サイボウズとは? グループウェアからノーコードへ進化したSaaS企業
サイボウズ株式会社は、企業向けのチームワーク支援ソフトを開発・提供する東証プライム上場企業(証券コード4776)だ。 1997年に愛媛県松山市で創業し、現在の本社は東京都中央区日本橋に置く。
掲げる理念は「チームワークあふれる社会を創る」。 組織やチームが情報を共有し、協働するためのソフトウェアを、創業以来一貫して手がけてきた。
主力製品は、プログラミング不要で業務アプリを作れるノーコードプラットフォーム「kintone(キントーン)」。 ほかにも中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」、中堅・大企業向けの「Garoon」、メール共有の「メールワイズ」を展開する。
▼ 会社概要(2025年時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | サイボウズ株式会社 |
| 証券コード | 東証プライム 4776 |
| 創業 | 1997年8月(愛媛県松山市) |
| 本社 | 東京都中央区日本橋 |
| 代表 | 代表取締役社長 青野 慶久 |
| 主力製品 | kintone / サイボウズ Office / Garoon / メールワイズ |
| 連結売上高 | 296億円(2024年12月期) |
| 企業理念 | チームワークあふれる社会を創る |
創業ストーリー:松山の2DKマンションから始まった
サイボウズの始まりは、1997年8月。 愛媛県松山市の、家賃7万円の2DKマンションの一室だった。
創業メンバーは3人。 経営を高須賀宣氏、販売を青野慶久氏、技術を畑慎也氏が担当した。 当初から「インターネット上だけで売る」という、当時としては先進的な発想でスタートしている。
最初のヒットは、1999年に大阪・梅田へ移転した頃に生まれた。 中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」だ。 スケジュール共有や掲示板といった機能を、安価に・手軽に使える点が中小企業に刺さり、同社は一気に成長軌道に乗る。
そして2000年、創業からわずか3年で東京証券取引所マザーズに上場を果たした。 急成長を絵に描いたような、華々しいスタートだった。
どん底:離職率28%、「普通のブラック企業」だった
ところが、上場後のサイボウズは深刻な危機に直面する。
M&Aによる事業拡大が裏目に出て、業績は悪化。 2005年、青野慶久氏が代表取締役社長に就任した頃、年間の離職率は28%に達していた。 社員のおよそ4人に1人が、毎年辞めていく計算だ。
長時間労働が当たり前で、青野氏自身が後に「普通のブラック企業だった」と振り返るほどの状態だった。 キャッシュを10億円使い果たし、社長が「消えたい」と感じるほど追い詰められた——それがサイボウズの“どん底”である。
ここからの再起こそが、いまのサイボウズを形づくる原点になった。
働き方改革:「100人100通り」で離職率を3.8%に
青野社長が取った手段は、奇策ではなかった。 辞めていく社員一人ひとりに、なぜ辞めるのかをひたすら聞くことから始めた。
見えてきたのは、人によって事情がまったく違うという当たり前の事実だった。 家庭の状況、働ける時間、目指すキャリア、ライフスタイル。 そこで打ち出したのが「100人いれば100通りの働き方があっていい」という人事方針である。
働く時間や場所を社員が選べる制度、副業の自由化、一度辞めても戻れる「育自分休暇」など、当時としては異例の施策を次々に導入した。
結果、28%だった離職率は2008年に10%を切り、2015年には3.8%まで下がった。 サイボウズは2014年から8年連続で「働きがいのある会社」に選出されるなど、いまや働き方改革の象徴的存在になっている。
注目すべきは、この組織改革が単なる福利厚生ではなかった点だ。 「チームワーク」を社内で徹底的に実践したことが、そのまま製品の説得力につながっていった。
kintone:ノーコードで「現場が自分で作る」を実現
働き方改革と並行して、サイボウズの事業も大きく転換する。
2011年、同社はクラウドサービス「kintone」を発表した。 プログラミングの知識がなくても、現場の担当者が自分の手で業務アプリを作れる——いわゆるノーコードの先駆けである。
それまで、業務システムは情報システム部やベンダーに頼んで作るものだった。 kintoneはその常識を覆し、「使う人が、使う道具を自分で作る」世界を可能にした。
| 製品 | 対象 | 役割 |
|---|---|---|
| kintone | 全社・現場部門 | ノーコードで業務アプリを自作 |
| サイボウズ Office | 中小企業 | スケジュール・掲示板などの定番グループウェア |
| Garoon | 中堅・大企業 | 大規模組織向けの情報共有基盤 |
| メールワイズ | チーム | 問い合わせメールの共有・対応管理 |
このノーコードという思想は、人手不足とDXの波に乗って急速に広がった。 2024年12月末時点で、kintoneの国内契約社数は3万7,000社に達している。
業績・財務分析:クラウド比率90%超、過去最高を更新
働き方改革とノーコードへの転換は、財務にも明確に表れている。 2024年12月期(FY2024/12)の連結業績を見てみよう。
売上の9割超をクラウドが占める、文字どおりのSaaS企業へと完全に移行した。 継続課金で積み上がるストック型の収益構造は、業績の安定性と予測可能性を高めている。
成長エンジンは明確にkintoneだ。 売上161億円で24.4%成長と、全社の伸びを牽引している。
強みと今後の課題:理念がそのまま競争力になる会社
サイボウズの最大の強みは、「自社が働き方改革の当事者である」という事実そのものだ。
チームワークを掲げる会社が、自らの組織で離職率28%から3.8%への改革を成し遂げた。 この実体験が、製品やブランドに他社には真似できない説得力を与えている。 「グループウェアの会社」という枠を超え、「働き方そのものを提案する会社」になっているのだ。
一方で課題もある。 kintoneが属するノーコード・業務アプリ市場は、国内外の競合がひしめく激戦区になりつつある。 Microsoft Power Platformのような巨大プラットフォーマーや、数多くのSaaSスタートアップとの競争は避けられない。 さらに、生成AIが「アプリを言葉で作る」時代を切り開きつつあるいま、ノーコードの優位性をどう再定義するかも問われている。
まとめ:失敗を語れる会社の強さ
サイボウズは、成功譚だけでできた会社ではない。 むしろ、離職率28%という失敗を堂々と語り、そこからどう立て直したかを資産に変えてきた会社だ。
松山の2DKマンションから始まり、上場後のどん底を経て、いまや売上296億円・過去最高益。 その歩みは、組織のあり方とプロダクトのあり方が地続きであることを教えてくれる。
働き方改革とノーコード。 この二つを掛け合わせたサイボウズは、AI時代のチームワークをどう描き直すのか。あなたはどう見るだろうか。
出典・参考
- サイボウズ - Wikipedia
- サイボウズの歴史・会社概要|サイボウズ株式会社(cybozu.co.jp)
- サイボウズ 2024年12月期 決算説明会資料(cybozu.co.jp/company/ir)
- 「離職率28%からの逆転劇 サイボウズが歩んだ“働きやすい会社”への道」ITmedia
- 「正社員の28%が退職…サイボウズ社長・青野慶久が『消えたい』を痛感したどん底とは?」文春オンライン
- 「サイボウズが過去最高の売上高・営業利益」マイナビニュース


