鍵の受け渡しを、権限の管理に変える
Akerunの顧客はオフィスやジム、コワーキングスペースなどを運営する法人だ。スマートフォンやICカードで解錠し、管理者はクラウドを通じて入室できる人の権限を与えたり、取り消したりする。誰がいつ出入りしたかという記録も残る。物理的な鍵を渡して回収する仕事を、離れた場所から操作できる管理業務に変えるサービスである。[1]
機器は扉に合わせて選ぶ。「Akerun Pro」は既存の錠に後付けする製品で、原則として利用者が自分で設置できる。一方、電気錠や自動ドアなどを制御する「Akerunコントローラー」には配線などの工事が必要になる。既存設備を生かせることが導入の入口になるが、すべての扉に同じ費用と手間で付くわけではない。[3]

月額料金には、機器と保守の仕事が入る
Akerunの公式料金ページは初期費用と月額利用料の構成を示し、月額料金を個別見積もりとしている。保守は月額に含まれ、機器は原則レンタルだ。初期費用0円の案内もあるが、製品や設置条件によって工事費などが発生し得る。Proでも扉や錠の形によって交換・専用部品が必要になるため、見積もり前に取り付け条件を確かめる。[4][3]
支払うのは施設側で、入退室の管理を使い続ける対価を月額で負担する。公式FAQでは、電池残量が少なくなると交換用電池が自動配送され、利用者が交換する仕組みも説明している。電池の費用はサービスに含まれる。提供会社には機器の用意に加えて、通信・ソフトウェアの運用、問い合わせや保守に対応する仕事が残る。[3]
フォトシンスの決算説明資料はハードウェアとソフトウェアの月額提供を組み合わせたモデルを示している。機器とクラウドを一緒に提供し、保守しながら継続して料金を受け取る事業だ。もっとも、契約別の利益や保守にかかる費用は公表されておらず、月額収入の全額を利益として考えることはできない。[5]
増収の中身は、継続収入と一時的な売上に分かれる
フォトシンスの2026年1〜6月の連結営業利益は約1.74億円で、前年同期比19.5%増だった。売上と利益がともに増えた一方、売上の伸びをそのままAkerun単体や月額収入の伸びと読むことはできない。連結には住宅向け事業、施設運営代行の「Migakun」、顧客管理・決済システムの「fixU」などが含まれる。[2]
決算説明資料の2026年4〜6月の数字を分けると、成長の形が見える。[5]
- 四半期の連結売上は約10.33億円で、前年同期比32.3%増。
- そのうち繰り返し発生するリカーリング売上は約8.70億円で、前年同期比16.9%増。売上全体の84.2%を占める。
- 6月の月額サブスクリプション売上を12倍したARRは約35.0億円。すでに1年間で売り上げた額ではない。
会社は、大口案件に伴うAkerunのスポット売上や住宅向け事業が好調だったと説明する。前年同期のスポット売上が低調だった反動もある。fixUは2025年10月に連結子会社となっており、比較する事業の範囲にも変化がある。継続収入は増えている。ただし、全体の増収には買収や一時的な売上も関わっている。[5][6]
国内での事業基盤については、2025年通期の有価証券報告書が、日本国外の外部顧客への売上はないと記している。2026年中間期には地域別の売上額が掲載されていない。現在の国内売上額は分からないものの、ECOFIT24など日本の施設で具体的な採用が進んでいる。[7][1]
受付を減らすには、会員管理との接続が要る
ECOFIT24が必要としていたのは、入口を開閉する機能だけではなかった。入会した会員を通すこと、体験・見学者には一時的な入店手段を渡すこと、店舗が増えても同じ運用ができることが求められた。そこで自社開発の「TRESUL」とAkerunをAPIでつなぎ、会員の手続きとQRコードによる入退室を連動させた。APIは異なるシステム間で情報や操作をやり取りする仕組みだ。[1]

同社発表ではほぼ全店舗でゲートとAkerunコントローラーを使い、ゲートを置けない一部店舗ではProを使っている。フランチャイズの開業設備にも標準採用された。機器と会員システムを接続し、設備が違う店舗にも対応することが、拠点を増やす際の導入負担を減らす。[1]
発表は、人件費などを含む運営コストが1店舗あたり月約60万円減ったとも説明する。ただし、これはAkerunとゲートなどを組み合わせた運営についての企業側の説明だ。比較対象の人員配置や測定期間の詳細は示されていない。Akerunだけで同額を削減できるとはいえず、55店舗全店に同額を掛けて効果を推計することも避けたい。[1]
一社の扉数と、関連する仕事を増やす
フォトシンスは、大口顧客の複数拠点へ導入を広げている。会社公表の決算説明会の質疑応答要旨によると、100台を超える導入を大口案件とし、1,000台超の顧客もいる。従業員1,000人以上の企業を担当する専任チームを設け、自動車メーカーや不動産会社などへ提案している。これは同社が要約した説明であり、個々の顧客名や契約額は示されていない。[6]
もう一つは、既存顧客に関連サービスを組み合わせる売り方だ。Migakunは清掃や備品管理など施設運営の仕事を支援し、fixUは会員・請求・決済を管理する。会社はカメラやこれらのサービスを組み合わせた販売を進めている。光通信グループの販売会社との連携もあるが、2026年上期時点では、売上成長率を大きく押し上げる規模には至っていないと説明している。[5][6]
この広がりは平均売上にも表れている。2026年6月のリカーリング売上を契約社数で割ったARPUは月50,542円、前年同月比13.4%増だった。会社は一社あたりの導入台数、大口顧客、複数サービスの販売が増えたと説明する。この平均値はAkerun一台の料金でも、標準プランの価格でもない。[5]
編集部が事業モデルから読み取る強みは扉を制御する機器、クラウド、外部システムとの接続、現場での作業を組み合わせられることだ。単純な鍵の販売との違いは、その後の管理まで扱う点にある。一方、競合との価格・性能の優劣や、顧客が他社へ移る費用の大きさまでは、今回の資料から比較できない。
AIをつないでも、現場の対応は残る
Akerunには入室権限を管理する役割があるが、一度の解錠で実際に何人が入ったかまでは、それだけで確かめられない。2026年10月29日、フォトシンスはジム専用AIカメラ「GYM DX」との連携を発表した。解錠記録とカメラが数えた入館人数を照合し、一度の解錠で複数人が入る「共連れ」の可能性を抽出する。利用には両方のサービスとの契約が必要だ。[8]
検知後には施設側が記録を確かめ、注意喚起や課金の案内などを判断する。発表には検知精度、追加料金、導入後の収益改善を測った数字はない。この新機能を、すでに発表済みの上期増収の理由にすることもできない。[8]
施設には清掃や補充、扉が開かない場合の対応も残る。ECOFIT24の事例も電源トラブルなどを想定した緊急解錠カードの運用を含む。無人化によって、常駐して行う仕事と必要なときに対応する仕事の配分が変わる。システムを作る側には、その例外に対応できる設計と保守が求められる。[1]
小さく試すなら、一つの施設の運用から
Akerunの事例から別の事業へ応用できるのは、日々繰り返される手作業を見つけ、その前後の情報とつなぐ発想だ。これは編集部の仮説であり、同じ仕組みを作れば成功するという意味ではない。予約の確認、利用資格の付与、鍵の受け渡しなど、ひとまとまりの仕事を選んで検証できる。
最初から多数の設備を開発するより、一つの施設で次の三点を確かめたい。
- 管理者が何に何分使い、どの時間帯に対応が発生しているか。
- 自動化後も残る電話・現場対応と、導入・保守・交換を含む総費用はいくらか。
- 運営者が継続して払える金額と、提供側がその価格で保守できる条件は何か。
比較の相手には現在の物理的な鍵や受付の運用も含める。手作業が少ない小規模施設なら月額費用が負担になり得る一方、拠点と利用者が増える施設では、権限をまとめて管理する価値が大きくなる可能性がある。導入前後で対応時間と費用を測り、減らせた作業と新たに増えた作業を両方見ることが、次の展開を判断する材料になる。
まとめ
- フォトシンスは2026年上期に27.8%増収。住宅や運営代行などを含む連結値で、継続収入とスポット売上の伸びを分けて読める。
- Akerunの月額モデルは機器とクラウドに保守を組み合わせる。会員管理や複数拠点への接続が、継続利用と追加導入を支える。
- 新規事業に応用するなら、減らす手作業と残る現場対応を一緒に測る。自動化の範囲と保守の採算まで検証したい。
出典・参考
- Photosynth「ECOFIT24が全店舗規模でAkerun入退室管理システムを導入」(2026年6月4日、同社発表の顧客事例)。
- Photosynth「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年8月13日)。
- Akerun「よくあるご質問」(2026年11月1日確認)。
- Akerun「料金」(2026年11月1日確認)。
- Photosynth「2026年12月期 第2四半期 決算説明資料」(2026年8月13日、特に5・8・11〜13・17〜19・23〜28ページ)。
- Photosynth「2026年12月期 第2四半期 決算説明会 主な質疑応答(要旨)」(2026年8月13日、会社による要約)。
- Photosynth「2025年12月期 有価証券報告書」(2026年3月27日、地域別売上など)。
- Photosynth「Akerunとジム専用AIカメラ『GYM DX』がAPI連携を開始」(2026年10月29日)。
カバー写真:ECOFIT24守山吉根店のゲート。出典・画像提供:株式会社Photosynthのプレスリリース/© Photosynth Inc.。







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