10月公開の分析は2025年末の仕事を捉えたもの
今回取り上げるのは、同研究所の坂本貴志氏による「生成AIを利用しているのは誰か」の前編と後編だ。全国就業実態パネル調査を使い、仕事での利用頻度と、働く人の属性や就労環境の関係を調べている。前編が分析した就業者は42,120人。生成AIには、テキスト・画像・動画などを生成する機能を持つAIが含まれる。[1]
同パネル調査の2026年調査は、1月5日から30日にインターネットで実施され、有効回収数は55,894人だった。調査全体の回答者数と、今回の就業者分析に使われた人数は異なる。仕事以外での利用を含む一般的な「AI利用率」とも分けて読む必要がある。[2]
| 確認する項目 | 今回の分析での意味 |
|---|---|
| 公開時期 | 前編は2026年10月1日、後編は10月2日 |
| 利用状況の対象時点 | 2025年12月についていた仕事 |
| 分析対象 | 就業者42,120人 |
| 毎日利用 | 1日1回以上、仕事で生成AIを利用 |
| 1回の数え方 | 一つの目的のための一連の操作 |
表は原資料の対象と定義を編集部が整理したものだ。たとえば文章の下書きを作り、続けて修正を頼んだ場合、画面上の入力回数だけで利用頻度を判断する設計ではない。調査の「回」とツール上のメッセージ数を同じものと考えると、日常的な利用の程度を読み違える。[1]
試した人の数と定着した人の数を分ける
2025年12月の仕事で、まったく利用していなかった回答者は64.7%だった。一方、毎日利用に当たる8.9%は、1日3回以上の4.9%と、1日1、2回程度の4.0%を合わせた割合だ。これらは就業者全体を分母とする数字であり、AI利用者だけの内訳ではない。[1]
会社がAIを導入したという説明だけでは、自分の仕事で使えるかはわからない。全員にアカウントがある場合も、特定部署だけで試している場合も、採用広報では「導入」と表現され得る。求職者が知りたいのは、その会社全体の印象より、応募する職種で何を任され、どこまで使えるかだ。
採用面談で尋ねるなら、「社員はAIを使っていますか」だけで終えず、応募先の部署での作業例を聞くと具体的になる。資料のたたき台、社内情報の検索、コードの補助など、担当業務との関係がわかれば、入社前に学ぶ内容も選びやすい。ただし、ここで挙げた作業は編集部の質問例であり、今回の調査が各社の運用を確認した結果ではない。
利用頻度は成果そのものでもない。何度も入力している理由が、難しい業務に取り組んでいるからなのか、回答の修正に時間を使っているからなのかは、この割合だけでは判断できない。毎日使うことを目的にするより、何の作業をどう進め、最後に誰が確認するかまで見るほうが、働く環境の説明として役立つ。
学ぶ機会との関係は、因果と区別して読む
後編の分析では、過去に自己啓発活動を行った層は、そうでない層より毎日利用の確率が約9.3パーセントポイント高かった。他の変数を考慮した推計結果であり、「学習すれば誰でも同じ幅だけ利用率が上がる」という介入実験の結果ではない。著者も一時点の分析では厳密な因果関係の特定が難しいと記している。[3]
パーセントポイントは割合同士の差を表す単位だ。利用の確率が何%増えたかという相対的な増加率とは違う。また、推計値を全体の8.9%にそのまま足し、自分の利用確率として読むこともできない。比較の条件が違う数字を混ぜないことが大切になる。
後編は非正規雇用者の利用確率が正規雇用者より低い傾向も報告し、研修機会や評価との関係を考察している。研修の不足が差を生んだと断定したものではなく、背景の可能性を論じた分析だ。個人に「もっと勉強すべきだ」とだけ求めたり、雇用形態から能力を決めつけたりする根拠にはできない。[3]
働く側にとっての問いは、AIを学びたいと思ったとき、実際に試して質問できる環境があるかだ。費用の補助があっても勤務中に練習できない場合と、担当業務を使って学び、確認を受けられる場合では、学習の進め方が変わる。求人に「研修あり」と書かれていれば、対象者、内容、実施時間を聞くところから始めたい。
転職先では導入名より運用を確かめる
今回の分析を企業選びに使うなら、利用率が高い業界を順位付けするより、応募先の説明を具体化する材料にしたい。次の質問は調査から効果が証明された選考術ではなく、編集部が提案する確認例だ。
- 使える範囲:応募する職種で利用できるツールと業務は何か。入力してよい資料はどう定めているか。
- 学べる機会:入社後に受けられる研修や相談先はあるか。経験の浅い人も対象か。
- 確認の担当:AIで作った文章やコードを、提出・利用する前に誰が確認するか。
- 評価の方法:利用回数を数えるのか、成果物の品質や仕事の進め方を見るのか。
企業の回答が抽象的なら、公開できる範囲で一つの業務例を頼むとよい。「資料作成を効率化している」という説明でも、素材の整理、下書き、事実確認のどの工程に使うのかで、担当者に求められる力は異なる。顧客情報や非公開の社内文書を見せてもらう必要はなく、運用の流れを説明してもらえばよい。
自分の経験を伝えるときも、使ったツール名だけでなく、任せた作業と自分で確認した範囲を分けて記録できる。文章を整える補助を使ったなら、事実の裏付けまで自動で済んだとは書かない。AIの提案を採用しなかった箇所も、理由を説明できれば担当範囲が伝わる。
文書を仕事として作る際の読者設定や確認記録は、テクニカルライターの学習と応募サンプルの準備でも整理している。AIの利用経験を「何ができるか」に置き換えるには、成果物と確認の過程をセットで示す視点が役立つ。
まとめ
- 10月公開の分析が示した毎日利用8.9%は、2025年12月の仕事を対象とする。現在の普及率や企業の導入率と置き換えない。
- 学習とAI利用の関連があっても、学習による効果や昇給、採用増減が証明されたわけではない。比較の条件と因果の限界を保って読む。
- 転職先の「AI導入」を確かめるときは、担当業務で使える範囲、学ぶ機会、出力の確認担当まで聞くと、働く環境を具体的に判断できる。
出典・参考
- リクルートワークス研究所・坂本貴志「生成AIを利用しているのは誰か(前編)」、2026年10月1日。
- リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、調査概要・2026年実施第11回調査。
- リクルートワークス研究所・坂本貴志「生成AIを利用しているのは誰か(後編)」、2026年10月2日。
広告・編集注記:この記事にアフィリエイト広告は含まれません。公式資料は2026年10月14日に確認しました。編集部は調査の個票データを再分析しておらず、企業への取材やAIツールの比較実測は行っていません。面談での質問は編集部の提案です。







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