57%が好意的に捉える「社会主義」
Gallupの調査は2026年8月3〜24日に全米の18歳以上1,200人へ電話で実施したものだ。それぞれの言葉に肯定的か否定的かを尋ねており、社会主義政党への投票意向や、特定の政策への賛否を測ったものではない。年齢による違いは大きい。[1]
| 対象 | 社会主義に肯定的 | 資本主義に肯定的 |
|---|---|---|
| 18〜34歳 | 57% | 43% |
| 55歳以上 | 34% | 65% |
| 米国の成人全体 | 43% | 55% |
出典:Gallup。2026年8月調査、9月23日公表。各概念について個別に質問している。
社会主義への好感と、市場経済への支持は両立しうる。同じ調査で、18〜34歳の69%は自由な企業活動を意味する「free enterprise」にも肯定的だった。若者の57%が企業活動そのものを否定している、と読むのは早計だ。全国の成人全体では資本主義への好感度のほうが高く、世代間の違いをそのまま「米国全体の社会主義化」と捉えることもできない。[1]
給料の半分が家賃に消える生活
ロサンゼルスの研究所で技術職として働くエミリー・スラマティさんは25歳。仏紙ル・モンドの2026年10月14日付の現地報道によると、シェアして暮らすアパートで自身が払う家賃は月1,600ドルで、給料の半分を占める。初めて選挙運動のボランティアに参加し、最も関心を寄せていたのは生活費だった。[2]
これは、家賃の上昇率が落ち着けば解消する問題でもない。ハーバード大学住宅研究合同センターの『America’s Rental Housing 2026』によると、2024年には米国の賃貸世帯の49%、2,270万世帯が、所得の30%超を家賃と光熱費に使っていた。うち1,210万世帯は半分超を費やしている。これは全年齢の世帯の数字で、若者だけの割合ではない。[3]
同報告は、新規募集の家賃に落ち着きが見られる一方、過去の値上がりと安価な住戸の減少で負担が高止まりしていると指摘する。「値上がりが止まった」と「無理なく払える」は別の状態なのだ。[3]
働いて収入を得ても、住まいを確保するだけで余裕がなくなる。そうした暮らしから政治を見ると、景気全体の成長だけでは答えにならない。家賃の上昇を抑える、医療や保育の自己負担を減らすといった政策が、自分の生活を変える選択肢になる。
マムダニ市長への好感と生活費対策
ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長は、その選択肢を具体的な政策として打ち出してきたDSA会員だ。[4]Siena Research Instituteが10月28日に公表した調査でも、ニューヨーク市内の回答者の69%が市長を好意的に捉えていた。[5]
この調査は10月19〜22日にニューヨーク州の投票に行く見込みの高い有権者807人を対象に実施し、69%はその市内居住者の集計だ。市内の全住民や若者だけの数字ではなく、市政運営への支持率とも質問が異なる。州全体の好感度は47%だった。市内の人気をそのまま全米での支持に置き換えることはできない。[5]
一方、市政では生活費の負担を減らす施策が動いている。
- 家賃安定化制度の対象住宅で更新時の基準引き上げ率を0%に。 市の家賃指針委員会は2026年10月1日〜2027年9月30日に始まる1年・2年契約の基準をともに0%とした。市場家賃の住宅も含めて、市内のすべての家賃を凍結する制度ではない。[6]
- 既存の保育補助を受ける家庭の自己負担を市が肩代わり。 市は8月、自己負担がある約2万2,000の低所得家庭について、9月から費用を負担すると発表した。すべての家庭が無条件で無料保育を利用できる、という意味ではない。[7]
こうした政策は月々の支出に直接関わる。ただし、好感度調査だけでは、どの政策が人気を押し上げたのかまでは分からない。家賃を抑えた後も住宅の供給や修繕をどう維持するか、保育の受け皿と財源をどう確保するかは、施策の継続性を判断するうえで欠かせない問いになる。
DSAは何を目指す組織なのか?
DSAが掲げる「民主的社会主義」は生活支援の拡充にとどまらない。公式の説明では権威主義的な社会主義を退ける一方、エネルギーや交通など生活を左右する重要分野の共同所有を目指す。福祉を厚くする社会民主主義よりも先の変革を志向すると、自ら説明している。[8]
綱領には国民皆保険、公的住宅の建設、労働組合の権利拡充に加え、主要企業・産業の公的所有、上院の廃止など、経済や統治制度の大きな変更も並ぶ。公共サービスの充実への賛成と、DSA綱領全体への賛成は同じではない。[9]
組織は拡大している。DSAは7月4日に会員が12万人に達したと発表し、AP通信の10月8日付報道では12万6,000人とされ、過去2年で倍増したという。会員数は投票してくれる有権者の数や、日々活動する人数とは区別して見る必要がある。[10][11]
支持を組織する方法はSNSの発信や選挙だけではない。APが取材したテキサス州オースティンのDSAでは、住まいのない人への食事作り、労働運動への支援、地方議会選挙の戸別訪問を重ねていた。理念に共感した人が地域で手を動かす活動へ参加できる。[11]
同支部の共同代表、メイラ・ベドロスさん(29歳)はAPの取材に「理想の社会がどんなものか、完璧な構想があるわけではない」と語った。そのうえで、互いをよりよく扱うことで、よりよい世界を「リハーサル」できると話している。完成した制度の青写真だけで人が集まっているわけではないことが、この言葉からうかがえる。[11]
ガザへの抗議と税金の使い道
若者が求める変化は、国内の再分配だけでは説明しきれない。前出のスラマティさんはル・モンドに、税金を暮らしやインフラの改善へ使ってほしいとも述べた。ガザでの軍事行動を「ジェノサイド」と呼び、戦争に資金を投じることに反対している。[2]
DSAの綱領もイスラエルへの軍事・経済援助の停止を明記する。医療や住宅に公的資金を求めることと、対外援助の使い道を問うことが、同じ組織の政策として結びついている。[9]
生活費の不満とガザへの抗議を、どちらか一方が本当の動機だと決める必要はない。スラマティさんの発言は同じ人の中で両方の関心が重なることを示している。ただし、イスラエル政府への抗議に参加する人が全員社会主義者というわけでも、社会主義に好意的な若者が全員DSAの外交方針に賛成しているわけでもない。Gallupの好感度調査はそこまでの一致を測っていない。
二大政党の内側で起きている対立
DSAの拡大は民主党と共和党の二者択一だけでは捉えにくい。DSAは民主党と別の組織として活動しながら、民主党の予備選で候補を支援し、党内の政策や候補者選びに影響を与えている。APによると、2026年にはニューヨーク、ペンシルベニア、コロラドで民主的社会主義者の候補が連邦議会の民主党予備選を勝ち抜いた。[11]
有権者の不信は相手側の政党だけに向いているとも限らない。ル・モンドの取材に応じたロサンゼルスの30代の飲食店員ダニエルさんは、候補を選ぶ条件として、大企業の資金に支えられていないことを挙げた。家計への支援に加え、誰の資金で政治が動くのかも問われている。[2]
批判も強い。共和党のヤング・キム下院議員は9月のNewsmax出演で、家族が北朝鮮を逃れた経験に触れ、社会主義は自由と経済的機会を損なうと主張した。一方、DSAは権威主義を否定し、職場や社会の意思決定を民主化すると説明する。同じ「社会主義」という言葉から想起する制度や経験の違いも、対立を深くしている。[12][8]
中間選挙を見るときは、民主党の議席増減と、DSAが支持を広げたかを分けて追う必要がある。予備選の勝利が本選の当選につながるか。都市部での支持を別の地域へ広げられるか。当選した政治家が財源や実施権限の制約の中で公約を形にできるか。11月3日の投票と、その後の政策で確かめられるのは、そうした点だ。[13]
若者の社会主義への関心を理解するには、働いても住居費を払うと余裕がなくなる生活に目を向けたい。そのうえで、何を公的に支え、誰が負担し、誰が決めるのかを考える。DSAへの参加者の言葉をたどると、家賃と公共サービス、税金と戦争、政治を動かす資金が、一つの生活の中でつながって見えてくる。
まとめ
- 18〜34歳の社会主義への好感度は57%だが、特定政党への投票意向ではない。同世代には企業活動への支持もあり、求める制度を具体的に見る必要がある。
- 家賃や保育の負担と、ガザをめぐる税金の使い道への疑問が、一人の若者の中で重なっている。経済と外交を切り離すだけでは、参加の動機を捉えきれない。
- DSAは民主党内の候補者選びと地域活動を通じて影響力を広げている。全国的な支持と持続的な政策成果につながるかは、都市部の人気や会員数だけでは判断できない。
出典・参考
- Gallup「Socialism’s Positive Rating Tops 40% for First Time」(2026年9月23日。調査票・集計表へのリンクを含む)
- Le Monde/Jessica Gourdon「A new generation of activists is leading the American left’s socialist awakening」(2026年10月14日)
- ハーバード大学住宅研究合同センター『America’s Rental Housing 2026』発表資料(2026年3月12日)
- DSA「Your National Political Committee newsletter — Socialism Beats Fascism」(2026年2月12日)
- Siena Research Institute「2026 October SNY Crosstabs」(2026年10月28日公表、19〜22日調査)
- NYC Rent Guidelines Board「2026–27 Apartment/Loft Order #58」(2026年6月25日採択)
- ニューヨーク市長室「Mayor Mamdani Announces City Will Cover All Out-of-Pocket Child Care Costs for Families Receiving Child Care Subsidies」(2026年8月13日)
- DSA「What is Democratic Socialism?」(2026年10月31日確認)
- DSA「Our Program」(2026年10月31日確認)
- DSA「Your National Political Committee newsletter — Socialism is Practical」(2026年7月16日)
- AP通信/Jesse Bedayn「Texas socialists are building a movement, one sandwich at a time」(2026年10月8日)
- ヤング・キム下院議員事務所「Young Kim to Newsmax: Socialism Destroys Freedom, Economic Opportunity」(2026年9月3日)
- ニューヨーク市選挙管理委員会「General Election 2026」(2026年10月31日確認)
文中の米国の人々の発言は、上記の現地報道から紹介・翻訳したものです。カバー写真:2026年6月24日、ミルウォーキー市庁舎前のDSA集会。出典:Wikimedia Commons。写真:Paul Johnson(@7pej)/CC BY 4.0。カバー用にトリミング・サイズ・形式を変更。







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