空港と兵舎と大統領府
ロイターの記者2人が、ディオリ・ハマニ国際空港の周辺と大統領府の近くで激しい撃ち合いを確認している。
放送を再開した国営テレビは、ニアメ市内の基地にいた反乱兵が市内の「重要施設」に発砲したとするメッセージを流した。
午前遅くになって、国防省は軍が襲撃された各拠点の制圧を順次進めていると発表した。ただし治安関係者によれば、空港にはなお反乱兵が残っており、全体の状況ははっきりしないままである。
「軍の内部の反乱兵」
今回の襲撃が外部の武装勢力によるものではなく、軍の内部から起きたとされている点は重い。
ニジェールは2023年のクーデターでアブドゥラハマン・チアニ氏が実権を握って以来、軍が統治の中心にいる。その軍の内側に亀裂が入ったとすれば、統治の土台そのものが揺れることになる。
一方で、大統領警護隊はチアニ氏に忠実なままだという見方も現地の外交筋から出ている。反乱の規模がどこまで広がっているのかは、現時点では確かめようがない。
情報が錯綜している状況では、断定を急がないほうがいい。制圧されたという政府発表と、空港に反乱兵が残っているという治安筋の話は、両方が同時に成り立つこともある。
サヘルの綱引きの中で
ニジェールは、この地域の力学の結節点にある。
2023年のクーデター以降、同国はフランスや米国との安全保障協力を相次いで打ち切った。西側の駐留部隊は撤収し、代わりにロシアとの関係が深まっている。マリとブルキナファソを含む3か国は「サヘル諸国同盟」を組み、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)から離脱した。
同時にニジェールは、世界有数のウラン産出国でもある。欧州の原子力発電を支えてきた供給元のひとつで、政情が揺れれば燃料調達の議論に波及する。
そして、この国はサヘル一帯で活動する武装勢力への対処の前線でもある。首都の治安部隊が内向きの戦闘に人員を割く時間が長引けば、その分だけ地方の警備が薄くなる。周辺国にとっても他人事ではない。
誰が確かめられるのか
こうした事案で難しいのは、事実の確認そのものである。
国営放送が止まり、外国メディアの常駐が細っている国では、一次情報の出どころが限られる。今回もロイターの目撃者2人と治安関係者、そして政府発表というのが情報の主な柱になっている。
SNS上には現場のものとされる動画が出回っているが、撮影日時や場所を裏づける材料は乏しい。過去のクーデター未遂でも、旧映像が新しい事件のものとして拡散した例は何度もあった。
日本からの距離は遠い。それでも、ウランの供給とサヘルの治安という2つの線でつながっている以上、この国の政変は経済安全保障の話として無関係ではいられない。
続報を待つ局面だが、当面は「政府発表」と「現地筋」を分けて読むところから始めるのが安全だろう。
まとめ
- 8月29日未明、ニジェールの首都ニアメで反乱兵がディオリ・ハマニ国際空港と大統領府を襲撃した。国営テレビとラジオは一時停波した
- 国防省は軍が各拠点の制圧を進めていると発表したが、治安関係者は空港に反乱兵が残っていると話しており、状況は確定していない
- ニジェールは有数のウラン産出国で、サヘルの治安の要でもある。首都の混乱が長引けば、燃料調達と地域の警備の両面に影響が及ぶ
出典・参考
- NBC News – Mutinous soldiers attack airport, presidency in Niger capital
- Gulf News – Gunfire and explosions rock Niamey as attackers target airport, presidential palace and military base
- Internazionale / Reuters – Attackers target Niger's Niamey airport and presidency perimeter, sources say
- Sahara Reporters – Explosions Rock Niger Republic Capital Niamey As Gunmen Target Airport, Military Base



