「いかなる打ち上げもテロ行為である」
カッツ国防相の指示は、凧や気球が飛ばされた地域への対応にまで及んでいる。
ネタニヤフ首相とカッツ国防相は、打ち上げが行われた地域への攻撃を強め、住民を退避させる方針を示した。
凧が飛ぶ地域から人を動かす、という発想である。
国連人権高等弁務官事務所の報道官は、この方針を「言語道断だ」と評した。
軍の報告と大臣の指示が食い違う
この件が奇妙なのは、政府内で事実の認識がそろっていない点にある。
イスラエル軍は、回収した凧を調べたところ不審物は積まれておらず、危険はなかったと報告している。
一方で国防相は、打ち上げそのものをテロ行為と定義した。物として危険かどうかではなく、行為の性質で線を引いている。
過去には、ガザから飛ばされた焼夷凧がイスラエル側の農地を焼いた事例がある。凧が実害を出した歴史があるのは確かである。
ただ、今回の報告は「この凧は違った」と言っている。それでも指示は強化された。
子どもたちは何をしていたか
港に集まったのは、避難生活を続ける子どもたちである。
凧を上げたのは、封鎖の継続と生活の窮状に対する抗議だと現地では説明されている。武器ではなく、目に見える形で意思を示す手段として選ばれた。
もちろん、抗議として飛ばされた凧のなかに危険物を積んだものが混ざる可能性を、軍が完全に否定できるわけでもない。
そこが判断の分かれ目になっている。行為として一律に扱うのか、個別に確かめてから対応するのか。今回は前者が選ばれた。
言葉の定義が攻撃の範囲を決める
この一件は、言葉の使い方が何を許すかを決める、という話でもある。
「テロ行為」と定義されれば、対応の選択肢は一気に広がる。攻撃も、地域からの退避要求も、その枠に収まる。
逆に「子どもの抗議」と定義すれば、対応は取り締まりや警備の範囲にとどまる。
同じ物体が飛んでいても、どう呼ぶかで次に起きることが変わる。国連が強い言葉で反応したのは、そこだろう。
日本から読むときに
日本の読者にとって、この話は遠い。凧が争点になる状況そのものが、日常から離れている。
それでも見ておく価値があるのは、定義の変更が実力行使の範囲を広げるという構図が、どの地域でも起こりうるからである。
抗議行為をどう名づけるか。その一語が、次に誰が退避させられるかを決めていく。
ガザの子どもたちが凧を上げた理由も、その凧が危険だったかどうかも、いまのところ双方の説明が食い違ったままである。
判断を急ぐより、両方の記録を残しておくほうがいい。
まとめ
- 8月25日、ガザ港で数十人の子どもが抗議として凧を上げた。3日後、カッツ国防相が「いかなる打ち上げもテロ行為である」と述べ、軍に強い対処を指示した
- 同じ時期、イスラエル軍は回収した凧に不審物はなく危険はなかったと報告している。軍の認識と国防相の定義が食い違っている
- ネタニヤフ首相とカッツ国防相は打ち上げ地域への攻撃強化と住民退避の方針を示し、国連人権高等弁務官事務所の報道官は「言語道断だ」と反応した
- 過去に焼夷凧が農地を焼いた事例はある。行為として一律に扱うか、個別に確かめるかが分かれ目になっている
出典・参考
- Gaza's Children Protest as Israel's Military Chief Declares Kite-Flying a "Terrorist Act" — Democracy Now!
- 'Outrageous': UN slams threats from Netanyahu, Katz to evacuate Gazans over kite launches — The Times of Israel
- IDF told to act forcefully against Gaza kites — The Times of Israel
- Israel 'freaks out' over children's kites in Gaza — The New Arab



