売上高40.58億円、営業利益8.49億円。まず期間をそろえて読む
noteの第3四半期累計は、2025年12月から2026年8月までの9カ月間を指す。前年の同じ9カ月間と比べた主な業績は、次のとおりだ。[1]
金額の単位:億円
| 指標 | 前年同期 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 30.46 | 40.58 | +33.2% |
| 営業利益 | 1.27 | 8.49 | +567.0% |
| 調整後EBITDA | 1.67 | 9.23 | +452.0% |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 2.12 | 9.94 | +368.1% |
金額は決算資料の百万円表示を億円に換算したもの。調整後EBITDAは、営業利益に減価償却費や株式報酬費用、その他一時費用を加えた、同社が重視する利益指標である。
売上高が約1.3倍に増える間に、本業の利益は約6.7倍になった。 営業利益率も、資料の表示額から計算すると約4.2%から約20.9%に上昇している。一方、直近3カ月の2026年6〜8月だけでは、売上高14.53億円、営業利益3.10億円。前年同期比でそれぞれ35.1%増、199.5%増であり、9カ月累計と3カ月単独の伸び率は区別したい。[1]
純利益には税務上の要因もある。決算短信では、累計の法人税等調整額がマイナス1億3,918万円となっている。将来の税負担を減らす効果を見込む「繰延税金資産」の計上などが関係するため、事業の稼ぐ力を読む際には営業利益と合わせて見る必要がある。[2]
増益の主因は売上成長。AIは費用の増加を抑える役割も担う
noteの利益が伸びた理由は、売上の増加に対して費用の増加を抑えられたことにある。累計では、売上総利益が前年同期比26.4%増えた一方、販売費及び一般管理費は27.28億円から27.61億円へ、約1.2%の増加にとどまった。既存の組織やシステムを生かして事業を拡大し、増えた粗利益を営業利益に残した形だ。[1][2]
直近3カ月の営業利益の増減分析では、売上高の増加によるプラスが2億2,700万円と最も大きい。人件費・業務委託費の減少は3,700万円のプラスだが、AI利用料を含む通信費の増加は2,500万円、採用教育費の増加は2,100万円のマイナス要因だった。なお、この分析ではGENIAC関連の売上・費用を「その他」にまとめている。[1]
AIの使い方にも具体性がある。noteは全社員にClaudeを配布し、経営陣やマネージャーもClaude Codeの研修を受けている。開発では要件定義や設計、コーディングに加え、コードレビューやエラー調査にもAIエージェントを組み込んでいるという。社員数は前年同期の161人から151人へ減ったが、直前の四半期の149人からは増えている。必要な採用を進めながら、生産性を高める方針だ。[1]
ここから得られる経営上の示唆は、AIの導入件数より、事業が伸びたときに追加で必要になる作業と費用を測ることだ。たとえば問い合わせ対応なら、件数の増加に対して対応時間と品質を維持できたか。編集業務なら、調査や確認の時間が減り、その分を企画や顧客対応へ回せたかを確かめる。
ただし、開示された費用差額には業務量や採用状況などの変化も含まれる。人件費・業務委託費の減少額すべてを、AIだけの効果とみなすことはできない。
noteの課金成長は、単価の上昇より購読者の広がりから生まれた
note上で売買されたコンテンツなどの総額を示すGMV(流通総額)は、6〜8月の3カ月で65.53億円となり、前年同期比18.3%増えた。月間購読者数も66.8万から80.7万へ20.7%増加。一方、購読者1アカウント当たりの平均月間購入額であるARPPUは、2,761円から2,708円へ下がっている。[1]
同社は、継続購読者の購入単価は上昇傾向にある一方、購入単価が低い新規・ゲスト購読者が増えたためだと説明する。つまり、平均単価だけを見ると見落とす顧客層の変化がある。購読者数は、その四半期に課金した1カ月当たりの平均アカウント数で、ゲスト購入も含む。毎月支払う会員だけの人数ではない。[1]
加えて、GMVに占める定期購読マガジンとメンバーシップの合計比率は29.4%に達した。単発購入で入ってくる人を増やしながら、継続的に支払う関係も育っている。もっとも、この比率だけでは、個々の契約が何カ月続くかまではわからない。
プラットフォーム利用料と事務手数料がGMVに占める「テイクレート」は、前年同期の16.7%から16.4%に低下した。有料記事やメンバーシップ、決済手段の構成が変わったためで、会社は取引総額を伸ばす施策の結果と説明する。この率には決済に関わる手数料も含まれ、そのまま利益率を示すものではない。[1]
課金サービスやECを運営する事業者にとっては、新規顧客と継続顧客を分けて、人数・単価・継続率を読むという実務に置き換えられる。初回購入が増えれば平均単価が下がることもある。値上げの必要性を判断する前に、どの顧客層が増減したのかを確かめたい。
note proは契約数が減ってARRが増加。無料施策の評価はその後が重要になる
法人向けのnote proでは、四半期末の月間継続収益を12倍して年換算するARRが8.39億円となり、前年同期比29.5%増えた。前四半期の7.73億円も上回る。ARRはその時点の継続収益の規模を示す指標で、すでに計上した年間売上や、将来の入金を保証する数字ではない。[1]
興味深いのは、契約数と収益が別の方向に動いたことだ。
| note proの指標 | 第2四半期 | 第3四半期 |
|---|---|---|
| 有料契約数(会社の集計区分) | 1,133件 | 1,078件 |
| 1契約当たり月間収益(ARPPU) | 56,895円 | 64,913円 |
| ARR | 7.73億円 | 8.39億円 |
背景には、第2四半期に実施した当初3カ月無料のキャンペーンがある。無料期間の終了に伴い、一部の解約が発生した一方、継続した契約の有料転換が収益を押し上げた。資料上の「有料契約数」にはキャンペーンの影響があるため、すべての契約が各時点で通常料金を支払っていたと解釈しないよう注意が必要だ。[1]
平均月次レベニューチャーンレートはマイナス0.5%だった。これは既存契約からの収益増が解約による減少を上回ったという意味だが、今回には無料期間終了の効果が含まれる。この水準が平常時にも続くとは限らない。[1]
無料体験や値引きを行う事業では、獲得件数に加え、無料期間後の支払い、数カ月後の継続、獲得・支援にかかった費用まで追う必要がある。今回、note proで有料転換が進んだことは確認できるが、開示数値だけでキャンペーン全体の投資回収まで判断することはできない。
次の事業は、記事を作品や商品の購入につなげる仕組み
noteが今後の成長策の中核に置くのが「AIコンテクストネットワーク」だ。記事の文脈をAIで読み取り、作品や商品ごとに公式情報、感想・レビュー、購入先へのリンクをまとめたキーワードページをつくる。2026年9月末時点で、書籍・映像・ゲームを対象に117万件超のページを展開している。これは8月までの決算実績より後の時点の情報だ。[1]
たとえば本のページなら、出版社の紹介と、実際に読んだ人たちの感想を見比べ、その先で購入へ進める。情報を投稿する場に、選ぶための情報と購入への導線を加える発想である。
noteは今後、企業に対して詳しい公式情報の掲載や購入先への導線を有償提供する予定だ。そこで生まれた収益をクリエイターに還元する仕組みも検討している。企業向け有償提供と新たな還元は、今回の利益成長を説明する実績として扱う段階にはない。 note公式も、収入につなげる仕組みは詳細を検討中と説明している。[1][3]
メディアや専門サービスへの示唆として読み取れるのは、すでにあるコンテンツを、読者が判断しやすい単位で整理し直す余地だ。たとえば取材記事を企業や製品ごとに集め、対象読者、導入条件、体験談、問い合わせ先を結びつける。記事一本の閲覧に加えて、比較や選定を助ける価値をつくれるかもしれない。
ただし、記事をまとめればAIに引用され、売上が増えると今回の決算が証明したわけではない。企業が掲載に対価を払う理由、読者が次の行動に進む割合、書き手への還元が参加を促すかが、今後の検証点になる。
AI関連売上の拡大と、将来のデータ利用料モデルを分ける
noteのAI関連事業は、9カ月累計で売上高約2.51億円、セグメント利益約2,800万円だった。同じ期間、noteやnote proなどを含むメディアプラットフォーム事業のセグメント利益は約8.87億円であり、足元の利益を支える中心は既存事業である。セグメント利益は、全社費用などを調整する前の事業別の利益で、合計がそのまま連結営業利益になるわけではない。[2]
AI関連事業で進めるGENIACプロジェクトは、出版社や学術団体などのコンテンツを集め、生成AIが回答時に参照できるデータベースと検索システムを構築するものだ。RAG(検索拡張生成)という、AIが外部資料を参照して回答する仕組みを用いる。決算説明資料では、プロトタイプが完成し、十数社・団体との実証やAIサービス事業者との協議を進めているとしている。[1]
現在のプロジェクトはNEDOからの委託事業として行われ、規定で認められた範囲の開発費などを精算対象として、受託売上を計上する。将来構想には、AI事業者から利用料を受け取り、利用履歴に応じて権利者へ還元するモデルがあるが、会社がデータ流通による利益貢献を目指すのは2028年11月期以降だ。現在の委託売上と、将来の商用利用による継続収益は分けて評価したい。[1]
また、AIへの情報提供にも違いがある。翔泳社が参加するこの実証では、対象コンテンツをAIの学習には使わず、回答時に一時的に参照する。同じ「AIに使われる情報」でも、学習用データと検索・参照用データでは利用の仕方が異なる。[4]
専門情報を持つ企業にとっては、情報の正確さに加え、利用を認められる権利の整理、更新、出典、利用履歴の管理が、取引条件になり得る。ただし、誰がどの情報にいくら払うのかは個別に検証が必要であり、記事の蓄積だけで新事業の採算が決まるわけではない。
自社で生かすなら、追加作業・顧客の継続・情報の再利用を測る
noteの決算からほかの事業へ応用できるのは、売上成長と費用、顧客との関係、コンテンツの使い道をつないで考えることだ。大量の投稿が集まるプラットフォームと、小規模なメディアや受託事業では条件が違う。それでも、次の問いは自社の運営にも持ち込める。
- 売上が増えるたびに、何の作業が増えるか。 調査、制作、確認、顧客対応ごとに工数を測り、AIで減らせる工程と、人が判断する工程を見極める。ツール料金と確認・修正の時間も費用に入れる。
- 顧客は初回利用後も支払いを続けているか。 新規と継続を分けて収益を追う。無料体験や割引は、終了後の有料転換と継続、支援費用まで含めて評価する。
- 蓄積した情報は、次の相談や購入を助けるか。 製品別の取材集、条件付きの比較、事例の更新など、小さな範囲から試す。閲覧数に加え、問い合わせや契約につながったかを確かめる。
noteは10月6日時点で、通期の売上高56.50億円、営業利益11億円という従来予想を据え置いた一方、利益は上振れでの着地を見込むと説明した。これは会社の見通しで、確定した実績ではない。今後は既存事業の成長に加え、note proの有料転換後の継続と、新たな法人向けメニューの収益化がどこまで進むかを確認したい。[1]
まとめ
- noteの営業利益拡大は、既存事業の成長と、売上ほど費用を増やさない運営が支えた。AIを評価するときも、導入数より追加工数や費用への影響を測ることが参考になる。
- 購読者数やnote proの動きを見ると、平均単価や契約数だけでは成長を判断できない。新規と継続、無料期間中と終了後を分けると、収益の変化が見えてくる。
- noteは、蓄積したコンテンツを購入やAIの参照へつなげる事業を育てている。情報を整理する価値に加え、支払い手、権利、還元、継続的な採算を設計できるかが次の課題になる。
出典・参考
- note株式会社「2026年11月期第3四半期 決算説明資料」(2026年10月6日)。業績・費用は5〜10、14ページ、課金指標は16〜22ページ、新規事業は40〜45、56ページ、通期見通しは12ページを参照。
- note株式会社「2026年11月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年10月6日)。損益計算書・セグメント情報を参照。
- note公式「好きなものを書いた記事が、もっと読まれて、もっと報われるように。AIコンテクストネットワークがめざすもの」(2026年9月17日)
- note株式会社「翔泳社がnoteのGENIAC事業の実証に参画。AI時代のコンテンツ流通基盤を構築」(2026年7月1日)
カバー画像:note株式会社。公式ブランドガイドラインに従い、ロゴの比率・色を保って使用。





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