部屋を借りる前に、事業を始められる
場所が必要でも、いつも必要なわけではない。週に数回のレッスン、半日の撮影、数時間の打ち合わせのために、物件を借り続ける負担は大きい。インスタベースでは、借りる側が場所・設備・空き時間を調べ、使う分を予約する。貸す側は、本業で使わない時間帯や、テナントが決まるまでの期間を提供できる。[1]
Rebaseが2025年12月に公開した共同創業者の対談には、この仕組みが役立った例が出てくる。スタジオを持つ初期費用に悩んでいたヨガ講師が、空きスペースで教室を始め、生徒が増えて週4コマを開くようになったという。企業側が紹介した創業期の一例で、現在の全掲載者の成果を表すものではないが、解いている課題は具体的だ。場所を固定費として抱える前に、顧客を集めて事業を試せる。[3]
ただし、借り手にとって安ければ済む話でもない。鏡、施術用のベッド、会議用の設備など、目的を果たせる条件がそろって初めて候補になる。Rebaseは用途別にスペースを探せるようにし、貸す側には写真や料金、営業時間などを登録する仕組みを用意している。[1][4]
手数料の対価は、集客から代金回収まで
インスタベースの収益は、掲載者が受け取るスペース利用料から差し引く成約手数料が中心だ。利用者が予約時に支払い、Rebaseが決済代行会社を通じて代金を回収する。掲載者への振り込みは手数料を控除して月ごとにまとめる。[1][5]
| 項目 | 公式ヘルプの案内 |
|---|---|
| 掲載者の初期費用・月額固定費 | なし |
| 時間・人数単位の料金プラン | 成約手数料35% |
| 1日単位の料金プラン | 成約手数料20% |
| 掲載者への支払い | 利用金額から成約手数料を差し引き、毎月まとめて振り込み |
成約手数料はプランによって異なる。表は2026年10月25日時点の公式ヘルプに基づく。[4][5]
掲載者から見れば、自分で広告を出し、予約を受け、請求・入金確認をする業務をまとめて委ねられる。予約が成立するまで掲載の固定費がかからないため、新たな用途で貸し出す際のハードルも下がる。Rebaseはキャンセル料の回収や返金、予約管理、外部カレンダーとの連携も提供する。貸す場所と借りたい人を紹介するだけでなく、取引が終わるまでの業務を引き受けることが、手数料を支払う理由になる。[1][4]
利用総額19.54億円と、会社の売上5.68億円の違い
成長を示すのは、掲載数だけではない。2026年8月13日公表の2027年3月期第1四半期資料では、インスタベースの利用数、平均単価、利用総額がいずれも前年同期を上回った。国内のスペースを貸し借りするサービスの実績で、登録会員数や無料利用者の累計ではない。[2]
| 指標 | 2025年4〜6月 | 2026年4〜6月 |
|---|---|---|
| インスタベースの利用数 | 40.6万件 | 45.3万件(11%増) |
| 平均単価 | 約4,200円 | 約4,300円(3%増) |
| 利用総額 | 16.97億円 | 19.54億円(15%増) |
| 掲載スペース数 | 4.20万件 | 4.79万件(14%増) |
| Rebaseの売上高 | 約4.94億円 | 約5.68億円(14.9%増) |
数値は会社資料の表示単位に合わせた概数。利用数は実際にスペースを使った件数、利用総額はその利用料の合計で税抜。掲載スペース数は公開されたスペースページ数を指す。売上高はRebase全社の数値で、インスタベース単体ではない。同サービスは2026年3月期の全社売上高の96.9%を占めた。[1][2][6]
利用総額は貸し手に渡る分を含む取引の規模であり、全額がRebaseの売上になるわけではない。利用数が増え、1回の平均単価も上がることで、手数料収入につながる取引が増えたと読める。掲載を増やしただけで使われない状態とは違い、実際の利用が伸びている点が重要だ。
次の予約を生む用途と、検索からの短い導線
繰り返し場所が必要な仕事や習い事は、次回の利用につながりやすい。Rebaseの資料では2025年4月〜2026年3月の全体平均リピート率を74%とする。これは同じ用途で2回以上予約した人による予約数の割合だ。初回利用者の74%が翌月も残った、という継続率ではない。[2]
予約の入口も広げている。2026年5月の発表では「Reserve with Google」への対応を案内した。Google検索やGoogleマップに出るスペース情報から、インスタベースの予約ページに進める仕組みだ。自社の名前を知らない人でも、場所や用途を調べている途中で予約にたどり着ける。[7]
供給側では同年4月にローソン・ユナイテッドシネマの全国38劇場・約300スクリーンを掲載し、「映画館・シアター」というカテゴリーも設けた。既存の施設を、通常の営業とは異なる利用目的の借り手へつなぐ取り組みである。こうした提携や検索導線の整備は成長施策だが、それぞれが利用増加の何割を生んだかは公表資料からは分からない。[2][8]
この事業で後から追いつきにくいのは、検索画面の見た目よりも、必要な地域・時間帯に選べる場所をそろえ、予約から利用まで問題なく終えられる運営の積み重ねだろう。これは公開情報からの編集部の分析である。別の予約サイトや施設への直接予約も選べるなかで、手数料に見合う集客と使いやすさを提供し続ける必要がある。
取引が増えても、利益が残るとは限らない
2026年4〜6月のRebaseの営業損益は約4,747万円の赤字で、前年同期の約6,175万円の黒字から悪化した。会社はオフィス移転に伴う一時費用や広告宣伝費の増加などを理由に挙げる。説明資料では、移転に伴う費用5,800万円を除くと営業利益は1,100万円になると説明しているが、実際に計上した営業損益は赤字だ。[2][6]
費用の内訳を見ると、広告宣伝費は約1.43億円、人件費等は約1.27億円、決済手数料などを含む支払手数料は約1.08億円。取引がオンラインで完結しても、利用者を集める費用、開発や運営に携わる人の費用、決済の費用はかかる。手数料率をそのまま利益率と見ることはできない。[2]
貸す側にも現場の仕事は残る。公式ガイドでは鍵の受け渡しに立ち会いやキーボックス、リモートロックを使う方法、利用者への原状復帰の案内などを示している。清掃、備品の点検、本業の予約との調整まで、すべてが不要になるわけではない。空き時間の利用料から手数料と追加の運営費を引き、本業への支障も含めて採算を考える必要がある。[4]
新規事業なら「空いている資産」より、取引の面倒を探す
インスタベースから得られる発想は、空いているものを見つけることに加え、貸す人と借りる人が取引をためらう理由を取り除くことだ。相手を探せない、料金を回収しづらい、鍵を渡せない、予約が重なる。その一つひとつを解く仕組みがあって、空き時間が商品になる。
Rebaseの共同創業者は、創業当初の1、2軒では自分たちが鍵を開け、利用終了まで近くで待ち、施錠までしていたと公式対談で振り返っている。最初からすべてを自動化したのではなく、実際に代金を払って使ってもらうことを優先したという。[3]
別の領域で小さく試すなら、例えば専門設備や作業場の空き時間を、用途と地域を絞って仲介する方法が考えられる。これは編集部の検証案であり、成功を確認した事業ではない。最初に確かめたいのは次の3点だ。
- 有料の需要があるか。 「使いたい」という回答だけでなく、必要な日時・設備・価格が合ったときに、実際の予約と支払いが生じるかを見る。
- 貸す側の手間に見合うか。 準備、受け渡し、片付け、問い合わせに要した時間と費用を記録し、1件増えるごとに残る金額を確かめる。
- もう一度使う理由があるか。 初回の割引に頼らず再利用が起きる用途を探し、仲介側の集客・決済・サポート費も回収できるかを見る。
場所でも設備でも、空いているだけでは売れない。誰が、いつ、何のために使い、貸す側の負担をどこまで引き受ければ取引になるのか。インスタベースの成長はその条件を具体的に設計する事業の面白さを示している。
まとめ
- 必要な時間だけ場所を借りる仕組みは、教室などの小さな事業の固定費負担を抑え、場所の持ち主には空き時間を売る機会をつくる。
- 利用数と単価の伸びで取引の規模は広がるが、利用総額は会社の売上ではない。手数料収入から集客・人件費・決済などの費用を賄う必要がある。
- 新規事業のヒントは、使われていない資産とともに、予約・支払い・受け渡しの手間を見ること。有料利用と再利用、1件あたりの採算を小さく確かめたい。
出典・参考
- Rebase「第12期 有価証券報告書」(2026年6月22日)、事業内容・収益構造・指標の定義。原典
- Rebase「2027年3月期 第1四半期 決算説明資料」(2026年8月13日)、利用実績・費用・成長施策・リピート率。原典
- Rebase公式note「【前編】シリコンバレーのカフェ、そして手動SQLの日々。Rebase創業のリアルとinstabase」(2025年12月24日)。原典
- Rebase「スペース掲載者様向け サービスガイドブック」(2026年10月25日確認)。原典
- インスタベースヘルプセンター「スペースの掲載に費用はかかりますか?」(2026年10月25日確認)。原典
- Rebase「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)」(2026年8月13日)。原典
- Rebase「インスタベース、『Reserve with Google』への対応を開始」(2026年5月25日)。原典
- Rebase「インスタベース、『ローソン・ユナイテッドシネマ』全国38劇場・約300スクリーンを掲載開始」(2026年4月9日)。原典
カバーは会議室のイメージで、実際の掲載施設を示す写真ではない。写真:Pixabay/Pexels(Pexels License)。









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