看護の記録から保険請求まで
訪問看護ステーションが保険請求を進めるには、日々の看護記録に加え、保険証や医師の指示書などの情報をそろえる必要がある。情報が足りなければ確認が発生し、請求に不備があれば差し戻された書類への対応も生じる。iBow事務管理代行サービスはこうした請求の前後を含む業務を対象にしている。[1]

顧客との関係はまず電子カルテの利用から始まる。iBowの基本料金にはアプリの保守や法令改正に伴う更新、カスタマーサポートが含まれる。訪問看護には医療保険と介護保険が関わるため、同社は操作方法だけでなく、どの保険や加算が該当するかという相談にも対応すると説明している。[3]
顧客が支払う理由は、記録を電子化できることにとどまらない。制度が変わったときにソフトが対応し、日々の運用で迷ったときには相談できる。その継続的な支援まで料金に含めている点に、業界を絞ったサービスの特徴がある。
月額料金と事務代行の組み合わせ
iBowの利用者は看護師などの職員だが、料金を支払うのはステーションを運営する事業者だ。公式料金ページとFAQによると、電子カルテは基本料金と従量料金を組み合わせている。月額1万8000円の基本料金はFAQでは2年契約時の条件として案内されている。[3][4]
| サービス・項目 | 公表されている料金と条件 |
|---|---|
| 電子カルテiBow | 初期費用0円。1事業所あたり月額基本料金1万8000円に従量料金を加える。従量部分は事業規模に応じた見積もり |
| iBowレセプト | IRのFAQでは最低料金7000円、訪問件数に応じた従量課金。料金ページには別途、証明書費用1000円/月の記載がある |
| 事務管理代行 | IRのFAQでは保険請求額の5%、最低料金10万円から。iBowとiBowレセプトの契約者向け |
料金は2026年10月23日の公式案内に基づく。電子カルテ、レセプト、代行は別サービスであり、月額1万8000円で全部を利用できるわけではない。個別の契約総額は利用範囲と見積もりによって変わる。[1][3][4][5]
事務代行で引き受けるのは、利用者情報の登録、看護記録や書類の期限確認、レセプトの作成、審査結果への対応など。レセプトとは保険者などへ診療・サービスの費用を請求するための明細で、代行では複数の専任スタッフが情報を確認する。ソフトに入力されたデータを使い、人が業務を進めるサービスだ。[1]

従量料金は顧客の利用規模と、代行手数料は顧客の保険請求額と連動する。この組み合わせなら、契約先を増やすことに加え、契約先の事業拡大も売上につながる。一方で、代行には確認する人員が必要だ。利用が増えたときに、処理量と人件費がどのように増えるかも採算を左右する。
新規契約と既存顧客の売上が伸びる
2026年上期の決算には二つの伸びが表れている。6月末の契約ステーション数は3736で、前年同月末の3286から13.7%増えた。ただし3736にはアカウント開設準備中などの顧客も含まれ、稼働ステーションは3583だった。契約件数のすべてがその時点で売上を生むわけではない。[2]
| 指標 | 2026年の実績 | 比較対象・意味 |
|---|---|---|
| 上期売上高 | 19億9100万円、前年同期比24.2%増 | 2026年1〜6月と2025年1〜6月の比較 |
| クラウド売上高 | 17億600万円、同23.1%増 | 上期累計。電子カルテなどのサービス |
| BPaaS売上高 | 2億7700万円、同37.2%増 | 上期累計。事務代行などの業務支援 |
| クラウドNRR | 108.0% | 2025年6月に売上のあった法人の、翌年6月の継続課金売上を比較 |
いずれも会社開示の実績で、資金調達額や将来の目標ではない。BPaaSは、同社がソフトと連携する業務代行に用いている名称だ。2025年から従来のBPOを改称しており、名称変更による事業内容の変更はない。[2]
NRR108.0%は、既存顧客からの継続課金売上が合計で8%増えたことを示す。解約の影響も含め、同じ法人群の2025年6月と2026年6月の単月売上を比べた数字だ。新規顧客は含まず、顧客数の継続率でもない。これにより、新規開拓と既存顧客の利用拡大を分けて捉えられる。[2]
会社は上期の増収要因として、AI訪問看護計画書・報告書の追加販売と事務代行の併売を挙げている。一方、訪問予定やルートを作成するAI機能は7月に課金を開始した。こちらは上期以降の売上に寄与するサービスであり、上期24.2%増の説明とは時期が異なる。[2]
制度対応と導入支援が販売につながる
需要を生むきっかけには制度改定がある。eWeLLは8月公表の決算説明会Q&Aで、6月の診療報酬改定に伴うセミナーに1000件超の申し込みがあったと説明した。改定を機に複数ステーションを運営する顧客との契約にも至ったという。ただし、切り替え件数やセミナーからの成約率は公表していない。[6]
制度が変わると、現場は新しいルールに対応しなければならない。セミナーや公式サイトで相談の入口を設け、導入後は操作や運用を支援する。iBowは導入前の相談から導入後の支援までをサービスとして案内している。情報提供と販売、利用の定着がつながる仕組みだ。[7]
競争上の違いとして会社が挙げるのは、電子カルテと請求業務を連携させ、遠隔で事務代行できる点だ。書類を作成するだけでなく、請求に必要な基礎情報の登録や期限管理から関わる。[5]
この仕組みを別の会社が再現するには、画面を開発するだけでは足りない。業界の制度を理解した支援担当者と、日々の確認作業を継続できる体制も要る。ソフト、運用知識、顧客との接点が一緒に蓄積されるところに、この事業の強みを読み取れる。
成長を支える人手と採算
eWeLLの上期営業利益は9億4600万円で、前年同期比20.1%増えた。利益も伸びたが、営業利益率は前年同期の49.2%から47.5%へ下がった。売上の伸びと利益率の改善は同じではない。[2]
同社は8月のQ&Aで、人件費、外注費、サーバーコストの上昇を挙げ、値上げの有無や対象、時期を年末までに検討すると説明している。電子カルテの更新、顧客支援、代行の人員を維持する費用がかかり、顧客が増えれば自動的に利益率が上がる構造ではない。[6]
顧客側にも制約がある。会社は、単独ステーションを運営する顧客で訪問件数の伸びに差が出る理由として、人材確保と生産性を挙げている。ソフトを導入しても、採用や人材の定着が進まなければ訪問を増やしにくい。eWeLLは活用支援とともに、採用・教育・定着の支援も進める方針だ。[6]
他業種で試せる事業のつくり方
ここから先は公開情報を踏まえた事業づくりへの応用だ。着目したいのは、ソフトを導入した後にも顧客に残る仕事である。たとえば書類を電子化しても、内容の確認や期限管理、相手への提出まで人が担っているなら、そこに追加サービスの余地がある。
小さく試すなら、一つの業務を選び、ソフトだけを使う場合と、確認・提出まで支援する場合を比べる。顧客が実際に減らせた作業時間、支払う意思のある金額、提供側の処理時間と修正回数を記録すれば、必要とされる支援と採算の両方を確かめられる。
従量制を設計するときは、顧客が増やしたい活動と、料金が増える単位を照らし合わせる。ただし売上が増えても、対応のたびに専門人材の時間が大きく増えるなら利益は残りにくい。eWeLLの事例は業界特有の仕事を理解し、ソフトと人の支援を組み合わせる発想と、その運営費まで考える必要性を示している。
まとめ
- 顧客の仕事をたどると、電子カルテの先に請求や期限管理の需要がある。業務の前後まで支えることで、追加サービスの機会が生まれる。
- 新規契約数と既存顧客の売上を分けて見ると、成長の中身がわかる。NRR108.0%は、新規開拓以外にも売上を伸ばす動きがあることを示す。
- ソフトと人による支援を組み合わせる事業では、顧客の負担軽減と提供側の処理費用を一緒に検証することが、料金設計の手がかりになる。
出典・参考
- eWeLL「iBow事務管理代行サービス」(2026年10月23日確認)。公式サービス案内
- eWeLL「2026年12月期 第2四半期決算説明資料」(2026年8月14日、4・9〜14・17ページ等)。決算説明資料PDF
- eWeLL「料金」(2026年10月23日確認)。iBow公式料金案内
- eWeLL「よくあるご質問」(2026年10月23日確認)。iBow公式FAQ
- eWeLL「IRに関連するQ&A」(2026年10月23日確認)。IR公式FAQ
- eWeLL「2026年12月期第2四半期 決算説明会 質疑応答」(2026年8月19日)。質疑応答PDF
- eWeLL「サポート体制」(2026年10月23日確認)。公式サポート案内








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