します。
技術の基礎には、MDNのウェブ開発の学習が使えます。初心者向けの入門からHTML、CSSなどへ進める資料です。フロントエンド開発の教材なので、ディレクターへの転職講座とは区別して使います。
まずは1ページを自分で作り、スマートフォンで見たときに文字や画像がどう変わるかを確かめてみます。制作を経験すると、「写真を差し替えるだけ」の変更でも、縦横比や説明文、スマートフォンでの表示まで確認が必要になることに気づけます。完成度だけを追うより、どこで困り、どう確かめたかを記録しておくと、次の学習につながります。
知識を体系的に整理したい人には、Web検定のWebディレクション試験という選択肢もあります。公式案内では、企画や設計、プロジェクトマネジメント、Webマーケティングなどを出題範囲としています。学習項目を見渡す参考にはなりますが、資格を取ることと、求人の実務経験要件を満たすことは別に確認する必要があります。
企画の判断を資料に残す
次に、小さな制作テーマをひとつ決めてみます。以下は「架空の店舗が、来店予約を受け付けるサイトを作る」という編集部の練習例です。実在する案件でも、企業が指定した選考課題でもありません。
最初に「誰が、何を知り、何をできればよいか」を書きます。この例なら、はじめて利用する人がサービス内容と料金、場所を確認し、予約方法を理解できることを目的に置けます。まだ確認できない条件には、決めつけず「仮定」と付けます。
そのうえで、次の3つの資料を作ってみてください。ポートフォリオとして使う場合も、枚数より、判断のつながりを説明できることを目標にします。
| 資料 | 練習で入れる内容 |
|---|---|
| 企画メモ | 読者と目的、必要な情報、今回つくる範囲、未確認の条件 |
| 画面の構成案 | ページの役割、情報の順番、予約方法までの移動経路 |
| 進行・確認表 | 作業、担当、確認期限、公開前に確かめる項目 |
画面の構成案は、ワイヤーフレームとも呼ばれる、情報の配置を考えるための下書きです。色や装飾に時間をかける前に、「料金をどこで確認するか」「予約方法へどう進むか」を説明できる状態にします。
さらに、「写真の到着が予定より遅れた」という仮の変更を入れてみます。公開日を動かすのか、利用許可のある代替画像を使うのか、写真を使わない構成へ変えるのか。選択肢を並べ、それぞれの影響と、誰に確認が必要かを書きます。
ここで示したいのは、正解を一度で出せることではありません。わかっている条件と未確認の条件を分け、選択肢の影響を説明できることです。自主制作にはその旨を明記し、架空の依頼主や売上改善を実績として載せないようにします。
人に見てもらえるなら、作成意図を先に説明せず、資料だけで予約方法や公開までの順序が伝わるかを確かめてもらいます。迷われた箇所を直し、修正前後と理由を残す。この記録も、自分の考え方を伝える材料になります。
応募先は仕事の範囲で選ぶ
資料ができたら、求人票へ戻ります。どれだけ勉強したかに加えて、応募先が求める仕事と、自分が説明できる経験がどうつながるかを確認する段階です。
営業なら顧客の要望を整理した経験、編集なら取材先と執筆者の間で確認や締切を調整した経験などが、振り返る材料になります。ただし、関連する経験があることを、そのままWebディレクションの実務経験とは言い換えません。担当した範囲を具体的に書き、Web制作の知識をどう補っているかを添えます。
募集要項や面接では、次の点を確認すると、自分が入社後に担う仕事を想像しやすくなります。
- 企画、制作進行、顧客対応のうち、最初に任される範囲はどこか。
- 提案や見積もり、公開前の確認を誰がレビューするか。
- デザインや実装を担う人が社内にいるか、外部と協働するか。
- 給与の内訳、時間外勤務、出社・在宅勤務の条件はどうなっているか。
同じ「リモート可」でも、対象者や適用時期が同じとは限りません。フェイバーの掲載例でも、アシスタントの在宅勤務には入社年次などの条件があります。制度名だけでなく、自分が適用対象になる条件まで読むことが大切です。
進行の共有方法を具体的に知りたい場合は、小規模制作チームの案件管理ツールの選び方も参考になります。文章の企画や取材を中心に担いたい人は、テック系メディア編集者のキャリアガイドと仕事内容を比べてみてください。使うツールや肩書きから先に決めるより、日々どの判断を担いたいかを考えると、応募先を絞る軸ができます。
まとめ
- Webディレクターは、目的を制作チームが動ける形にし、完成まで進める仕事です。興味のある求人で、企画・進行・品質確認のどこまでを担うか確認できます。
- 未経験者向けの入口は、アシスタントなど職種や募集枠によって異なります。資格の有無だけで決めず、必須経験と指導体制を照らし合わせることが応募先選びにつながります。
- 自主制作では、企画メモ、画面の構成案、進行・確認表をひとつの目的でつなげてみます。完成画面に加え、なぜそう判断し、何を直したかを説明する練習ができます。
出典・参考
- 厚生労働省 job tag「Webディレクター(Web制作会社)」:仕事内容と就業経路の確認。
- 株式会社フェイバー「未来の仲間に向けて」:ディレクターとアシスタントの応募条件、勤務条件の掲載例。
- MDN「ウェブ開発の学習」:Web制作の基礎を学ぶ資料。
- Web検定「Webディレクション試験の概要」:試験の対象範囲と公式教材の案内。






