「六人は我々の従業員だった」
ウクライナ鉄道の理事会議長オレクサンドル・ペルツォフスキーは、フェイスブックにこう書いた。「弾道ミサイルによる攻撃は七人の命を奪った。うち六人は我々の従業員だった」。
負傷して入院した人も出ている。整備用の工場は完全に破壊された。
線路は二区間が一時閉鎖され、その後復旧した。ウクライナ鉄道は戦時下でも運行を止めない方針を取り続けており、今回も数時間で迂回運行に切り替えている。
キーウ市と州全体では、この夜の攻撃で十二人が死亡し、二十一人が負傷した。死者の中にはインド国籍の人も含まれている。
一晩の被害としては、この数か月でも大きい部類に入る。
鉄道が狙われる理由
ウクライナ鉄道は、この戦争でずっと特別な位置にいる。
空路が閉ざされた国で、人も物資も鉄道が運んでいる。避難民の輸送も、外国要人の訪問も、穀物の輸送も、線路の上を通ってきた。
軍事的に見れば、鉄道は補給線である。橋や車両基地や変電設備を潰せば、前線への物資の流れが細る。
一方で、同じ線路の上を民間人が乗った列車が走っている。この二重性が、鉄道への攻撃をめぐる評価を割れさせてきた。
ロシア側は軍事関連の輸送インフラを標的にしていると説明してきた。ウクライナ側は民間輸送の破壊だと主張している。個別の攻撃について、第三者が独立に検証できている例は多くない。
今回破壊されたのは整備工場である。車両を直す場所が減れば、走らせられる列車が減る。効果はゆっくり効いてくるたぐいのものだ。
車両は買えば増やせるが、整備できる場所と整備できる人は短期間では増えない。戦時下で新造も輸入も難しい国では、この差が大きく効く。
ウクライナ鉄道は開戦後、欧州各国から中古車両の供与を受けて凌いできた。それも直す場所があってこそ回る仕組みだ。
数えられない側の労働
ウクライナ鉄道は戦争開始以来、多数の職員を失ってきた。同社は追悼のページを設けている。
この人たちは兵士ではない。制服は着ているが、軍服ではない。
戦死者としても、民間人犠牲者としても、統計の枠にきれいに収まらない層がいる。鉄道員、電力技術者、通信の保守要員。インフラを動かし続けるために現場に残っている人たちだ。
彼らが持ち場を離れれば、列車も電気も止まる。止まれば、避難も輸送も医療も止まる。だから残る。
その選択が制度上どう扱われるかは、戦後の補償の議論に持ち越されることになる。いまは、名前が公表されるかどうかの段階だ。
ウクライナ鉄道は国営企業であり、職員は公務員でも軍人でもない。危険手当や遺族補償の枠組みは、戦時を想定して作られたものではなかった。
制度が実態に追いつくのは、たいてい人が死んだ後になる。それは日本の災害対応でも繰り返されてきた順序である。
冬が近づいている
九月に入った。ウクライナにとって、冬の入り口である。
ロシア側はこの秋から冬にかけてエネルギー関連施設への攻撃を強めるとの見方が出ている。過去二度の冬にも同じことが起きた。
鉄道は電気で動く区間が多い。変電所が落ちれば、線路が無事でも列車は止まる。エネルギー攻撃と輸送攻撃は、実際には一つの問題として現れる。
迎撃側の在庫がどこまで持つかが、この冬の焦点になりそうだ。ただし気温次第で結果は変わるため、いまの段階で見通しを固めるのは早い。
去年の冬は暖冬に近い期間があり、停電の影響が想定より小さく収まった地域もあった。同じ条件が今年も揃うとは限らない。
修理の速度が攻撃の速度を上回っているうちは、線路も電気も持ちこたえる。上下が入れ替わったときに、生活の側から先に音を立てて崩れる。
確かめられるのは、九月一日の夜に、車両基地で六人の鉄道員が死んだということである。
まとめ
- キーウの鉄道車両基地に弾道ミサイルが着弾し七人が死亡、うち六人がウクライナ鉄道の職員だったと理事会議長オレクサンドル・ペルツォフスキーが公表した
- 整備工場は完全に破壊され、線路二区間が一時閉鎖された。キーウ市と州全体では十二人が死亡し二十一人が負傷している
- 鉄道は補給線であると同時に民間輸送の基盤でもある。冬に向けてエネルギー攻撃が強まれば、電化区間の運行にも影響が及びうる
出典・参考
- ウクライナ鉄道(Ukrzaliznytsia)公式発表
- ロイター
- AP通信
- キーウ・インディペンデント
- Democracy Now



