「値段がつくのを待てない」
グリーン知事が9月9日に出した声明は、直截だった。
「壊れた道路、電柱、港湾、公共施設のひとつひとつに金額が割り当てられるのを待ってから連邦政府に動いてもらう、というわけにはいかない」
米国の大災害宣言は通常、州と連邦が合同で予備被害査定を行ってから申請する。今回はその工程を省く「迅速要請」の形をとった。理由は、停電、交通の寸断、生活インフラの喪失が同時多発的に起きているからだと説明されている。
知事はこうも述べている。「州、郡、電力会社、緊急対応の要員が24時間態勢で動いているが、この影響の規模と緊急性はハワイだけで対処できる範囲を超えている」
要請の対象はカウアイ郡とマウイ郡である。知事はカウアイ島だけで被害額が4億ドル、日本円で600億円規模を超えるとの見方を示した。
亡くなった人がいる
被害は建物とインフラだけではない。
カウアイ島南部の海岸近くで、74歳の男性が遺体で見つかった。高潮に関連する死とみられている。オアフ島では、テントに大木が倒れかかり、なかにいた男性が亡くなった。
熱帯低気圧「ララ」による被害も別に発生している。こちらはハワイ郡、マウイ郡、ホノルル市郡を対象とする要請が、FEMAの審査にかかっている。二つの災害が短期間に重なった形である。
観光当局はカウアイ島への渡航を控えるよう呼びかけた。宿泊施設の受け入れ能力と道路の通行可否が回復していないためだ。
めったに直撃しない島で
ハワイ諸島は、太平洋のハリケーンにとって当たりにくい的である。
北東貿易風と海水温の分布によって、多くの熱帯低気圧は諸島の南を通過するか、接近する前に弱まる。直撃した記録が1959年のドット、1982年のイワ、1992年のイニキと数えるほどしかないのはそのためだ。
今回のローウェルは一時カテゴリー4まで発達し、その勢力を保ったまま諸島に近づいた。海面水温が高いほど熱帯低気圧は勢力を維持しやすく、太平洋中部の水温はここ数年、平年を上回る期間が長くなっている。
一度きりの気象現象から傾向を読み取るのは慎重であるべきだ。ただ、34年ぶりに「イニキ級」という言葉が使われる状況になったこと自体は記録される。
日本からの旅行者が直面すること
ハワイは日本人の海外旅行先として上位に位置し続けている。今回の被害は、その計画に直接影響する。
カウアイ島は日本発の直行便がなくオアフ島経由になるため、渡航自体を見合わせる判断がしやすい島でもある。一方でオアフ島は被害の程度が異なり、通常営業に戻っている施設も多い。
島ごとに状況が違うという点は、旅行者が最も間違えやすい部分だろう。「ハワイが被災した」という一言で全島の予約を取り消す動きが出ると、被害の小さい島の観光業まで打撃を受ける。
旅行保険の適用範囲は、大災害宣言の有無や渡航情報の水準によって変わる場合がある。予約済みの旅程がある場合は、航空会社と保険会社の双方に個別の条件を確認するのが確実である。
まとめ
- ハワイ州のグリーン知事は被害査定を待たずに連邦政府へ大災害宣言を要請し、カウアイ島の被害額を4億ドル超と見込んでいる
- カウアイ島では契約の8割超にあたる約3万件が停電し、高潮と倒木で少なくとも2人が亡くなった
- 島ごとに被害の程度が大きく異なるため、渡航判断は「ハワイ全体」ではなく島単位で確認する必要がある
出典・参考
- Gov. Green Requests Expedited Major Disaster Declaration Following Hurricane Lowell(ハワイ州知事室)
- Gov. Green warns Hurricane Lowell damage on Kauai will exceed $400M(Hawaii News Now)
- Gov. Green seeks expedited federal disaster declaration after Hurricane Lowell(Hawaii News Now)
- Hurricane Lowell remains powerful Category 4 as Hawaii braces for possible impacts(CNN)



