ベッセントが「今すぐ実弾は撃たない」と言った理由
制裁の発動は宣言されたが、ベッセントは同日の記者会見で、最も強力な二次制裁については即時発動を見送った。
「なぜ世界の金融システムを壊したいのか」と彼は逆に問いかけた。
二次制裁とは、イランと取引する第三国・企業にも制裁を科す仕組みだ。 中国はイランの最大の石油購入国であり、これが発動されれば北京と米国の経済衝突は避けられない。 ベッセントは「猶予期間を与える」と述べ、段階的な締め付けを示唆した。
中国の反応
中国外務省報道官は翌25日、「一方的な制裁に強く反対する」と述べた。 北京はイランとの貿易を維持することが「主権の範囲内」だとの立場を変えていない。
イランの石油は1バレルあたり30〜40ドル程度の値引きで中国に流れている。 公式輸出量は制裁下でも密輸ルートを通じて月数百万バレル規模で続いているとされる。
二次制裁が本格発動されれば、中国の国有石油会社が標的になる可能性がある。 それはドルの基軸通貨体制に影響が及ぶ次元の話で、ベッセントが躊躇するのはそのためだ。
イランは「米国を金融攻撃する」
イランのモフセン・レザエイ安全保障評議会議長は、ベッセントの発表直後にこう声明を出した。
「我々はこの経済戦争を無力化する。必要であれば米国を金融面から攻撃する」
イランが実際に取りうる手段は限られているが、ホルムズ海峡の通行をふたたび制限することが選択肢に残っている。 イランは6月の暫定合意後も「条件が満たされなければ閉鎖を再開する」との立場を崩していない。
ガソリン価格は下がらない
イランとオマーンの間で8月26日に暫定的な航行ルートの枠組みが合意されたことを受け、原油先物は3日連続で下落した。 ただし、米国内の1ガロンあたりの平均ガソリン価格は4.09ドルで、開戦前から37.5%高い水準にある。
ホルムズが完全に再開されないかぎり、世界の石油供給の約5分の1がまだ正常に流れていない。 「下がった」と感じられる水準には程遠い。
まとめ
- ベッセントの「経済Dデー」は宣言としては強烈だが、最大の武器である二次制裁の即時発動は見送った。「壊滅的」と言いながら引き金は引かなかった
- 中国への配慮がその主因で、北京が応じなければ制裁の実効性は限定的になる可能性が高い
- ガソリン価格は依然として高止まりしており、ホルムズ問題が解決されないかぎり日本を含む消費国が払うコストは続く



