LNGが来なくなった
ホルムズ海峡は中東から出るLNG(液化天然ガス)の主な通り道だ。
2026年2月以降、イランが対米対立の一環として海峡での船舶通航を制限した。 カタールやアラブ首長国連邦から日本向けに向かうLNGタンカーが、迂回を強いられるようになった。
迂回するとコストが上がる。コストが上がれば価格が上がる。 日本の発電量のおよそ30%はLNGを燃やすガス火力が担っている。
LNG価格が上がれば、電力のコストも上がる。その分が電気代に転嫁される。
IEAの分析担当者は「ホルムズ海峡の通航制限が、アジアのLNG市場を直撃している」と述べた。
一世帯に届く数字
産業向けの卸電力市場の話だが、最終的には家庭の請求書に届く。
日本の電力小売価格は小売各社の調達コストに連動する部分がある。 電力会社の仕入れコストが上がれば、それは燃料費調整額という形で各家庭の請求書に乗ってくる。
経済産業省のデータでは、2026年夏の電気料金は前年同期比で平均8〜10%高くなる見通しだ。 卸価格が40%上昇する一方で、小売への転嫁幅は規制の枠組みでやや緩和される。それでも数千円単位で年間の電気代が変わる試算だ。
夏は冷房で電力消費が多い。今年の夏は暑かった。消費が増え、価格も上がっている。 「去年より暑いのに、電気代まで上がるのか」という声は珍しくない。
再エネが「間に合わない」
日本政府はLNG依存を下げる方向で動いている。再生可能エネルギーへの転換だ。
太陽光と風力の発電能力は増えている。だが電力需要の変動を吸収する蓄電設備の整備は遅れている。 「晴れた昼は太陽光が余り、夕方から夜はLNGで補う」という構造が、まだ続いている。
原子力発電の再稼働も焦点だ。現時点で稼働中の原発は10基前後。 政府は段階的に増やす方針だが、安全審査の手続きに時間がかかっている。
IEAは日本に向けてこう指摘している。 「LNG調達の多様化と再エネの拡大を並行して進めなければ、中東リスクへの露出は変わらない」。
冬に向かって
電気代が高い状態は、しばらく続く見通しだ。
ホルムズ海峡の情勢が改善するシナリオはいまのところ見えていない。 冬に向かって暖房需要が増えれば、LNGの消費はさらに増える。
IEAが「後半に40%」と試算した数字は、夏の実績と冬の見通しを合わせた年後半全体の予測だ。 冬の電気代は、夏よりさらに上振れする可能性もある。
「電気代が上がっている」という実感は、今年の冬にも続くことになりそうだ。
まとめ
- ホルムズ海峡の混乱でLNG価格が上昇し、LNGに約30%を依存する日本の電力コストが直撃されている
- IEAは2026年後半の日本卸電力価格が前年比40%近く上昇すると試算。家庭の電気代にも数千円規模で影響が出る
- 再エネ拡大と原発再稼働が進んでいないため、中東情勢次第では今後も同じリスクにさらされ続ける



