百七十円という線
いまの補助制度は、店頭価格が一リットルあたり百七十円を超える見込みになったときに、その超過分を国が補う仕組みで設計されている。
九月三日から九日分の支給単価は一リットルあたり二十六円二十銭だった。前の週より縮小しており、原油や為替の動きに応じて毎週見直されている。
言い換えれば、補助がなければ店頭は二百円に近い水準になっていた計算になる。三月十六日時点で全国平均が百九十円八十銭という史上最高値を記録したのは、補助の設計が変わる過渡期のことだった。
百七十円という数字は市場が決めたものではなく、政策が置いた線である。
「原油が上がると補助が膨らむ」
この構造には、あまり語られない性質がある。
原油価格が上がるほど、超過分を埋める補助の総額が増える。給油所の表示は動かないまま、財政の支出だけが静かに膨らんでいく仕組みだ。
政府は九月に入り、予備費六千百三十六億円を基金へ積み増した。原油高が長引く前提での手当てである。
家計から見れば、負担が消えたわけではない。給油のたびに払う額が抑えられた分は、税として別の形で回っている。どちらが得かという議論は簡単ではないが、コストが見えにくくなっているのは確かだ。
中東の三つの経路が同時に細る
いま原油に上向きの圧力がかかっているのは、供給の逃げ道が同時に減っているからだ。
イランによって事実上閉ざされたホルムズ海峡。九月十日から十一日の無人機攻撃で停止したサウジの東西原油パイプライン。そしてフーシ派が押さえたバブエルマンデブ海峡。
湾岸から出す、内陸を横断する、紅海を抜ける。三つの選択肢が並行して不安定になっている。
もっとも、価格がこの水準で固定されると決まったわけではない。パイプラインの復旧が早ければ、市場は落ち着く方向に振れる可能性がある。産油国の増産余地や需要側の減速も効いてくる。
補助はいつまで続くのか
現時点で、補助の終了時期は明示されていない。
政府は原油価格と為替の推移を見ながら支給単価を週ごとに調整する運用を続けている。基金への積み増しは当面の継続を示唆するが、恒久的な制度として設計されているわけではない。
過去には支給単価の縮小に合わせて店頭価格が段階的に上がった局面もある。縮小のペースが速ければ、給油所の表示は短期間で動く。
事業者にとって難しいのは、この不確実性そのものだ。運送や建設のように燃料費が原価に直結する業種では、価格の見通しが立たないと見積もりが出しにくい。
灯油の季節が近い
もう一つ、時期の問題がある。
十月から十一月にかけて、北日本では灯油の需要が立ち上がる。ガソリンと同じく補助の対象だが、家計に占める比重は寒冷地ほど大きい。
原油が高いまま冬に入れば、暖房費の負担は地域によって差が出る。集合住宅と戸建て、都市ガスと灯油でも事情が違う。
九月の中東の砂漠で起きたことは、たぶん十二月の北海道の玄関先に届く。届き方は、そのときの補助単価が決める。
まとめ
- 九月七日時点のレギュラーガソリン全国平均は一リットル百七十円で、三週間続いた値上がりが止まった。九月三日から九日分の補助支給単価は二十六円二十銭だった
- 現行制度は店頭価格が百七十円を超える見込みの分を国が補う設計であり、原油が上がるほど財政負担が膨らむ。政府は予備費六千百三十六億円を基金へ積み増した
- ホルムズ海峡の閉鎖、サウジ東西パイプラインの停止、バブエルマンデブ海峡の掌握と供給経路が同時に細っている。補助単価の縮小ペース次第で、店頭価格は短期間で動く可能性がある



