レアアースとは17元素の総称
レアアース(rare earth elements、REE)とは、周期表のランタノイド15元素に、スカンジウムとイットリウムを加えた17元素の総称です。日本語では「希土類元素」とも呼ばれます。
ひとことで言えば、レアアースは「磁力、発光、触媒作用など、製品へ特別な機能を与える17元素のグループ」です。鉄や銅のように製品の骨格をつくる素材ではなく、少量を加えて磁石を強くしたり、ガラスを磨いたり、光の色をつくったりする用途で力を発揮します。
押さえておきたいポイントは次の4つです。
- レアアースは一つの元素ではなく、17元素の総称
- レアメタルという大きな分類の一部に含まれる
- EVのモーター、風力発電機、電子機器、触媒などに使われる
- 資源量だけでなく、分離・精製を含む供給網の集中がリスクになる
17元素は化学的な性質がよく似ています。一方、電子の状態にはわずかな違いがあり、それが磁気的・光学的な特性の差を生みます。この「似ているのに、働きは異なる」という特徴が、用途を広げると同時に分離・精製を難しくしています。
レアアース17元素の一覧
レアアースに含まれる元素は次の通りです。
| 区分 | 元素名 | 元素記号 |
|---|---|---|
| ランタノイド | ランタン | La |
| ランタノイド | セリウム | Ce |
| ランタノイド | プラセオジム | Pr |
| ランタノイド | ネオジム | Nd |
| ランタノイド | プロメチウム | Pm |
| ランタノイド | サマリウム | Sm |
| ランタノイド | ユウロピウム | Eu |
| ランタノイド | ガドリニウム | Gd |
| ランタノイド | テルビウム | Tb |
| ランタノイド | ジスプロシウム | Dy |
| ランタノイド | ホルミウム | Ho |
| ランタノイド | エルビウム | Er |
| ランタノイド | ツリウム | Tm |
| ランタノイド | イッテルビウム | Yb |
| ランタノイド | ルテチウム | Lu |
| 第3族元素 | スカンジウム | Sc |
| 第3族元素 | イットリウム | Y |
レアアースは「軽希土類」と「重希土類」に分けられることもあります。ただし、どこを境界にするかは資料や用途によって異なります。ニュースでは、ネオジムやプラセオジムが磁石の主原料、ジスプロシウムやテルビウムが高温でも磁力を保つための添加元素として登場することが多いでしょう。
17元素をすべて暗記する必要はありません。まずは、レアアースが単一の資源ではなく、元素ごとに用途、価格、供給リスクが異なるグループだと理解することが大切です。
レアメタルとの違い
レアアースとレアメタルは、同じ意味ではありません。日本の分類では、レアアースはレアメタルの一部です。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| レアアース | 化学的に近い17元素のグループ | ネオジム、セリウム、イットリウム |
| レアメタル | 産業に重要で、希少性や供給リスクがある金属の政策上の分類 | リチウム、コバルト、ニッケル、レアアースなど |
| クリティカルミネラル | 経済や安全保障に不可欠で、供給途絶の影響が大きい鉱物 | 国や時期によって対象が変わる |
| ベースメタル | 使用量が多く、産業の基礎になる金属 | 銅、亜鉛、鉛など |
JOGMECによると、日本では31鉱種がレアメタルとされ、17元素をまとめたレアアースはそのうちの1鉱種として数えられます。つまり、「レアメタルの中にレアアースがある」という関係です。
一方、クリティカルミネラル(重要鉱物)は、元素の化学的な分類ではありません。経済的重要性と供給リスクをもとに国や地域が指定するため、産業構造や政策が変われば対象も変わります。
リチウムやコバルトをレアアースだと思われることがありますが、どちらも17元素には含まれません。両者はレアメタルや重要鉱物として扱われるものの、レアアースとは別の元素です。
「レア」でも地球上に少ないとは限らない
レアアースという名前から、金や白金のように地球上の存在量が極端に少ない物質を想像するかもしれません。しかし、米国地質調査所(USGS)は、レアアースを「比較的豊富な17元素のグループ」と説明しています。
たとえばセリウムの地殻中濃度は約60ppmで、USGSによれば地殻に一般的に存在する78元素のうち25番目に多い元素です。レアアースの中で存在量が少ないツリウムやルテチウムも、金よりは多く存在するとされています。
それでも「レア」と呼ばれる理由は、発見された18〜19世紀に珍しい鉱物から見つかったことに加え、採算が合う濃度でまとまった鉱床が少ないためです。レアアースは広く薄く分布し、複数元素が一緒に含まれることが多くあります。化学的性質が似ている元素を一つずつ分けるには、複雑な工程と設備が必要です。
したがって、レアアースの希少性は「地球上にない」という意味より、「経済的に採掘し、必要な純度まで分離して安定供給できる場所が限られる」という意味で捉えるほうが実態に近いでしょう。
レアアースの主な用途
レアアースは、元素ごとの磁気、発光、触媒、耐熱といった特性を生かして使われます。代表的な用途を整理すると、次のようになります。
| 用途 | 主な元素 | 使われる製品・分野 |
|---|---|---|
| 高性能永久磁石 | ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム | EV・ハイブリッド車のモーター、風力発電機、産業用ロボット、スピーカー |
| 触媒 | セリウム、ランタン | 自動車の排ガス浄化、石油精製 |
| 研磨剤・ガラス | セリウム、ランタン | 液晶用ガラス、光学レンズ、ガラス研磨 |
| 蛍光体・発光材料 | ユウロピウム、テルビウム、イットリウム | ディスプレイ、照明、LED |
| レーザー・光通信 | ネオジム、エルビウム、イットリウム | レーザー機器、光ファイバー通信 |
| 合金・セラミックス | スカンジウム、イットリウム | 航空宇宙用合金、耐熱性セラミックス |
中でも重要なのが高性能永久磁石です。ネオジム磁石は小さくても強い磁力を持ち、モーターの小型化と高効率化に役立ちます。高温になる車載モーターでは、耐熱性を高めるためにジスプロシウムやテルビウムを加える場合があります。
なお、「EVにはレアアースが必要」という説明は、少し注意が必要です。一般的なリチウムイオン電池の主要材料であるリチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛は、レアアースではありません。レアアースが主に使われるのはモーターの永久磁石です。また、永久磁石を使わない方式のモーターもあるため、すべてのEVが同じ量のレアアースを必要とするわけではありません。
中国依存が問題になる理由
レアアースの供給リスクは、鉱石の埋蔵場所だけでは決まりません。採掘した鉱石を処理し、元素を分離・精製し、合金や磁石へ加工するまでのサプライチェーン全体を見る必要があります。
USGSの「Mineral Commodity Summaries 2026」によると、2025年の世界のレアアース鉱石生産量は酸化物換算で推定39万トンでした。このうち中国は27万トンで、約69%を占めます。
さらに集中度が高いのが分離・精製です。JOGMECがIEAのデータをもとに整理した2024年の精錬量では、中国の構成比は91.4%でした。鉱山が中国以外にあっても、加工の途中で中国を通る供給網が残りやすいのです。
日本も輸入に依存しています。JOGMECが財務省貿易統計の8品目を純分換算した集計では、2024年に日本が輸入したレアアースの71.9%を中国が占めました。レアアース全体の数字であり、重希土類など元素によって依存度はさらに高くなる場合があります。
供給が一国へ集中すると、輸出管理、外交関係、災害、操業停止などが世界の製造業へ波及します。2025年以降、中国は一部の中・重希土類関連品目への輸出管理を強化しました。2026年6月時点で、経済産業省は許可の遅延や税関検査の長期化により、日本企業にも影響が出ていると説明しています。
レアアースは使用量が少なくても、代替品の認証や製品設計の変更には時間がかかります。小さな部材が工場全体を止める「チョークポイント」になり得る点が、経済安全保障上の重要性を高めています。この構造は、地経学とは何かを解説した記事でも詳しく紹介しています。
採掘とリサイクルの課題
供給源を増やせば、すべて解決するわけではありません。レアアースの採掘と利用には、主に3つの課題があります。
ひとつ目は、分離・精製の難しさです。性質が似た元素を高純度で分けるには、多段階の処理が必要になります。鉱床によってはウランやトリウムを伴うため、残さや排水を適切に管理しなければなりません。環境対策を含む設備投資と操業ノウハウが、新しい供給網をつくる際の壁になります。
ふたつ目は、元素ごとの需要の偏りです。ひとつの鉱石から複数のレアアースが得られても、需要が大きいネオジムと、同じ比率でほかの元素が売れるとは限りません。欲しい元素だけを増産しにくいことが、需給と価格を不安定にします。
三つ目は、リサイクルの難しさです。大型磁石のように回収対象がまとまっていれば再利用しやすい一方、電子機器の中へ少量ずつ分散したレアアースは、回収と分離の費用が高くなります。製品を回収する仕組み、磁石を取り外しやすい設計、再精製技術を一体で整える必要があります。
採掘、リサイクル、使用量の削減、代替材料の開発は、どれかひとつを選ぶ関係ではありません。供給途絶に強い仕組みをつくるには、複数の対策を組み合わせる必要があります。
日本はどう確保するのか
日本はレアアースを含む鉱物資源の多くを海外からの輸入に頼っています。そのため、政府と企業は次のような対策を進めています。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 供給源の多角化 | 豪州など中国以外の鉱山・分離精製事業へ出資する |
| 国内の製錬基盤 | 分離・精製や磁石材料の国内生産能力を維持・強化する |
| 備蓄 | 供給途絶に備え、重要度の高い鉱種を保有する |
| 省資源・代替 | 使用量を減らす磁石や、レアアースを使わない材料を開発する |
| リサイクル | 使用済み磁石や製品からレアアースを回収する |
| 国内資源の調査 | 南鳥島周辺のレアアース泥などの資源量と採算性を検証する |
供給源の多角化では、豪州の鉱山で採掘し、マレーシアで分離・精製する事業などへ日本が長期的に関与してきました。2025年には、中国以外で商業規模の重希土類分離・精製が始まる動きも報告されています。
国内資源として注目されるのが、南鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)にあるレアアース泥です。2026年1月には、水深約6,000メートルからレアアース泥を船上へ揚げる実証試験に成功しました。
ただし、回収に成功したことと商業生産できることは同じではありません。深海から安定して大量に回収する技術、分離・精製までの一連の工程、環境影響、費用を検証する必要があります。南鳥島の資源は将来の選択肢として有望ですが、短期的に輸入依存を解消する「すぐ使える鉱山」ではない点に注意が必要です。
レアアースを理解する3つの視点
レアアースのニュースを読むときは、「どれだけ埋まっているか」だけでなく、次の3点を見ると構造を捉えやすくなります。
第一に、どの元素の話なのか。磁石に使うネオジムと、研磨剤に使うセリウムでは、用途も需給も異なります。
第二に、サプライチェーンのどの工程が集中しているのか。鉱山の国だけでなく、分離・精製、合金、磁石の生産国まで確認する必要があります。
第三に、代替へどれくらい時間がかかるのか。材料を替えれば性能や製造工程も変わるため、価格が上がったからといってすぐ別の素材へ切り替えられるとは限りません。
レアアースの本質は、単なる「珍しい資源」ではありません。少量で先端製品の性能を左右し、供給網の集中によって産業と外交をつなぐ戦略物資です。この3つの視点を持つと、輸出管理、EV、再生可能エネルギー、南鳥島の資源開発といったニュースを一つの構造として理解できます。
よくある質問
レアアースは何に使われるのか
EVやハイブリッド車のモーター、風力発電機、スマートフォン、スピーカー、ディスプレイ、光学レンズ、排ガス浄化触媒、医療・レーザー機器などに使われています。元素ごとに役割が異なり、ネオジムは永久磁石、セリウムは触媒や研磨剤、ユウロピウムやテルビウムは発光材料が代表例です。
レアアースとレアメタルの違い
レアアースは17元素からなる化学的なグループです。レアメタルは、産業上重要で希少性や供給リスクがある金属をまとめた政策上の分類です。日本では、レアアースはレアメタル31鉱種のうちの1鉱種として扱われます。
リチウムやコバルトはレアアースなのか
いいえ。リチウムとコバルトはレアメタルや重要鉱物に含まれますが、レアアース17元素には含まれません。EVでは、リチウムやコバルトは主に電池、ネオジムなどのレアアースは主にモーターの永久磁石に関係します。
レアアースは中国でしか採れないのか
中国以外でも米国、豪州、ミャンマー、インドなどで採掘されています。課題は採掘だけでなく、分離・精製や磁石製造まで中国のシェアが高いことです。供給リスクを判断するときは、鉱山から加工までの全工程を見る必要があります。
レアアースは枯渇するのか
地殻中の存在量だけを見れば、すぐになくなる資源ではありません。ただし、採算の合う鉱床、必要な元素の組成、環境規制、精製能力、地政学的な制約によって、一時的な不足や価格高騰は起こり得ます。「存在する量」と「安定して市場へ供給できる量」は別です。
日本でもレアアースは採れるのか
南鳥島周辺のEEZにはレアアース泥が分布し、2026年には水深約6,000メートルからの回収実証に成功しました。ただし、商業化には採算性、量産技術、環境影響などの検証が必要です。現時点では輸入、備蓄、リサイクル、使用量削減を組み合わせることが現実的です。
この記事の更新方針
この記事は、USGSの年次統計が更新されたとき、中国を含む主要国の輸出管理に大きな変更があったとき、日本の資源政策や南鳥島周辺の実証試験に進展があったときに内容を見直します。統計は対象年と集計範囲を明記し、政府機関・公的研究機関の一次資料を優先します。
出典
- クリティカルミネラル(重要鉱物)って何? 用途や重要性について解説 | JOGMEC
- 中国によるレアアースに対する管理強化に係る動向 | JOGMEC
- Rare Earths Statistics and Information | U.S. Geological Survey
- Mineral Commodity Summaries 2026 | U.S. Geological Survey
- Rare Earth Elements—Critical Resources for High Technology | U.S. Geological Survey
- Rare-Earth Elements | U.S. Geological Survey
- 令和5年度エネルギーに関する年次報告 第1部第2章第2節 | 資源エネルギー庁
- 第4節 サプライチェーンの強靱性と重要鉱物 | 通商白書2025年版・経済産業省
- 2025年 金属鉱物資源をめぐる動向 | JOGMEC
- レアアース供給源多角化の進展状況 | JOGMEC
- レアアース泥で注目 日本の海洋鉱物資源について解説 | JOGMEC
- 南鳥島周辺海域のレアアース泥に関する実証試験について | 経済産業大臣記者会見
- 中国の軍民両用品目の輸出管理と日本企業への影響 | 経済産業大臣記者会見
- 通商戦略2026 | 経済産業省



