清月記とは? まず押さえたい会社の輪郭
清月記は代表取締役・菅原裕典氏が率いる仙台の企業だ。公式会社概要に掲載する売上高は56億円(2024年4月期)、従業員数は393名(2025年5月現在)。葬祭業を中心に複数の事業を展開している。以下は公式サイトの掲載値であり、2026年の業績や在籍人数を示す数字ではない。[1]
| 項目 | 公式会社概要の記載 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社清月記 |
| 設立 | 1985年3月 |
| 代表者 | 代表取締役 菅原裕典 |
| 資本金 | 2,500万円 |
| 売上高 | 56億円(2024年4月期) |
| 従業員数 | 393名。正社員256名・パート社員137名(2025年5月現在) |
| 公式サイトが案内する本社所在地 | 宮城県仙台市宮城野区日の出町2-5-4 |
| 主な事業 | 葬祭、仏壇・仏具・墓石、生花、飲食、婚礼、保険、不動産、ハイヤー、宿泊、総合広告代理店 |
所在地には資料による違いがある。公式サイトは上記の日の出町を案内する一方、七十七銀行の2026年4月9日付資料は、本社を「仙台市泉区長命ヶ丘二丁目22番地の2」と記載している。訪問や郵送の際は、利用する施設・担当窓口の住所を確かめたい。両資料から移転の有無は確認できない。[1][3]
また、56億円という売上高から、個別の葬儀料金や事業ごとの収益力はわからない。今回参照した会社概要には部門別売上や営業利益の記載がなく、グループのどこまでを含む数字かも明示されていない。企業の規模を知る手がかりとして読む数字だ。
出発点は、父と始めた「すがわら葬儀社」
清月記の前身は1985年3月に仙台市泉区長命ヶ丘で開業した「有限会社すがわら葬儀社」だ。菅原氏の業界講演プロフィールでは、東北学院大学経済学部を卒業し、名古屋で修業した後、父親とともに創業したと紹介されている。代表取締役への就任は2001年、清月記への社名変更は2010年5月だ。[1][4]
事業の広がりを、主な節目で整理すると次のようになる。[1]
| 時期 | 事業の節目 |
|---|---|
| 1992年12月 | 仙台泉斎場 清月記を開設 |
| 2008年7月 | 総本社を仙台市宮城野区日の出町へ移転 |
| 2011年2月 | 飲食部門「四季の彩り 一乃庵.」を開設 |
| 2012年12月 | 「ライフスタイル・コンシェルジュ」を開設 |
| 2018年6月 | 「みおくり邸宅 加茂」を開設 |
| 2019年8月 | 福島・土湯温泉の「土湯別邸 里の湯」を運営 |
| 2021年4~5月 | マコセエージェンシー、懐石料理 東洋館を運営 |
| 2023年8月 | 仙台市青葉区本町にエンバーミングセンターを開設 |
| 2024年4~6月 | 不動産事業、「清月記の保険」を開始 |
| 2025年12月 | 「バーチャル霊園」をリリース |
| 2026年3月 | 「みおくり邸宅 利府」を開設 |
会館を増やすだけでなく、料理、生活相談、宿泊、供養の技術へと事業の種類が増えている。七十七銀行も清月記をM&Aを通じて事業領域を広げてきた企業と説明している。ただし、個々の取得価格や持株比率までを、この沿革から読み取ることはできない。[3]
葬儀の規模より「どう過ごすか」で施設を分ける
清月記が扱う葬儀は、家族葬に限らない。公式案内には会館葬、寺院・自宅葬、ホテル葬などがあり、社葬や団体葬にも対応する。密葬を先に行い、後日ホテルでお別れの会を開くという組み合わせも示している。[5]
その中で「みおくり邸宅」は、自宅のような空間で別れの時間を過ごす家族葬のブランドだ。ブランドサイトでは、1日1組限定で貸し切る宿泊型の家族葬施設と説明している。[6]
具体例として、仙台市泉区の「みおくり邸宅 高森」は、家族葬スペースの収容人数を20名までとし、家族室、ツインの寝室、キッチン、浴室を備える。靴を脱いで入るエントランスも特徴だ。[7]
みおくり邸宅は、祭壇や式の進行に加え、家族が滞在する空間と時間を提供するサービスといえる。参列者を大勢迎える葬儀と、近親者が泊まりながら見送る葬儀では、必要な設備が変わる。「家族葬」という名称だけで選ぶより、誰が来て、何人が泊まり、どんな時間を過ごしたいかを先に考えると、施設の違いが見えやすい。
なお、高森の定員や設備を、ほかの会館へ一律に当てはめることはできない。人数、宿泊、安置、宗教上の希望は、実際に利用する会館ごとに確認する必要がある。
飲食・婚礼・生活相談へ広がる事業には接点がある
清月記の多角化は葬儀の周辺業務と、その顧客である家族の日常という二つの方向から理解できる。
葬儀には、会食、花、返礼品、送迎、故人の人生を伝える文章や映像が必要になる。清月記の沿革には、飲食部門やフラワースタジオ、ハイヤーの開設が並ぶ。2021年から運営するマコセエージェンシーも、一般の広告制作に加え、遺族から話を聞いてつくる会葬礼状やメモリアルDVDを事業としている。葬儀と広告制作には、故人の人生を言葉や映像にするという接点がある。[1][8]
一方、仙台市青葉区一番町の「ライフスタイル・コンシェルジュ」は、シニアの生活相談窓口だ。趣味、学び、旅行、記念日の演出、エンディングノートなどを扱い、ライフプランについては専門家や専門会社への紹介・調整も行う。相続や保険の相談も案内している。[9][10]
これらの事業を並べると、葬儀という一度の依頼から、家族が暮らしの節目に相談できる関係へ広げようとする事業構成が見える。ただし、各サービス間でどれほど顧客が行き来しているか、相互送客が売上へどの程度寄与しているかは、公表資料からはわからない。事業同士の接点と、収益面の成果は分けて考えたい。
東日本大震災で担った役割と、地域とのつながり
清月記の歩みで欠かせないのが、2011年の東日本大震災への対応だ。経済産業省の「おもてなし経営企業選」の紹介資料は、同社が棺を供給し、仮埋葬や、その後の掘り起こし・火葬に関わったことを記している。これは平時の葬儀を行う設備や人材が、災害時の地域を支える役割も担った事例だ。[11]
また、菅原氏は震災で両親を失った子どもを支援する非営利団体「JETOみやぎ」の発起人になった。団体の公式サイトはその成り立ちと支援活動を説明している。葬儀会社としての業務と、遺された子どもへの支援は活動の性質が異なるが、死別後の家族にも目を向ける姿勢が読み取れる。[12]
地域との関係は返礼品の仕組みにも表れている。仙台市の2017年度「四方よし」企業大賞の紹介によると、清月記は地元事業者と返礼品の独自商品を開発し、在庫調整などにデータ分析を取り入れていた。返礼品の箱詰め・袋詰めを社内で行うことで、障害のある人の雇用機会もつくったという。同社は同年度の優秀賞を受賞している。[13]
返礼品は数をそろえ、短い期間で届ける必要がある。地元らしい商品をつくるだけでなく、在庫や作業の仕組みまで整えて初めて葬儀の現場で使える。清月記の地域との関わりは、寄付や協賛だけでなく、日々の調達・商品開発・雇用の中にも組み込まれてきた。
ただし、受賞当時の雇用人数や商品構成比を、現在の実績として扱うことはできない。過去に評価された取り組みと、いまの運用状況は、時点を区別して読む必要がある。
デジタル化は、葬儀のライブ配信から続いている
清月記のIT活用は最近のアプリ開発から始まったものではない。USEN ICT Solutionsが公開した2021年11月時点の導入事例で、同社は2000年代初頭に葬儀のライブ配信を始めたと説明している。コロナ禍にはYouTube LiveやZoomも利用し、当時30数カ所あった拠点の回線を本社でまとめて管理していたという。[14]
同事例には、会場のカメラを本社から遠隔操作する運用も記されている。式場に来られない人へ映像を届けるには、カメラだけでなく、会場と本社をつなぐ通信や、配信を扱う人の体制が必要になる。葬儀のデジタル化は、画面に映る機能と、裏側の運用の両方で成り立っている。
「仙台迎賓館 斎苑」の公式サービス案内では、ライブ配信は喪主の申し込みがあった葬儀についてパスワードを発行し、葬儀後に無効にする方式としている。対応しない会館もあるため、どの葬儀でも自動的に配信されるサービスではない。[15]
エンバーミングセンターの開設も、別れの時間を支える取り組みの一つだ。エンバーミングは遺体に保全などの処置を行う技術で、七十七銀行は清月記がその普及に取り組んでいると紹介している。処置の希望や可否、費用は、葬儀の内容と合わせて個別に確かめる必要がある。[3]
「バーチャル霊園」が変える、葬儀後の家族との関係
清月記の「バーチャル霊園」は故人の名前や写真を登録し、家族や友人と思い出を共有できるスマートフォンアプリだ。清月記の発表では2025年12月に正式リリースし、2026年1月26日に仙台で発表・体験会を開催した。iOSとAndroidに対応し、無料で利用できる。[2]
公式の機能案内にある主な内容は、次のとおりだ。[16]
- 故人をしのぶ場所をつくる。 「OHAKA」と呼ぶ空間に故人の名前や遺影を登録する。
- 家族や友人を招く。 招待コードを使い、管理人が参加を承認する。
- 思い出を共有する。 メッセージ、写真、動画を投稿できる。
- 手を合わせる時間を演出する。 画面をタップすると、季節に応じた映像と音楽が流れ、訪問履歴が残る。
- 管理を引き継ぐ。 管理権限を別のメンバーへ譲渡できる。
清月記は伊藤忠インタラクティブとの共同開発と説明し、課金収益を目的にしていないとしている。物理的なお墓まで移動しなくても、故人を思い出す時間を持てることがサービスの中心だ。[16]
事業として見ると、葬儀が終わった後も家族が接するサービスを持ったことが大きい。式の当日だけの関係から、命日や日常の中で故人を思い出す時間へ接点が広がる。ただし、無料アプリが葬儀の受注や収益にどう結びついているかは、確認できる資料では示されていない。
仙台経済新聞は2026年2月2日付の記事で、清月記の説明として、同年1月末までに約700人が登録したと報じている。これはその時点の登録者数であり、現在の利用人数や継続利用率を表す数字ではない。[17]
一方、長く使うサービスだからこそ、データの扱いも知っておきたい。公式案内では、アルバムに投稿したデータはダウンロードできず、管理人が「墓じまい」を行うと、メッセージやアルバムなどのデータがすべて削除される。写真や動画の原本は、アプリとは別の場所にも保存しておきたい。 家族の誰が管理を続けるか、参加者をどこまで広げるかも、利用前に話し合う意味がある。[16]
葬儀の料金は、セット価格と支払総額を分けて読む
清月記の費用を検討するときは、会館・形式・会員条件をそろえることが出発点になる。たとえば「みおくり邸宅 高森」の公式ページは、次のセット価格を掲載している。以下は2026年11月1日に確認した掲載例で、個別の葬儀の見積額ではない。[7]
| 高森のセット名 | 掲載価格(税込) | 会員価格(税込) |
|---|---|---|
| 28万円セット | 308,000円 | 275,000円 |
| 48万円セット | 528,000円 | 495,000円 |
| 68万円セット | 748,000円 | 715,000円 |
同ページでは、これらのセットについて一日葬は税込33,000円引きと案内する。ただし、セット価格を、そのまま最終的な支払総額と考えることはできない。 選ぶサービス、人数、安置する期間などをそろえた明細の確認が必要だ。[7]
公式の見積もりシミュレーションにも、セット価格のほか、棺、遺影写真、搬送、火葬場使用料、料理、返礼品、安置料の追加などの入力欄がある。サービス料や消費税を加えて概算を出す構成だ。どの項目が含まれるかは、申し込むセットの明細で確かめたい。[18]
見積もりを取るなら、次の条件を具体的に伝えると比較しやすい。
- 形式と人数。 通夜・告別式を行うか、参列者と会食する人がそれぞれ何人か。
- 搬送と安置。 迎えに来てもらう場所、距離、安置日数、延長時の単価。
- セットの範囲。 棺、遺影、花、会館使用、スタッフ、車両などの内訳。
- 別に支払う費用。 火葬、宗教者への謝礼、飲食、返礼品などの扱い。
- 変更と会員条件。 人数や日程が変わった場合の追加費用、割引の対象と適用条件。
国民生活センターも2026年6月の注意喚起で、家族葬という名称だけで安いと判断せず、明細のある見積書を受け取って確認するよう呼びかけている。これは葬儀サービス全般への助言であり、清月記で料金トラブルがあったことを示す資料ではない。[19]
働く人の休息と、運行管理の課題も見る
清月記のサービスを支えるのは、会館やアプリだけではない。突然の依頼を受け、遺族と話し、複数の手配を組み合わせる人の仕事がある。
七十七銀行は2026年4月、清月記に2億5,000万円の運転資金を融資したと発表した。融資に伴う目標として掲げたのは、2030年4月期の有給休暇取得率80%以上だ。これは今後の到達目標であり、すでに達成した実績ではない。同資料は、突発対応や長時間業務が起こりやすい葬祭業では、従業員の休息が安定したサービスの基盤になると説明している。[3]
一方、事業運営上の指摘もある。国土交通省・東北運輸局宮城運輸支局の2025年3月26日公表資料は、株式会社清月記の一般貸切旅客自動車運送事業について、本社営業所に対する文書警告を記載している。資料の「行政処分等年月日」は同年3月21日で、指摘事項は次の4点だ。[20]
- 運行管理者の選任・解任に関する届出違反
- 点呼の記録義務違反(記載事項の不備)
- 運転者に対する指導監督義務違反
- 運行管理補助者の選任・解任に関する届出違反
対象は貸切旅客自動車運送事業の運行管理であり、この資料が葬儀契約や葬儀料金の違反を指摘したものではない。また、文書警告後の是正内容や、その確認結果は同資料には載っていない。本記事では会社への聞き取りを行っておらず、是正の進捗は未確認だ。
事業が広がるほど、接客、料理、運転、情報管理など、守るべき品質の範囲も広がる。清月記を見る際は、理念や新サービスに加え、現場の人員配置、休息、安全管理をどう継続していくかにも目を向けたい。
清月記から見える、地域のサービス企業の変化
清月記の特徴は葬儀を起点に、家族の生活と記憶に関わる仕事を増やしてきたことだ。料理や花、礼状や映像、生活相談、供養アプリは異なるサービスだが、家族の節目を支えるという接点がある。
デジタル技術もその延長で使われている。ライブ配信は会場に来られない人へ葬儀を届け、バーチャル霊園は離れて暮らす人たちが故人の記憶を共有する場をつくる。遠隔でつながる機能の価値は、実際の葬儀や家族の事情と組み合わせて初めて見えてくる。
利用を考える家族にとっては、希望する別れ方と、会館・担当者・見積もりが合うかが判断の中心になる。事業を学ぶ人にとっては、地域の顧客を知る企業が既存事業の周辺へどのように仕事を広げるかを考える事例だ。今後注目したいのは、事業の数より、それぞれが続けられる仕組みだ。各事業の収益、アプリの継続利用、働く人の負担や安全管理の改善が、取り組みの成果を見極める手がかりになる。
まとめ
- 清月記は葬祭を中心とする仙台の多角化企業だ。 飲食・婚礼・生活相談などへの広がりを見ると、葬儀当日だけでなく家族の節目に関わる事業構成がわかる。
- デジタル化の軸は、離れた人が別れや供養に参加できることにある。 ライブ配信とバーチャル霊園では役割が異なり、利用条件やデータの保存方法まで知ることが選択につながる。
- 会社の理念と、利用時の具体的な条件を合わせて見ることが大切だ。 料金は総額の明細、施設は人数と過ごし方、事業運営は労働環境や安全管理まで確かめたい。
出典・参考
- 清月記「会社概要・沿革」
- 清月記「清月記アプリ『バーチャル霊園』プレスリリースおよび体験会のご案内」
- 七十七銀行「株式会社清月記に対する77サステナブルオーダーローンの融資実行について」(2026年4月9日)
- 綜合ユニコム「フューネラルビジネスフェア2012」菅原裕典氏の講演・プロフィール
- 清月記「葬儀のご案内」
- みおくり邸宅「公式ブランドサイト」
- 清月記「みおくり邸宅 高森」
- マコセエージェンシー「フューネラル事業部」
- ライフスタイル・コンシェルジュ「トップページ」
- ライフスタイル・コンシェルジュ「サービス紹介」
- 経済産業省「おもてなし経営企業選」清月記紹介資料(ミラサポplus掲載)
- JETOみやぎ「東日本大震災孤児を支援するJETOみやぎ」
- 仙台市「株式会社清月記(平成29年度 優秀賞)」(2024年4月5日更新)
- USEN ICT Solutions「株式会社清月記 様」導入事例(内容は2021年11月現在)
- 仙台迎賓館 斎苑「清月記のサービス」
- 清月記「バーチャル霊園」機能・操作案内
- 仙台経済新聞「仙台の清月記が『バーチャル霊園』 スマホで故人しのぶ新たな供養の形提案」(2026年2月2日)
- 清月記「自分でお見積り」
- 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」(2026年6月3日)
- 国土交通省 東北運輸局宮城運輸支局「一般貸切旅客自動車運送事業者に対し文書による警告を発しました」(2025年3月26日公表)
2026年11月1日時点の公開資料に基づく編集記事です。現地取材、葬儀サービスの利用検証、アプリへの会員登録・実機検証は行っていません。カバー:仙台城跡から見た仙台市街(2025年12月21日撮影)。清月記の施設写真ではありません。出典:Wikimedia Commons、撮影:掬茶、CC BY-SA 4.0。トリミング・サイズ変更・WebP変換。同ライセンスで提供。







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