家事を頼むまでの手間を減らす
CaSyがオンライン化したのは、家事の前後にある調整だ。利用者が依頼内容と日時を入力して見積もりを確認し、キャストが決まれば予約が確定する。訪問前にはチャットで掃除箇所などを相談し、終了後にクレジットカードで決済する。利用者には本人確認も求める。[3]
毎回、業者を探して電話をかけ、見積もりや日程を調整する負担が大きければ、困っていても依頼を先延ばしにしやすい。CaSyはこの手続きをまとめたうえで、同じ曜日・時間帯に利用する定期サービスを用意する。キャンセルされない限り、次の予約が自動で追加される。一度の掃除を売る入口と、家事を任せ続ける仕組みがつながっている。[4]
誰が、何に、いくら払うのか
CaSyの家庭向け掃除代行は、作業時間と利用頻度で料金が決まる。2026年10月29日時点では、週1回・1回2時間以上の定期利用が1時間2,790円、スポット利用は1時間3,490円。交通費は1回880円で、いずれも税込だ。[4]
週1回の定期で2時間頼めば、1回は2,790円×2時間+880円=6,460円。月に4回実施する場合は2万5,840円になる。これは4回分の試算で、月額固定の使い放題プランではない。指名や鍵預かりなどの追加費用も別にある。
ただし、2026年12月1日実施分から値上げが決まっている。同条件の定期料金は1時間2,950円になり、交通費を含む2時間の利用は6,780円、4回なら2万7,120円となる。CaSyは最低賃金の引き上げに伴う働く環境の維持と、品質向上を改定理由に挙げている。[5]
| 掃除代行の条件 | 11月30日実施分まで | 12月1日実施分から |
|---|---|---|
| 週1回・2時間以上の定期、1時間あたり | 2,790円 | 2,950円 |
| スポット、1時間あたり | 3,490円 | 3,650円 |
| 交通費、1回あたり | 880円 | 880円 |
料理代行は1回3時間以上で、食材費も別にかかる。料金の入口を安く見せるだけでは、家計が継続して支払えるかは分からない。利用者にとっては、交通費や必要時間まで含めた1回の金額が判断材料になる。[4]
定期利用者が増えても、売上のすべては利益にならない
CaSyは売上高の8割以上を定期サービスが占めると説明している。ただし「定期UU」には通常の定期契約者に加え、自治体提携のスポットサービスを定期的に使う人も含む。2025年11月期第3四半期からは子会社サンジュの定期UUも合算している。8,351人を、CaSy単体の月額契約者数と読み替えることはできない。[2]
収益の仕組みを見ると、CaSyはサービス料金を売上に計上し、サービス提供者への報酬を差し引いた金額を売上総利益としている。つまり、依頼を受けて売上が増えると、現場で働く人への支払いも伴う。手数料だけを売上とする仲介サービスとは、同じ売上額でも取引の規模が異なる。[2]
2025年12月〜2026年8月の売上原価は10億1,062万円、売上総利益は5億8,556万5,000円。そこから販売費・一般管理費5億8,596万8,000円がかかり、営業損失は40万3,000円だった。前年同期は営業利益2,277万2,000円である。連結売上には子会社の事業も含まれる。利用が伸びることと、会社全体の利益が増えることは分けて見る必要がある。[1]
予約画面の裏に、人を育てる仕事がある
CaSyは見積もりや日程調整をシステムへ移し、調整担当者の人件費を抑えることを強みとしている。利用者の評価、キャストの日報、過去の組み合わせといったデータを、次のマッチングや品質改善に使うという。画面を作るだけでなく、サービスの結果が次の運営に戻る設計だ。これは同社が説明する仕組みで、競合に対する費用差を独立して実測したものではない。[2]
家に人を迎えるサービスでは、予約の速さに加え、任せられるかどうかが問われる。CaSyは説明会・選考会と研修を受け、スキルテストに合格したキャストを訪問させる。利用者とキャスト双方の本人確認、緊急相談窓口、損害保険も整備する。保険による賠償には条件と上限があり、あらゆる損害を無条件に補う仕組みではない。[6]
予約画面は模倣できても、地域ごとの働き手、研修、利用履歴、トラブル対応を同時に積み上げるには時間がかかる。公開された運営の仕組みを見ると、こうした積み重ねが参入の難しさになると考えられる。単に登録者を集めた数だけでは、希望の場所と時刻に家事を担えるかまで説明できない。
自治体と企業が、利用の入口になる
CaSyが直近の成長要因に挙げるのは、自治体との連携だ。2026年8月末には11区市の家事・子育て支援事業に参画していた。同社の決算説明では、自治体経由の依頼増が売上を押し上げ、集客投資の最適化にもつながったとしている。2026年8月には大和総研の法人向けプラットフォーム「ハービット」を通じた家事支援サービスも始めた。[7]
企業の福利厚生や自治体の支援制度は、家事代行を知らなかった人や、費用を理由にためらっていた人との接点になる。CaSyの自治体向け案内では、利用できるサービス・対象者・利用時間は自治体によって異なり、申請などの手続きが必要だとしている。一般向けの料金と、補助利用者の自己負担額は異なる。[8]
同じ公式案内には、育児休暇中の共働き世帯が週1回の訪問で大人と上の子向けの作り置き8〜10品を頼み、炊事の負担が軽くなったとする利用者の声も載る。必要な食材やメニューは事前のチャットで相談している。企業が掲載する一事例で、全利用者の作業量や効果を示すものではないが、料理そのものと事前の相談をまとめて任せる様子が分かる。[8]
一方で、自治体向け案件の割合が高まると、入金までの時間にも目を配る必要がある。決算短信は比較的回収期間の長い自治体案件の増加などにより、売掛金が増えたと説明する。売掛金は2025年11月末の約1億3,552万円から2026年8月末の約2億420万円へ増加した。販路を広げるときは、資金を回収するまでの運営も設計する必要がある。[1]
需要を集めたあと、提供できるかを確かめる
CaSyの2026年11月期第3四半期のお客様登録数は前年同期比10.6%増、キャスト登録数は4.1%増だった。同社は需要が集中する地域の供給力強化を課題に挙げる。登録数は実際に働ける人数や時間そのものではないが、需要側だけを増やしてもサービスは完成しないことが分かる。[2]
同社は外国人家事支援人材の受け入れを進めているが、手続きが長期化し、当期の受け入れ人数は計画を下回る見込みだと説明する。訪問介護などの新規事業への投資も進めており、2026年11月期通期は営業損失5,000万円を予想する。これは実績ではなく、10月15日に公表した会社計画だ。[1][7]
別の新規事業へ応用するなら、繰り返し発生する困りごとを、予約・実施・評価まで一続きにするという発想が使える。ただし、CaSyと同じ仕組みを用意すれば伸びるという意味ではない。地域の出張サービスなどを小さく試す場合は、次の3点を検証したい。
- 同じ顧客が、同じ頻度・金額で再び依頼するか。初回の割引利用と分けて確認する。
- 移動、準備、調整、研修、問い合わせ対応を含めても、提供者と運営側の双方に利益が残るか。
- 集客した地域・時間帯に働ける人を確保できるか。予約できなかった依頼と、入金までの日数も記録する。
ここは編集部の検証案である。継続課金の形式を先に決めるよりも、何度も任せたい仕事と、無理なく提供し続けられる条件を一緒に探るほうが、事業の形を具体化できる。
まとめ
- CaSyの定期UUは8,351人、前年同期比6.7%増。予約を繰り返す仕組みが、日常的な家事の依頼を支えている。
- 料金収入には働き手への報酬と運営費が伴う。16.0%の増収と約40万円の営業赤字を併せて見ると、成長と採算の違いが分かる。
- 自治体や企業は新しい利用者との接点になる。新規事業では、集客経路に加え、地域の供給力と代金回収まで確かめたい。
出典・参考
- CaSy「2026年11月期 第3四半期決算短信」2026年10月15日
- CaSy「2026年11月期 第3四半期 決算説明資料」2026年10月15日
- CaSy「お掃除代行ご利用の流れ」2026年10月29日確認
- CaSy「ご利用料金」2026年10月29日確認
- CaSy「価格改定に関するお知らせ」2026年10月1日
- CaSy「安心・安全への取り組み・サービスポリシー」2026年10月29日確認
- CaSy「2026年11月期 第3四半期決算説明」収録2026年10月14日、公開10月15日
- CaSy「自治体の家事・子育て支援」2026年10月29日確認
カバー写真はキッチン清掃のイメージで、CaSyの現場ではない。撮影:RDNE Stock project/Pexels/Pexels License。







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