同じ1か月で、上がった株と下がった株
まず比較する期間をそろえよう。以下は2026年10月5日と11月5日の東証通常取引の終値。11月5日は15時30分時点で、通貨は円、騰落率は編集部が「11月5日の終値÷10月5日の終値−1」で計算した。配当・分配金、売買手数料、税金は含めていない。
| 銘柄・コード | 10月5日終値 | 11月5日終値 | 期間騰落率 |
|---|---|---|---|
| SHIFT(3697) | 876.80円 | 1,132.50円 | +29.16% |
| レーザーテック(6920) | 46,190円 | 33,570円 | −27.32% |
| フジクラ(5803) | 5,566円 | 3,260円 | −41.43% |
| NEXT FUNDS TOPIX ETF(1306) | 436.30円 | 415.60円 | −4.74% |
株価はStock Analysisの株式分割調整済みのClose列を使用した。比較の目安として置いた1306はTOPIXへの連動を目指す上場投資信託であり、TOPIX指数そのものの騰落率ではない。[1][2][3][4]
この期間ではSHIFTが市場全体の目安を上回り、残る2社は下回った。ただし、これは1か月間の切り取りだ。上昇トレンドの継続や、下落からの反転を示すものではない。株価の変化を特定の決算やニュースだけで説明せず、企業の稼ぐ力を別に確かめる必要がある。
SHIFT:売上の伸びを、利益の伸びにつなげられるか?
アプリを更新したら決済が止まる。社内システムを入れ替えたら帳票の数字が合わない。SHIFTはこうした不具合を防ぐソフトウェアの品質保証・テストを軸に事業を広げてきた。
2026年8月期の売上高は前期比24.5%増の1,616億円、営業利益は11.6%増の174.45億円だった。増収増益だが、営業利益率は12.0%から10.8%に低下した。 売上の拡大ほどには利益が増えていない。会社は採用費の増加や、将来の大型案件の獲得に営業活動を集中させたことによる、一時的な稼働率の悪化を説明している。ニッセイコムを連結した影響などもあり、増収をすべて既存事業の自然な拡大とみなすことはできない。[5]

さらに親会社株主に帰属する当期純利益は16.8%減の74.30億円。営業利益より下の段階で、持分法による投資損失38.61億円などが影響した。売上高だけを見て好調と判断すると、この利益の違いを見落とす。[5]
会社が2027年8月期に見込む売上高は1,900億円、前期比17.6%増だ。調整後営業利益は23.4%増の250億円を予想する。ただし「調整後」は、のれん償却やM&A関連費用などを除く指標である。2026年8月期の調整後営業利益202.59億円との比較であり、通常の営業利益174.45億円からの伸び率ではない。買収に伴う費用を含めた利益も併せて読む必要がある。[5][6]
過去の比較対象として参考になるのは、ベイカレント・コンサルティングの2024年2月期だ。IFRSに基づく売上収益は23.4%増の939.09億円、営業利益は14.4%増の342.19億円。営業利益率は39.3%から36.4%へ低下した。期末のコンサルタント数は29.6%増え、稼働率は年間平均で80%台後半だった。人を増やすことで売上を広げる企業では、人数と売上の伸びだけでなく、単価・稼働率・利益率の組み合わせが重要になる。[7]
両社はサービス内容も利益率の水準も違う。比較したいのは、採用や育成の先行負担を売上と利益に変えていく構造だ。SHIFTの成長を見込むなら、採用人数の増加に加え、案件の単価や稼働率、利益率の改善まで追いたい。AIによるテストの効率化も、受注拡大と一件当たりの作業量減少のどちらが利益に強く作用するかが問われる。
レーザーテック:四半期の減益と、受注への期待を分けて読む
先端半導体は微細な回路をウェハーに転写してつくる。その原版に当たる「マスク」に欠陥があれば、多数の半導体に影響が及ぶ。レーザーテックは、このマスクなどを調べる検査装置を手がける。EUVという波長の短い光を使う製造工程の高度化が、検査需要の背景にある。[8]
10月30日発表の2027年6月期第1四半期、つまり2026年7〜9月の売上高は前年同期比25.5%減の403.69億円、営業利益は41.0%減の157.69億円だった。一方で通期予想は据え置き、売上高2,900億円、営業利益1,250億円を見込む。それぞれ前期比25.8%、18.8%の増加だ。[9]
足元の減益と、通期の増益予想が同時に存在する。 会社はFAQで、今期中に予定する製品の検収は当初の想定どおり進む見込みだと説明した。検収とは、納めた装置が仕様を満たすことを顧客が確認する手続きで、売上計上の時期を考えるうえで重要になる。[10]
同じFAQでは通期の受注見通しを期初の3,000億〜4,000億円から4,000億〜5,000億円へ引き上げた。成長を期待する根拠はここにある。ただし、これは受注済みの実績でも、今期の売上高でもない。一部部材の納期長期化も示しており、注文を得ることと、装置を完成させて売上・利益に変えることは分けて確認したい。[10]
業績の時間差を考える参考例は、露光装置大手ASMLの2024年だ。1〜3月の売上高は52.90億ユーロで、前年同期の67.46億ユーロから約21.6%減った。それでも通年の売上高は282.63億ユーロとなり、前年の275.59億ユーロを約2.6%上回った。四半期の落ち込みがそのまま年間の減収を意味するとは限らない。[11][12]
もっとも、ASMLの露光装置とレーザーテックの検査装置は異なる製品だ。同じ回復を約束する比較ではない。レーザーテックでは、今後の受注実績、検収の進み方、部材の納期、通期予想の変更を追う。受注期待だけが高まり、売上計上が遅れ続けるなら、成長の見込みを修正する必要がある。
フジクラ:強い増益の先に、増産投資を回収できるか?
AIの計算量が増えるほど、データセンター内では大量の情報をやり取りする。フジクラが手がける光ファイバーや高密度の光ケーブルは、その通信を支える部品だ。
8月7日公表の2027年3月期第1四半期、2026年4〜6月の売上高は前年同期比50.1%増の4,020.09億円。営業利益は155.1%増の1,048.28億円となり、営業利益率は15.3%から26.1%へ上昇した。今回の3社の中でも、直近四半期の利益の伸びが目立つ。[13]
会社は同日、通期予想を売上高1兆7,550億円、営業利益4,320億円、親会社株主に帰属する当期純利益3,260億円へ上方修正した。理由として、データセンター向けの需要を背景に、光関連製品の好調が続く見通しを挙げた。これは8月7日時点の会社予想であり、確定した年度実績ではない。[14]

成長を続けるための投資も大きい。フジクラは光関連製品の生産能力増強に向け、日本と米国で最大3,000億円を投じる方針を示した。5月に発表した佐倉事業所の新工場建設、最大約400億円はこの枠内であり、3,000億円に別途加算する計画ではない。[15]
強い需要が長く続けば、増産は成長を後押しする。需要が鈍れば、同じ設備が重い負担になる。 この両面を考える歴史的な比較対象が、米コーニングだ。通信インフラ投資が拡大した後の2002年、光ファイバー・ケーブルの売上高は前年から70%減少した。同社の年次報告書は、出荷数量の50%超の減少と2桁の価格下落を記している。工場閉鎖や休止にも踏み切った。[16]
当時は通信網への投資、現在はデータセンター向け需要が大きな焦点で、用途や製品構成は異なる。フジクラに同じ需要急減が起きると予測する根拠にはならない。それでも、設備を増やす局面で販売数量だけを追う危うさは共通する。増産後の稼働率、製品価格、在庫、営業キャッシュフローまで見て、増益が現金の獲得と投資回収につながっているかを確かめたい。
成長に対して、株価はいくらを払っているのか?
利益が増える企業でも、株価がその成長を先取りしていれば投資の結果は変わる。比較の入り口になるのがPER、つまり株価を1株当たり利益(EPS)で割った倍率だ。
各社が公表した通常の予想EPSを使い、11月5日の終値で編集部が計算すると以下になる。株価下落後のフジクラの倍率は低いが、それだけで底値や割安とは判断できない。
| 銘柄 | 会社予想の対象年度 | 通常の予想EPS | 計算した予想PER |
|---|---|---|---|
| SHIFT | 2027年8月期 | 52.16円 | 約21.71倍 |
| レーザーテック | 2027年6月期 | 1,003.27円 | 約33.46倍 |
| フジクラ | 2027年3月期 | 196.88円 | 約16.56倍 |
計算式は「11月5日の終値÷通常の会社予想EPS」。SHIFTとレーザーテックは10月公表、フジクラは8月公表の予想を使用した。年度末と予想の公表時点が異なり、成長率や事業リスクも違うため、倍率の順番をそのまま投資の優先順位にすることはできない。[5][9][14]
SHIFTが別に示す調整後EPS63.75円を使うと約17.76倍になる。同じ株価でも、利益の定義によって倍率が変わる。画面に表示されたPERを比べる際には、実績と予想、通常利益と調整後利益のどれを分母にしているかを確かめよう。[5]
3社とも成長を期待する材料はある。ただ、SHIFTは売上拡大を利益率の改善へつなげる力、レーザーテックは受注を検収・売上へ変える力、フジクラは増産投資を回収する力が、それぞれ次の焦点になる。予想利益が下がれば、株価が変わらなくてもPERは上がる。成長の根拠と、それが崩れる条件を一緒に持っておきたい。
過去企業との比較は、ここで挙げた事業成長や利益変動の構造に基づく。株価チャートの形を統計的に照合したものではなく、将来の上昇率や目標株価を導くものでもない。本記事は公開情報に基づく企業分析で、特定銘柄の売買や利益を保証するものではない。
関連記事:AI半導体株はまだ伸びる?AMD・NVIDIA・Broadcomを決算で比較
まとめ
- 同じ1か月でSHIFTは上昇、レーザーテックとフジクラは下落した。株価の勢いと会社の業績を分けることで、短期の値動きに判断を引っ張られにくくなる。
- 成長を見る焦点は、SHIFTの利益率、レーザーテックの受注と検収、フジクラの増産と投資回収。売上の伸びが利益や現金に変わる過程を追いたい。
- ベイカレント、ASML、コーニングの過去は、成長企業を調べる手がかりになる。将来の株価を再現する型と考えず、予想EPSやPERの条件まで確かめることが重要だ。
出典・参考
- Stock Analysis「SHIFT Historical Stock Price Data」(2026年11月5日確認)
- Stock Analysis「Lasertec Historical Stock Price Data」(2026年11月5日確認)
- Stock Analysis「Fujikura Historical Stock Price Data」(2026年11月5日確認)
- Stock Analysis「NEXT FUNDS TOPIX ETF Historical Stock Price Data」(2026年11月5日確認)
- SHIFT「2026年8月期 決算短信」(2026年10月15日)
- SHIFT「2026年8月期 通期及び第4四半期 決算説明会資料」(2026年10月15日)
- ベイカレント・コンサルティング「2024年2月期 決算短信〔IFRS〕」(2024年4月12日、発行企業の開示資料/IR BANK配信)
- レーザーテック「半導体とEUVリソグラフィ」(2026年11月5日確認)
- レーザーテック「2027年6月期 第1四半期決算短信」(2026年10月30日)
- レーザーテック「2027年6月期 第1四半期決算 1on1 FAQ」(2026年10月30日)
- ASML「2024 First-Quarter results」(2024年4月17日、SEC提出資料)
- ASML「2024 fourth-quarter and full-year results」(2025年1月29日)
- フジクラ「2027年3月期 第1四半期決算短信」(2026年8月7日)
- フジクラ「2027年3月期第2四半期(中間期)及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」(2026年8月7日)
- フジクラ「光関連製品の生産能力増強に向けた設備投資の進捗について」(2026年5月14日)
- Corning「2002 Form 10-K」(2003年提出、2002年12月期)
カバーは投資分析のイメージで、紹介した日本株のチャートではありません。写真:Tiger Lily/Pexels。Pexels Licenseに基づきトリミングして使用。





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