「384人と連絡が取れない」
ネパール観光当局は26日、ラスワ郡の洪水で観光客384人の所在がつかめていないと発表した。
このうち291人が外国人だという。
国籍の内訳ではインドが100人を超え、米国や英国の出身者も含まれる。
多くは中国チベット自治区にある聖地カイラス山と、マナサロワル湖への巡礼に向かう途中だった。
夏のこの時期は巡礼シーズンにあたり、国境へ向かう道路は観光バスで混み合う。
死者数は報道機関ごとに開きがある。
産経新聞は当初「少なくとも8人」と伝え、時事通信は22人、その後の速報は55人という数字を出した。
日本経済新聞は26日、地元警察の話として95人が死亡したと報じている。
土砂と水が引かないうちは数字が動き続けると見ておいたほうがよさそうだ。
在ネパール日本大使館は、現時点で日本人が巻き込まれたという情報はないとしている。
中国側でも土石流
被害はネパール側で止まっていない。
同じボテコシ川の上流にあたる中国チベット自治区シガツェ市ギルン県でも、土石流が発生した。
国営の新華社通信は、3人が死亡し265人が行方不明になっていると伝えた。
ギルン県には中国とネパールを結ぶ主要な国境ゲートがあり、物流と巡礼の両方が集まる場所である。
中国の指導部は捜索と救助、危険地域からの住民移動、負傷者の治療、二次災害の防止を指示したとされる。
一本の川が、二つの国の集落をほぼ同時に削った形になった。
国境をまたぐ川の災害は、被害の全体像が見えるまでに時間がかかりやすい。
双方の当局が別々に数字を出すため、合計がどこかで重複したり抜け落ちたりするからだ。
ギルン港と呼ばれる通関地は、ネパールから中国へ抜ける陸路の玄関口にあたる。
ヒマラヤを越える物資の一部と、チベット側の聖地へ向かう巡礼者がここに集まる。
その通関地が土石流に襲われたことで、両国をつなぐ幹線の一本が当面使えなくなった可能性がある。
国境の物流が止まれば、ネパール側の被災地への支援物資の運び方にも影響が出かねない。
「地震が雪崩を招いた」
原因はまだ確定していない。
ネパールのカナル外相は議会で、地震が雪崩を引き起こし、それが洪水につながったとの情報があると述べた。
上流の氷河湖や土砂で堰き止められた湖が一気に決壊したのではないか、という見立ても現地から出ている。
ヒマラヤ一帯では、氷河の後退によってできた湖が決壊する災害が近年くり返し起きてきた。
ただし今回がそのケースにあたるかどうかは、現地調査の結果を待つ必要がある。
はっきりしているのは、水力発電所と橋が壊れ、谷へ入る道が細くなったという事実のほうだ。
ネパール軍が捜索に入っているが、重機を運ぶための道路そのものが流されている。
行方不明者の捜索が長期化する条件がそろってしまっている、とは言えそうだ。
谷底の一本道を走る前に
日本から眺めると、遠い山奥の話に見えるかもしれない。
ただ、観光バスが谷底の一本道を走るという構図は、山岳観光地なら世界のどこにでもある。
日本でも大雨のたびに、渓谷沿いの国道が寸断される事例は珍しくない。
旅行者の側から言えば、雨季のヒマラヤは陸路のリスクが高くなる時期にあたる。
外務省の海外安全ホームページや現地大使館の発信を、出発前に一度のぞいておく価値はありそうだ。
海外旅行保険の「捜索救助費用」の上限を確認しておくのも、地味だが効いてくる場面がある。
もちろん、雨季だから行くなという話にはならない。
巡礼も登山も、その季節にしか成立しない旅がある。
判断材料をどこまで持って出るか、という話に近い。
もうひとつ、現地からの情報が届くまでの時差も頭に入れておきたい。
今回も第一報の死者数は8人で、そこから22人、55人、95人と半日ほどで動いた。
通信が細い山間部では、被害の把握そのものが後追いになる。
第一報の数字だけで規模を判断すると、実態を小さく見積もってしまうことがある。
まとめ
- ネパール中部ラスワ郡でボテコシ川が氾濫し、地元警察は95人の死亡を確認した。観光当局は384人が行方不明で、うち291人が外国人だとしている
- 上流の中国チベット自治区ギルン県でも土石流が発生し、新華社通信は3人死亡・265人不明と伝えた。一本の川の災害が二国にまたがっている
- カナル外相は地震が雪崩を招いたとの情報に触れたが、原因は確定していない。雨季のヒマラヤに陸路で入る旅程では、保険と現地情報の確認が効いてくる
出典・参考
- 時事ドットコム「ネパールで洪水、観光客380人超不明 22人死亡、発電所も損壊」(2026年8月26日)
- 日本経済新聞「ネパール洪水で95人死亡、外国人ら380人超不明 中国でも被害」(2026年8月26日)
- 産経ニュース「ネパールで大規模洪水、少なくとも8人死亡 中国国境近く、行方不明者多数か」(2026年8月26日)
- 読売新聞「中国・チベット南部で土石流に巻き込まれ住民ら多数死傷…隣国ネパールで発生」(2026年8月26日)
- 新華社通信「中国・チベットの土石流で3人死亡、265人が行方不明」(2026年8月26日)



