11月9日にサーバーと編集部を閉じる
ノーバヤ・ガゼータは声明で、11月9日にサーバーを停止し、事務所を引き払い、最後の号を出すとした。閉鎖までの10日間に読者向けの特別企画を掲載し、過去の記事や写真、映像を残す方法を案内するとしている。[1]
閉鎖の主体は、国外へ移った記者が運営する「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」ではなく、ロシア国内で活動を続けてきた編集部である。名前が似ていても、法人、所在地、活動条件は同じではない。今回の発表を「ブランド全体の消滅」と表現すると、国外の媒体まで閉じるかのような誤解を招く。
編集部は、自主的な事業撤退ではなく、当局による一連の措置で活動を続けられなくなったと主張した。ロシア政府の見解は発表直後には確認できていないため、閉鎖理由の帰属は同紙の説明として区別する必要がある。
言論統制だけでなく経営の入口を塞いだ
同紙の説明では、ウェブサイトはロシア国内で遮断され、印刷免許は取り消され、印刷機は押収された。それでもPDF版やウェブ記事を届けてきたが、2026年9月には編集部全体と関係者106人が「外国の代理人」に指定された。10月15日には編集長セルゲイ・ソコロフ氏が拘束された。国境なき記者団も、この経過を確認している。[3]
最後に効いたのは、記事削除だけではない。編集部が挙げた障害は次の通りだ。
- 寄付を受け取る仕組みと銀行口座を利用できなくする
- 印刷免許と設備を失わせ、紙で届ける経路を断つ
- 事務所の賃貸契約を終わらせ、編集拠点を失わせる
- 記者や協力者に法的リスクを負わせ、取材網を縮める
広告が細り、購読や寄付の決済も止まれば、ウェブサイトが一時的に残っていても給与、弁護、取材、サーバーを賄えない。閉鎖は一つの禁止命令ではなく、報道を事業として成立させる複数の入口が順に閉じられた結果である。
2022年の休刊とは意味が違う
ノーバヤ・ガゼータは2022年3月、通信監督当局から二度目の警告を受け、ウクライナでの「特別軍事作戦」が終わるまで紙面を休刊すると発表した。その後もPDFやウェブへ形を変えて活動を続けた。[4]
今回の違いは、再開条件を残した休刊ではなく、サーバー停止と事務所退去を伴う組織の閉鎖だ。アーカイブが残るか、記者が別の媒体で取材を続けるか、国外チームとどう連携するかは、閉鎖後に確認すべき別の問題になる。
同紙は過去にも形を変えて戻ってきた。だから今回も再開すると決めつけることはできない。設備、資金、雇用、法的地位の四つを戻せる見通しは、発表時点で示されていない。
六人の犠牲と調査報道の蓄積
1993年創刊の同紙は、政治腐敗、チェチェン、人権侵害、軍や治安機関を長く取材してきた。記者アンナ・ポリトコフスカヤ氏を含む記者・職員6人が殺害されている。国境なき記者団は、同紙を30年以上続いたロシア独立報道の象徴と位置づけた。[3]
編集部の発表には、死亡した同僚の名前と、取材先や読者への謝意が並ぶ。これは実績の自己評価であり、閉鎖をめぐる事実確認とは分けて読む必要がある。一方、免許取消し、編集部の指定、編集長拘束、拠点退去は、外部資料でも時系列を確認できる。
失われるのは一つのサイトだけではない。国内で取材対象に会い、資料を確かめ、責任ある編集部として訂正や防御を担う組織である。 記者が国外で記事を出せても、国内の取材源が同じ安全性で話せるとは限らない。
次に確かめるべき三つの行方
第一はアーカイブである。11月9日のサーバー停止後も、過去の記事、裁判資料、写真、追悼記録へアクセスできる保存先が示されるかを見る必要がある。
第二は雇用と取材網だ。記者が国外媒体へ移るのか、ロシア国内に残るのかで、今後得られる情報の種類が変わる。国外拠点は発信を継続しやすいが、取材源の安全や現場への接触には別の制約がある。
第三は当局の公式説明である。閉鎖発表直後に政府側の回答は確認されていない。編集部の主張を裏づける行政文書や裁判記録と、政府が示す理由を照合して初めて、個々の措置の法的な位置づけが明確になる。
まとめ
- ノーバヤ・ガゼータは11月9日にサーバー停止と事務所退去を行い、ロシア国内の編集組織を閉じる。
- 表現規制だけでなく、免許、印刷、寄付、銀行、事務所、雇用の経路が重なって失われたため、ウェブだけでは存続できなかった。
- 今後はアーカイブの保存、記者と取材網の移行、当局の公式説明を分けて確認する必要がある。
出典・参考
- Novaya Gazeta「We have been killed」2026年10月30日
- RFE/RL「Muckraking Russian Newspaper Novaya Gazeta Announces Closure」2026年10月30日
- Reporters Without Borders「Independent newspaper Novaya Gazeta announces closure」2026年10月30日
- Committee to Protect Journalists「Russian newspaper Novaya Gazeta suspends publication following official warning」2022年3月28日







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