「6つの処理施設のうち4つはポンプ車で燃料が届かないため止まった」
ガザには北部・中部・南部に計6か所の下水処理施設があった。そのうち4施設は燃料不足が直接の原因で停止した。処理施設を動かすには発電機用の燃料が必要だが、イスラエルによる商業用燃料の搬入制限が続いており、人道支援の燃料だけでは不足している。
残る2施設は設備の物理的な破損が原因だ。インフラを管理するパレスチナ水道局の技術部門は、今年7月までに修理チームを3回現地に送ったが、いずれも戦闘の激化で作業を中断せざるを得なかったと報告している。
下水処理施設の停止に加えて、汚水を施設に送るポンプステーション全体のうち70%以上が機能不全に陥っている。これにより街路への汚水あふれが慢性化し、難民キャンプの通路が汚水で浸水している状況だ。
「医療機関への影響が深刻になっている」
国境なき医師団(MSF)ガザ担当チームのエバリスト・ピタルダさんは「今週の時点で、下痢性疾患を主訴とする患者が1か月前と比べて2.3倍に増えている。うち子どもが78%を占めている」と述べた。
コレラの疑い症例も先週から急増しており、WHOはラファ南部の2施設でコレラ菌が検出されたと確認した。A型肝炎の新規感染者数も7月以降から急上昇が続いており、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の医療チームが対応にあたっているが人手が大幅に足りていない状態だ。
医療廃棄物の処理も機能していない。入院患者の治療に必要な消毒済み器材が不足し、一部の外科手術では本来なら使い捨てであるはずの手術用グローブを繰り返し使用している実態があると現地の医療従事者が証言した。
「国際社会は何度も緊急対応を求めたが施設は止まったままだ」
OCHAは2025年11月以降、累計7回にわたってガザの下水インフラへの緊急支援を求める声明を発表してきた。ユニセフ、WHO、MSFが連名で訴えた要請書も国連安全保障理事会に提出されたが、米国の拒否権によって具体的な措置決議は通過していない。
欧州連合は燃料と修理部品の人道支援パッケージとして2,200万ユーロの拠出を承認したが、現地への届け届は今年2月から止まっている。イスラエル当局は「二重使用の懸念」を理由に複数の部品を搬入不許可としており、燃料についても軍事目的への転用を防ぐための書類審査に6〜8週間を要している。
アムネスティ・インターナショナルは「意図的なインフラの破壊と機能停止を引き起こす封鎖は、国際人道法上の集団的懲罰に当たる可能性がある」と表明したが、調査の立ち入り制限が続いており独立した検証はできていない。
民間インフラへの戦争被害と国際人道支援の届かない状況については、同様の課題を抱えるアフリカの事例も参照してほしい。
「汚水の影響は今後数年にわたって地下水に残る」
下水の流出による地中海沿岸の汚染は観光資源の破壊にとどまらない。ガザの農業を支えてきた沿岸帯水層への浸透が続けば、戦争終結後も食料生産の回復に深刻な影響が及ぶ。国際農業開発基金(IFAD)の専門家は「汚染された帯水層の回復には自然浄化でも最低10年、積極的な浄化処理でも5〜7年を要する」と推計している。
イスラエル国内でも環境・公衆衛生の観点からガザの下水汚染を懸念する声が出ている。ガザ沿岸とイスラエルのアシュドッド周辺は同じ地下水システムを共有しており、汚染の波及リスクを無視できない専門家からの指摘が相次いでいる。
報告書はこの問題が「人道」の範疇を超えて、中東全体の環境インフラにとっての長期リスクになっていると結論付けた。
まとめ
ガザ地区の6つの下水処理施設がすべて停止し、毎日5万5,000立方メートルの汚水が海と地下水に垂れ流されている状況が続いている。燃料の搬入制限と設備の破損が複合的に原因となっており、コレラ・肝炎の感染者増加につながっている。国際社会は7回以上の緊急声明を出したが、安保理での決議は拒否権によって阻まれ、EUの人道支援物資も届いていない。汚染された帯水層の回復は戦争終結後も5〜10年単位の課題となり、食料生産と中東全体の環境インフラにも影を落とす可能性がある。
出典・参考
- OCHA ガザ緊急報告書(2026年9月25日)
- WHO ガザ公衆衛生状況報告(2026年9月)
- MSF ガザ担当声明(2026年9月25日)
- OCHA ReliefWeb ガザ最新情報
- UNRWA 医療ユニット週次報告(2026年9月22日週)
- Reuters, BBC 報道(2026年9月25日付)






