「飢饉は食料が届かないことで起きている」
WFPのスーダン担当代表は9月10日のジュネーブでの記者会見で「我々は食料を持っている。しかし届けることができない」と述べた。WFPの備蓄倉庫はポートスーダンと周辺国に積み上がっているが、RSFの検問を通過できなければ搬入できない。
RSFは補給品の通過を拒否する理由として「軍需物資の混載を疑う」と主張している。これに対して国連の調査チームは「車両と積荷の検査に問題はない」と反論してきた。人道支援に必要な中立性の確保が根本的に崩れており、意図的な飢餓の利用が戦術になっているとする見方が、国際人道法の専門家の間で広まっている。
人道支援担当の国連副事務総長は9月15日の安保理緊急会合で「RSFが市民を飢えで屈服させようとしている」と名指しで批判した。国連食糧農業機関(FAO)の集計では、エル・ファシル周辺の農村部では子ども5人に1人が急性栄養失調の状態にある。
「ハルツームは陥落し、戦線は膠着している」
スーダン内戦の経緯を振り返ると、RSFは2024年前半にハルツーム都市圏の大部分を制圧した。政府軍(SAF)はポートスーダンに拠点を移し、現在も北部・東部での反撃を試みているが、戦線は膠着状態にある。
エル・ファシルはダルフール5州のなかで唯一SAFが実効支配を維持している州都であり、軍事的な象徴にもなっている。RSFは2024年末から2025年にかけて同市への砲撃を繰り返しており、9月時点でも市街地への散発的な砲撃が続いているとICRCが確認している。
周辺国の立場がこの問題を複雑にしている。アラブ首長国連邦(UAE)はRSFへの資金・装備支援疑惑を国連専門家パネルに指摘されているが、否定している。チャドはRSFに近い人脈を持ちながらも大量の難民を受け入れているという矛盾した立場にある。エジプトはSAF支持を明示し、スーダンの主権維持を優先する立場から停戦交渉には慎重なアプローチを取り続けている。
「530万人が越境し、周辺国の受け入れが限界に達している」
UNHCRの9月集計によると、スーダンから国外に脱出した難民は530万人を超え、チャド・エジプト・エチオピア・南スーダンに分散している。国内避難民は1000万人以上と推計されており、世界最大規模の人道危機の一つが継続している。
エジプトには100万人以上のスーダン難民が滞在しており、カイロ近郊の過密地区では教育・医療への負担が急増している。チャドは国境地帯の難民キャンプがキャパシティを超えており、WFPが支援規模の拡大を訴えているが、主要供与国の財政的な疲弊が続いている。
アフリカのサブサハラ地域での食料危機については、マリの武装勢力による幹線封鎖を報じた前日の記事も参照してほしい。スーダンとマリを含む複数の人道危機が同時進行するなかで、国際社会の人道支援予算の配分をめぐる議論が国連内部でも起きている。
まとめ
スーダン内戦は2年半が経過し、飢饉の正式宣言が7州に及ぶ段階に達した。RSFによる主要補給路の封鎖が食料援助を阻んでおり、国連はこれを「意図的な飢餓の武器化」と表現している。ハルツームを失ったSAFはポートスーダンを拠点とし、エル・ファシルを最後の拠点として維持しているが、市民への補給は限界に近い。UNHCRが記録する530万人の難民流出は世界最大規模であり、周辺国の受け入れ体制も限界に達しつつある。国際社会の目がウクライナや中東に向くなかで、アフリカ最大の人道危機は外交的な解決の糸口が見えない状況が続いている。
出典・参考
- 国連世界食糧計画(WFP)プレスリリース(2026年9月10日)
- 国連食糧農業機関(FAO)スーダン飢饉宣言報告書(2026年9月)
- UNHCR スーダン難民状況報告(2026年9月)
- 国連安全保障理事会緊急会合発言記録(2026年9月15日)
- ICRC スーダン支援状況
- Reuters, Al Jazeera 報道(2026年9月15〜25日付)






