発射地点はイラクだった
イラク政府は十二日、攻撃が自国の領土から発射されたものだと認めた。
アリ・アルザイディ首相はイラン国境に接するマイサーン県の作戦司令部に調査を命じ、県の司令官を解任した。上級当局者二名が職を解かれている。
イラン系武装勢力の連合体は関与を否定した。ただし地域の当局者はAP通信に対し、イラクの民兵とイエメンのフーシ派が最近サウジの石油施設への攻撃を調整していたと語っている。
ドナルド・トランプ米大統領はダブリンで記者団に問われ、イランが背後にいるかについて「そうだと思う、おそらくそうだ」と述べた。断定は避けたが、否定もしなかった。
「代替路」が代替路でなくなる
このパイプラインが重要だったのは、地図を見れば分かる。
湾岸で積んだ原油をホルムズ海峡から出すのが平時の経路だ。海峡が使えなくなったとき、サウジには内陸を横断して紅海側へ抜けるという選択肢が残されていた。その選択肢を担っていたのが東西パイプラインである。
設計上の輸送能力は日量七百万バレル前後とされる。世界の海上原油の相当部分を、一本の管が肩代わりしていた計算になる。
無人機は、その一本を狙った。港湾でも油田でもなく、迂回路そのものを止めにきたという読み方はできる。
ブレントは百ドルを超えた
市場の反応は速かった。
十日の攻撃直後、ブレント原油は一時百十ドル近辺まで跳ねたと伝えられる。その後もおおむね百四ドルを上回る水準で推移している。
もっとも、価格がどこで落ち着くかは復旧の速さ次第だ。パイプラインの被害が局所的であれば、数週間で送油が戻る可能性はある。逆に、同じ場所がもう一度狙われるという予想が定着すれば、価格には「また止まるかもしれない」という保険料が乗り続ける。
止まったこと自体より、止められると分かったことのほうが尾を引く。市場が織り込むのはたいてい後者だ。
イラクが困っている
今回いちばん難しい立場に置かれているのは、攻撃を受けたサウジではなくイラクかもしれない。
自国の領土から隣国の基幹インフラへ無人機が飛んだと認めた以上、イラク政府は「統治が及んでいない」と告白したに等しい。首相が県の司令官を切ったのは、その穴を塞ぐ姿勢を対外的に示す必要があったからだろう。
一方で、イラク国内のイラン系武装勢力は政治の枠組みにも深く組み込まれている。強い取り締まりに出れば国内が揺れ、出なければ湾岸諸国と米国からの圧力が増す。どちらにも痛みがある。
二月末に米国とイスラエルがイランを攻撃して以降、イラクの民兵は米国関連の標的を国内外で狙ってきた。今回の攻撃は、その延長線上にあると見る向きもある。
日本の給油所まで届くのか
日本にとって、この話は遠い砂漠の出来事では終わりにくい。
原油の中東依存度は九割を超える水準が続いている。ホルムズ海峡が閉じ、迂回路のパイプラインまで止まれば、調達コストの上昇は時間差で国内価格に出てくる。
現時点で店頭のレギュラーガソリンは全国平均で百七十円前後に張りついているが、これは政府の補助金が超過分を吸収している結果でもある。原油の水準が高止まりすれば、補助の必要額が膨らみ、財源の議論が先に来る。
給油所の表示が動くまでには数週間のずれがある。九月の無人機の音は、たぶん十月か十一月の家計に届く。
まとめ
- サウジアラビアの東西原油パイプラインが九月十日から十一日の無人機攻撃を受けて停止した。ホルムズ海峡が閉ざされたあとの主要な迂回路が使えなくなった
- イラク政府は攻撃が自国領から発射されたと認め、国境の県の司令官を更迭した。トランプ大統領はイランの関与について「おそらくそうだ」と述べている
- ブレント原油は一時百十ドル近辺まで上昇し、その後も百四ドルを上回る水準にある。中東依存度の高い日本では、数週間から数か月の遅れで調達コストとして表面化する可能性がある
出典・参考
- Saudi Arabia shuts critical oil pipeline after drone attack: What it means — Al Jazeera(2026年9月12日)
- Iraq confirms attacks on Saudi pipeline originated from Iraqi territory — Associated Press / US News(2026年9月12日)
- Attack that closed key Saudi pipeline is blamed on Iran-backed militias in Iraq — The Washington Times(2026年9月12日)
- Trump: Iran likely behind attack on Saudi pipeline — The Times of Israel(2026年9月12日)
- 2026 East–West Crude Oil Pipeline attack — Wikipedia



