dodaの平均550万円は、誰の年収か?
まず、金額と一緒に調査対象を確認したい。dodaの2025年版は、2024年9月から2025年8月末までに登録した20~65歳の正社員を対象とし、調査全体の有効回答数は約60万件。年収は手取り額ではなく支給額だ。約60万件は全職種を合わせた件数であり、マーケティング職だけの人数を意味しない。[1]
同じ調査のなかでも、仕事の分類によって数字が分かれている。
| 職種区分 | 平均年収 |
|---|---|
| マーケティング | 550万円 |
| リサーチ/市場調査 | 560万円 |
| 商品企画/開発 | 538万円 |
| 販売促進/広告宣伝 | 519万円 |
出典はdoda「平均年収ランキング2025」。いずれも同じ調査の職種別集計である。[1]
「マーケター」という呼び方だけで、この4つを同じ仕事として扱うのは難しい。自社商品の利用者を調べる人、商品を企画する人、広告施策を実行する人では、担当する仕事が違うからだ。求人を見るときも、肩書きに加えて「何を担当するか」を揃えると比較しやすくなる。
この数字は、2026年9月29日時点で確認した2025年版の調査結果として読む。現在掲載されているページだからといって、2026年の給与を集計したものに読み替えてはいけない。また、正社員の給与を対象とするため、フリーランスの売上や副業の報酬の相場にも、そのまま使えない。
年代別の差は、そのまま将来の昇給額ではない
同じ「マーケティング」の年代別平均は次のとおりだ。[1]
| 年代 | 平均年収 |
|---|---|
| 20代 | 417万円 |
| 30代 | 562万円 |
| 40代 | 742万円 |
| 50代以上 | 856万円 |
ここに並ぶのは、調査時点でそれぞれの年代に属していた別々の人の平均だ。20代の人を追跡して、30代になった時点の給与を調べた結果ではない。したがって「10年働けば必ずこの金額になる」という読み方はできない。
平均は、全員の金額を足して人数で割った値である。高い給与の人が含まれると、その影響も受ける。中央値は金額順に並べた中央の値で、平均と意味が違う。平均年収を「最も人数が多い年収帯」と受け取ることも避けたい。
その違いを考える参考になるのが、同調査に掲載された「企画/管理系」全体の年収分布だ。マーケティングを含む広い区分の図であり、マーケターだけの分布ではない。低い年収帯から高い年収帯まで人が分かれていることがわかる。[1]

自分の年収が平均を下回っていても、それだけで待遇が不当に低いと結論づけることはできない。職位、経験、担当業務、働く地域などをまだ揃えていないからだ。反対に、平均を上回っていることだけで、今の条件が自分に合っているとも決められない。業務の範囲や労働時間も確認する必要がある。
job tagの数字が違うのは、職業の括りも違うため
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」で「Webマーケティング(ネット広告・販売促進)」を見ると、全国の年収は736.8万円と表示される。元になるのは令和7年賃金構造基本統計調査を加工したデータだ。同ページは、統計が必ずしも当該職業だけを表すものではないと明記している。[2]
職業の説明ページの名前と、統計でまとめている仕事の範囲は一致するとは限らない。job tagの同ページは「企画・調査事務員」等に対応する統計情報として案内されている。ハローワークの職業分類でも「企画・調査事務員」には、Webマーケティングに加え、商品企画や各種の調査に関わる仕事などが含まれる。[2][3]
このため、dodaの550万円とjob tagの736.8万円の差を「Webを専門にすると増える給与」と解釈することはできない。調査の対象者と職業のまとめ方が違ううえ、給与差を生む原因を比べた調査でもない。
数字が食い違ったときは、高い方や新しく見える方を選ぶ前に、次の3点へ戻るとよい。
- 誰を調べたか。転職サービスの登録者なのか、別の統計の対象者なのか。
- どの仕事をまとめたか。マーケティング単独か、企画や調査も含むか。
- いつのデータか。ページの閲覧日と、給与を集計した時期を区別する。
平均年収は応募先を探す手がかりになる。しかし、異なる統計から一つの「正しい相場」を作ろうとするより、各数字の対象を理解して、自分の仕事に近い条件を探す方が実用的だ。
求人票は年収幅と仕事内容を一組で比べる
次に見るのは、実際に検討している企業の求人条件だ。例えば「年収500万~800万円」という募集があっても、応募者全員に800万円を提示するという意味ではない。この幅は、すでに働いている人の平均550万円とも別の情報である。
比較用のメモには、金額だけでなく次の項目を並べておきたい。以下は求人を読み比べるための整理例であり、特定企業の条件を示すものではない。
| 確認する項目 | 書き留める内容 |
|---|---|
| 仕事内容 | 広告運用、分析、顧客施策、商品企画などの担当範囲 |
| 責任の範囲 | 施策の実行、戦略の決定、予算管理、チーム管理のどこまでか |
| 給与の内訳 | 基本給、手当、賞与、成果に連動する部分 |
| 残業代の扱い | 固定残業代の有無、対応する時間と金額などの記載 |
| 適用条件 | 経験、勤務地、雇用形態、試用期間中の条件 |
月給が高い求人でも、賞与を含む年間総額では別の見え方になることがある。月額の増加に賞与の振り替えが含まれた具体例は、ノジマの給与改定を扱った記事でも整理している。
求人票でわからない部分は、面接などで「この年収幅のうち、私の経験だとどの職位を想定していますか」「提示額には何が含まれますか」と確認する。比較する企業ごとに同じ項目を埋めれば、総額だけに目を奪われにくくなる。
年収を検討するときは、経験を成果と役割で説明する
dodaは2026年下半期の企画・マーケティング市場の見通しで、データに基づく戦略設計、実績の定量化、AIや自動化ツールを実務に使った経験を重視する傾向を挙げている。これは同社の市場見通しであり、それらの経験があれば必ず年収が上がるという証拠ではない。[4]
応募に向けた準備では、ツール名を増やすことより、「何を担当し、どう判断し、何が変わったか」を説明できるようにする。例えば広告の実績なら、期間、予算、目標、自分の担当範囲、結果を分けてメモする。成果がチーム全体によるものなら、自分が受け持った仕事を区別する。
結果の数字だけでなく、その条件も残したい。広告予算が増えた結果と、同じ予算で効率が改善した結果は意味が違う。うまくいかなかった施策も、どの仮説を検証し、何を変更したかを説明できれば、仕事の進め方を伝える材料になる。
未経験で応募する場合は、平均年収を出発点の保証額にせず、募集が求める経験と、入社後に担当できる仕事を確認する。学習中の自主制作や分析は、実務の成果と分けて示す。そのうえで、企業の公式採用ページや求人情報を使い、経験要件と給与条件が合う募集を探したい。
まとめ
- dodaの「マーケティング」平均年収550万円は、同サービスに登録した正社員の調査結果。未経験者の提示給与やフリーランスの売上とは区別する。
- job tagと金額が違っても、給与差や専門性の効果をそのまま表すわけではない。調査対象・職業分類・時期を確かめることが、相場を読む出発点になる。
- 応募先は仕事内容、責任、給与の内訳を揃えて比較する。自分の経験も成果と担当範囲に分けて説明すると、条件を確かめやすい。
出典・参考
- 転職サービス「doda」『平均年収ランキング2025』職種別データ(2025年12月1日更新)。調査の総合ページ/提供元:転職サービス「doda」。カバーも同資料の企画/管理系全体の年収分布図を使用(余白付加・WebP化)。マーケティング単独の分布ではない。
- 厚生労働省 job tag「Webマーケティング(ネット広告・販売促進)」(2026年9月29日確認)
- 厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「06 事務的職業」(2026年9月29日確認)
- 転職サービス「doda」『企画・マーケティングの転職市場動向 2026下半期』(2026年7月6日公開)






