九月七日、済州の沖
演習の内容は複数の領域にまたがる。
海上でのミサイル防衛、防空を含む航空訓練、対潜水艦戦、そしてサイバー防衛である。3か国の艦艇と航空機が同じ枠組みの下で動くことになる。
フリーダム・エッジは2024年に始まった演習で、海と空とサイバーを一つにまとめている点が特徴とされる。
場所として済州島の周辺が選ばれているのは、3か国の作戦区域が接する海域だからである。日本にとっては、対馬海峡の向こう側という距離感になる。
二国間は絞り、多国間は残す
今回の発表が注目されたのは、直前の流れと逆に見えるからである。
トランプ大統領は、北朝鮮への融和姿勢を示す意図で、米韓の大規模な二国間演習を縮小していた。対話の余地を残すための調整だと説明されている。
その一方で、3か国の枠組みは予定どおり動かす。二国間は絞り、多国間は残す。そういう線の引き方になっている。
意図がどこにあるのかは、外からは読み切れない。譲歩の見せ方を調整しているとも、性格の違う演習だから扱いを分けただけとも解釈できる。
韓国側にとっては、米韓の縮小分を3か国の枠組みで埋める意味もあるだろう。
北朝鮮は先に宣言していた
北朝鮮側は演習の発表前から反応していた。
米国の行動を「敵対行為」と呼び、報復すると表明している。過去の例では、こうした表明のあとに弾道ミサイルの発射が続くことが多かった。
ただし、必ずそうなるとは限らない。演習期間中は動かず、終了後に間を置いて動くという運びも過去にはあった。
9月上旬から中旬にかけて、日本海側でミサイル発射の報道が出る確率は平時より上がる。その程度の見立てが妥当だろう。
日韓が同じ海で動くということ
日米韓の枠組みが定例化したのは、そんなに昔の話ではない。
日韓の防衛協力は歴史問題と結びついて何度も止まってきた。2018年のレーダー照射をめぐる応酬のように、共同訓練の話が政治で吹き飛んだ時期もある。
2023年のキャンプ・デービッド合意以降、3か国の枠組みは制度として組み直された。フリーダム・エッジはその流れの上にある。
政権が代われば温度は変わる。それでも、艦艇が同じ海域で同じ手順を確認した実績は残っていく。
制度と実績が積み上がるほど、政治の振れ幅だけで全部が止まる可能性は下がっていく。そこが定例化の効果である。
Jアラートが鳴る側にいる
日本の読者にとって、この演習は「参加国のニュース」である。同時に、反応が飛んでくる側のニュースでもある。
北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域に落ちれば、報道が出る。列島を越える軌道であればJアラートが鳴る。
朝の通勤時間にスマートフォンが一斉に鳴る、あの状況である。過去にも演習の前後で起きてきた。
演習そのものへの賛否は分かれるところだろう。抑止のために必要だという見方もあれば、緊張を上げるだけだという見方もある。
ただ、9月上旬にそういう朝が来る可能性が平時より高い、という見通しは共有しておいて損はない。北海道や東北の自治体では、避難訓練の日程が前倒しになることもある。
まとめ
- 韓国国防部は8月28日、日米韓の共同演習フリーダム・エッジを9月7日から11日まで済州島沖の公海で実施すると発表した
- 内容は海上ミサイル防衛、防空を含む航空訓練、対潜水艦戦、サイバー防衛にまたがる
- トランプ大統領は米韓の二国間演習を縮小していた。二国間は絞り、3か国の枠組みは残すという線の引き方になっている
- 北朝鮮は発表前日に報復を表明していた。9月上旬から中旬に発射報道が出る確率は平時より上がる
出典・参考
- U.S., South Korea and Japan to hold joint military drill despite North Korea's threats — NPR
- S. Korea, US, Japan to conduct 'Freedom Edge' joint drills in early September — The Korea Times
- South Korea, Japan and US set joint drills despite Trump cuts — South China Morning Post
- Korea, U.S., Japan to hold Freedom Edge trilateral military exercise — UPI



