OSCPとは?衛星測位を補う慣性航法の会社
自動運転車やドローンは、加速度計とジャイロで動きを測り、GNSS、カメラ、LiDAR、車輪速などを組み合わせる。トンネル、地下、高層ビル街、電波妨害下では、慣性情報の質が位置推定を左右する。
OSCPのMK2は、光ファイバーを使うジャイロとMEMS加速度計などを一体化した製品群だ。MK2E、MK2M、MK2Xは販売中、より小型のMK2Zはプロトタイプ段階と説明する。NavigationGateやZ3の2026〜2027年は目標時期であり、納期の確約ではない。[2]
| 確認する場面 | GNSSだけでは困る理由 | IMUに求める役割 |
|---|---|---|
| トンネル・地下 | 電波を受信できない | 出口までの移動量と向きをつなぐ |
| 高層ビル街 | 反射で測位が跳ぶ | 短時間の急なずれを抑える |
| 妨害・なりすまし | 誤った位置を示す恐れ | 外部電波と独立した動きを照合する |
| 屋内ロボット | 衛星が見えない | カメラやLiDARが苦手な瞬間を補う |
欧州航空安全機関(EASA)は2026年7月、GNSSの妨害とスプーフィングの発生を受け、安全情報を更新した。[3] OSCPの対象は航空機に限らないが、「衛星測位を常に正しい前提にしない」という課題は、ドローン、ロボット、車両に共通する。
光学式IMUはMEMSと何が違う?
スマートフォンや小型ドローンに広く使われるMEMSジャイロは、小さく安価で消費電力も低い。一方、わずかな測定誤差を積み上げて位置を求める慣性航法では、時間が長くなるほど向きの誤差が位置ずれへ広がる。光学式ジャイロは光の伝わり方から回転を測り、一般に低ドリフトを狙えるが、サイズ、価格、組み込み条件との交換になる。
MK2E2は、OSCPが「11自由度のハイブリッド光学式IMU」と呼ぶモデルだ。主な公表仕様を、導入時の意味と並べる。[4]
| MK2E2の公表仕様 | 数値・条件 | 導入時に見る点 |
|---|---|---|
| 本体寸法・重量 | 78×63×36mm・230g | 機体の搭載空間と重心 |
| 消費電力 | 2W | バッテリー駆動時間と放熱 |
| 出力 | RS-422 / CAN-FD、最大500Hz | 既存計算機・配線との互換性 |
| 動作温度 | -40〜85℃ | 屋外、車載、寒冷地での余裕 |
| 防塵防水 | IP57、IP67は進行中 | 現在の認証と将来予定を分ける |
| 角度ランダムウォーク | 光学軸0.03°/√hr、MEMS軸0.06°/√hr | 軸構成と必要精度を実機で照合 |
センサー単体で絶対位置は分からない。結果は時刻同期、取り付け角、振動、温度、他センサーとの融合で変わる。比較は走行時間と許容誤差から逆算したい。
実車比較の5.7m対20.5mをどう読む?
OSCPは2026年1月9日、モントリオールでMK2E2とMEMS中心のMK2M2を同じ車両に載せた比較試験を行った。21分間、最高時速50kmで走り、位置計算にはGNSSを使わず、速度情報を1Hzで入力した。両機のデータは100Hz、同一パイプラインで処理し、拡張カルマンフィルター(EKF)は使っていない。[5]
| 試験結果 | MK2E2 | MK2M2 |
|---|---|---|
| 走行終了時の位置誤差 | 5.7m | 20.5m |
| 相対差 | 基準 | 約3.6倍大きい |
| 共通条件 | 100Hz、速度入力1Hz、GNSS位置なし | 同左 |
これはOSCP自身の一回の実車試験であり、第三者試験ではない。経路、温度、振動、初期方位を変えた再現性は分からない。同社も、実運用では車輪速やEKFを加えるため両方の誤差は改善すると説明する。5.7mは保証値ではなく、条件付きの結果である。
組み込みはROS 2公開でどこまで進む?
高精度なセンサーでも、既存のロボット基盤へデータを渡せなければ評価に時間がかかる。OSCPは2026年9月22日、MK2シリーズ用のROS 2ドライバーをMIT Licenseで公開した。Ubuntu 22.04のROS 2 HumbleとUbuntu 24.04のJazzy、RS-422とCAN-FDを対象にする。[6]
GitHub上のリポジトリには、IMU、磁気、気圧、温度などのトピックと設定手順が掲載されている。[7] 公開ドライバーだけで本番運用の安全性が確認できるわけではない。導入側には次の作業が残る。
- センサーと車体座標の取り付け角を校正する
- GNSS、車輪速、カメラ、LiDARとの時刻をそろえる
- 通信断、異常値、再起動時の挙動を決める
- 実際の振動・温度・速度で誤差の増え方を測る
- 更新版ドライバーの受け入れ試験と保守責任を決める
配送ロボットの運用全体を知るならLOMBYの自動配送ロボット事業、自動運転サービスの責任分界を見るならMay MobilityのAutonomy-as-a-Serviceも参考になる。OSCPは車両そのものではなく、そうしたシステムの位置推定を支える部品層にいる。
シリーズA後の事業段階は?
シリーズAはNew Science Venturesが主導し、Montreal-based Front Row Venturesなどが参加した。OSCPは資金をモントリオールでの生産拡大、エンジニアリングと営業組織、次世代センサーに使うとしている。金額は非公表なので、調達規模から量産能力を推定することはできない。[1]
同社はカナダ国防省のDefence Drone Initiativeで適格サプライヤーになったと説明する。一方、カナダ政府の制度説明は、適格認定が契約を保証しないと明記している。[8] 「政府に採用された」と読み替えず、調達案件への参加資格を得た段階と捉えるのが正確だ。
事業段階を判断する材料は次のように分かれる。
- 確認できること:MK2製品群の仕様、販売中という表示、実車比較、ROS 2コード、資金使途
- 条件付きで読むこと:会社試験の性能値、IP67の進行中表示、将来製品の時期
- 確認できないこと:シリーズA金額、顧客別出荷数、歩留まり、年間生産量、継続契約率
- 誤解しやすいこと:適格サプライヤー認定は受注実績ではない
独立系媒体も、ラウンドが8月に閉じ、金額が非公表だったと報じた。[9] 製品性能の根拠は同社資料に依存し、独立した横並び試験は今後の確認事項だ。
導入前に確認すべき5項目
OSCPは公開価格表を掲示していない。見積もりでは軸数、目標とするバイアス性能、通信方式、数量などを伝える形だ。製品がITAR-freeと説明されていても、出荷先の輸出審査は残る。価格だけを聞くのではなく、評価機から量産保守までを同じ質問票で比べたい。
- GNSSが使えない時間は何秒・何分で、許容する位置誤差は何mか
- 光学軸は何軸必要か。MEMSとのハイブリッドで要求を満たせるか
- 車輪速、LiDAR、カメラと融合した自社条件で再現するか
- 単価、最小発注数、納期、校正、保証、故障時交換を含む総費用はいくらか
- 輸出審査、認証、防塵防水、ROS 2更新を誰が管理するか
PoCでは、同じ経路を複数回走り、GNSS復帰時の位置誤差だけでなく、方位誤差、温度、振動、再起動、通信欠損も記録する。MEMS機との差が出ても、その差によって事故回避、運行継続、人手介入の削減がどれだけ改善するかまで結び付けなければ、価格差を説明できない。
まとめ
- OSCPは、GNSSが使えない場面の位置推定を支える光学式IMUを、量産製品、実車比較、ROS 2ドライバーまで進めたスタートアップである。
- 会社試験ではMK2E2が最終誤差5.7m、MEMS機が20.5mだったが、一回の自社試験であり、導入後の保証値ではない。
- 導入判断では公開価格の有無だけでなく、必要軸数、センサー融合、実環境での誤差、保守、輸出審査まで含むPoCが必要になる。
出典・参考
- OSCP/OSCP Closes Series A Financing Led by New Science Ventures(2026年10月1日)
- OSCP/公式サイト・MK2製品群とロードマップ(2026年10月2日確認)
- EASA/EASA updates Safety Information Bulletin on GNSS interference(2026年7月3日)
- OSCP/MK2E2製品仕様(2026年10月2日確認)
- OSCP/Photonic vs MEMS: Proven on Real Roads(2026年1月9日)
- OSCP/OSCP Open-Sources ROS 2 Driver for Its MK2 Inertial Measurement Units(2026年9月22日)
- OSCP/oscp_ros2_driver(GitHub、2026年10月2日確認)
- Government of Canada/Defence Drone Initiative(2026年7月)
- TechStartups/Startup Funding News Today(2026年10月1日)





