AMDは上昇株?期間を変えると見え方が変わる
AMDは9月4日から11月4日までの2か月では2.35%上昇した。しかし、10月5日からの約1か月では22.63%下落している。「上がっている株」という紹介だけでは、読者がどの期間の話かを取り違えてしまう。
以下は米国の通常取引の終値を使った比較だ。3社ともNASDAQ上場、通貨は米ドル。米国11月4日の終値は日本時間11月5日朝の値にあたる。株式分割を調整した終値で計算し、配当・手数料・税・為替変動は含めていない。比較対象のQQQはNASDAQ100に連動するETFで、指数そのものではない。[1][2][3][4]
| 銘柄 | 9月4日終値 | 10月5日終値 | 11月4日終値 | 9月4日から | 10月5日から |
|---|---|---|---|---|---|
| AMD(AMD) | 477.57ドル | 631.75ドル | 488.78ドル | +2.35% | −22.63% |
| NVIDIA(NVDA) | 230.36ドル | 238.90ドル | 200.13ドル | −13.12% | −16.23% |
| Broadcom(AVGO) | 357.90ドル | 362.51ドル | 325.48ドル | −9.06% | −10.21% |
| QQQ(比較用) | 718.96ドル | 756.20ドル | 691.95ドル | −3.76% | −8.50% |
騰落率は「11月4日終値÷比較開始日の終値−1」で計算し、小数第2位に丸めた。2か月でみるとAMDはQQQを上回る一方、約1か月では3社ともQQQ以上に下げた。この2時点の比較から、底打ちや反転の継続まで判断することはできない。
AMD:売上45%増でも、株価には高い期待が残る
AMDの成長を支えているのは、AI向けGPUのInstinctと、サーバー向けCPUのEPYCだ。GPUはAIの大量の計算を担い、CPUはサーバー全体の処理を担う。AIの設備投資が、両方の販売につながる構造がある。
11月3日発表の2026年第3四半期決算では、売上高が133億7700万ドルで前年同期比45%増。GAAP(米国会計基準)の営業利益は28億3200万ドル、営業利益率は21%だった。データセンター部門の売上は前年同期比97%増となった。[5]
会社は第4四半期の売上高を170億ドル、上下3%の幅で見込む。中央値では前年同期比約66%増であり、直前の四半期より成長率が高まる予想だ。ただし、これは会社予想で、受注がすべて売上になった実績ではない。[5]
ここで株価側も見たい。11月5日確認時点のStock Analysis掲載値では、AMDの実績PERは105.94倍だった。PERは株価が過去12か月の1株利益の何倍かを示す。高い倍率は成長への期待を示す一方、期待どおりに利益が伸びなければ評価が下がる余地も大きい。予想利益を使うPERとは別の指標である。[6]
AMDで次に確かめたいのは、売上成長が利益率の改善を伴うかどうかだ。 第4四半期の売上見通しに届くかに加え、会社が約55%と見込む非GAAP粗利益率も見る。非GAAPは会社が特定の費用などを調整した指標なので、GAAPの利益率と混ぜない。出荷の拡大だけでなく、採算を保って利益を増やせるかが、株価に残る期待を支える条件になる。[5]
NVIDIA:株価下落と、事業の失速は同じではない
NVIDIAは今回の2か月で13.12%下げたが、決算には強い成長が表れている。8月26日発表の2027年度第2四半期(2026年7月26日終了)は、売上高962億2100万ドル、前年同期比106%増。データセンター売上は890億ドル、117%増で、GAAP粗利益率は75.0%だった。[7]
この数字だけで「下落は割安な買い場」と結論づけるのは早い。最新の株価と直近決算は時点が異なり、株価はその先の需要や採算も評価するからだ。今回の騰落率と決算だけでは、期間中の下落原因を一つに特定できない。
11月5日確認時点の実績PERは25.31倍で、今回の3社では低い。ただし、過去12か月に利益が急増した会社では、直近の利益水準が続くかどうかで「割安」の意味が変わる。[8]
NVIDIAの成長継続を見るなら、データセンター売上の増加と粗利益率を一緒に追いたい。会社が第3四半期売上を1080億ドル、上下2%で予想していることも、一つの比較基準になる。同四半期のGAAP粗利益率予想は74.0%、上下0.5ポイントだ。会社は売上見通しに中国向けデータセンター計算製品の売上を織り込んでいないと説明する。輸出規制や顧客の設備投資、代替チップとの競争で前提が変われば、好業績が続いても株価が戻るとは限らない。[7]
Broadcom:専用AIチップの拡大を追う成長候補
Broadcomで注目したいのは、顧客の用途に合わせる専用AI半導体と、機器同士をつなぐネットワークだ。AIの処理が増えるほど、計算そのものに加え、大量のデータを受け渡す需要も増える。NVIDIAと同じAI設備投資を背景にしながら、受注する製品と顧客との関係が異なる。
9月2日発表の2026年度第3四半期(8月2日終了)は、売上高295億9100万ドル、前年同期比86%増。会社によるとAI半導体売上は167億ドルで221%増だった。第4四半期にはAI半導体売上217億ドル、全社売上348億ドルを見込む。これらの予想が実現するかが、次の成長を判断する具体的な基準になる。[9]
Broadcomを成長候補に挙げる根拠は、この開示済みのAI半導体売上と会社の次期見通しだ。一方、今回の2か月の株価は9.06%下落している。成長期待があることと、株価が上昇していることは一致しない。
同じ確認時点の実績PERは41.55倍。PERだけを並べて3社の割安順位を決めることも避けたい。買収に伴う費用など、会計上の利益に影響する項目や事業構成が異なるためだ。Broadcomは同四半期に136億6500万ドルのフリーキャッシュフローも開示している。利益とともに、事業から実際にどの程度の資金が残るかを見る材料になる。[9][10]
専用チップの案件では、顧客側の開発・導入計画が変わると、売上が立つ時期も変わりうる。AI半導体売上の伸びに加え、次期見通しの維持・引き下げ、現金収入を追う。Broadcomは、成長仮説を四半期ごとに検証できる銘柄と位置づけられる。株価の上昇を断定する材料はない。
過去のNVIDIAとCiscoから、何を比べられるか?
今回の3社に共通するのは、新しい計算需要や設備投資を、機器の売上に変える立場にあることだ。過去の比較例としてはAI需要を利益につなげた2024年度のNVIDIAと、インターネット設備投資の減速を経験した2001年度のCiscoが参考になる。
NVIDIAは2024年度(2024年1月28日終了)に売上高を126%伸ばし、609億2200万ドルとした。GAAP営業利益は42億2400万ドルから329億7200万ドルへ増加。売上拡大と利益の増加が同時に起きた例だ。[11]
株主へのリターンにも変化が出た。同社の年次報告書にある配当再投資込みの指数は、2023年1月29日の512.40から、2024年1月28日の1536.28へ上昇した。この2点から計算すると約199.82%増、約3倍である。これは決算年度の比較であり、暦年2023年の株価上昇率ではない。[12]
AMDやBroadcomとの共通点は、新しい需要を実際の売上に変えていることだ。一方、扱う製品、顧客、利益率、競争相手は異なる。NVIDIAと同じ上昇率を期待できるという比較ではない。再現を確かめるべきなのは、売上から利益へのつながりである。
逆の経路を示すのがCiscoだ。2001年度は通期売上が18%増の222億9300万ドルだったにもかかわらず、第4四半期の売上は前年同期比25%減となった。通期では10億1400万ドルの最終赤字を計上している。通期の増収だけを見ていると、足元の減速を見落とす。[13]
Ciscoの同年度の年次報告書は、需要の急減で予測に対して在庫が過剰になり、第3四半期に22億5000万ドルの追加の過剰在庫費用を計上したと説明している。AI向け設備でも、供給を確保する計画と最終需要のずれは確認すべき論点になる。[14]
ただし、これは事業構造と決算の比較だ。株価チャートの形の相関や、その後の上昇確率を統計的に検証した結果ではない。成功例と需要急減の例を並べても、現在の3社がどちらへ進むかは決まらない。今回のNVIDIAには75%の粗利益率など固有の収益構造があり、当時のCiscoと同じ結末を予告する材料にはならない。
次に伸びる条件は、売上・利益・株価に分ける
3社は事業成長を追う理由がある。ただし、株式投資では「成長する会社を見つけた」で検討が終わらない。今後6〜12か月の成長仮説を、次の決算ごとに確かめたい。
| 銘柄 | 成長を支える材料 | 次の決算で確かめる値 | 仮説を見直す変化 |
|---|---|---|---|
| AMD | データセンター売上97%増 | 第4四半期売上170億ドル±3%、非GAAP粗利益率約55%という会社予想との比較 | 出荷や売上見通しの下振れ、利益率の低下 |
| NVIDIA | データセンター売上117%増、GAAP粗利益率75.0% | 第3四半期売上1080億ドル±2%、GAAP粗利益率74.0%±0.5ポイントという会社予想との比較 | 顧客投資の減速、規制・競争で需要や採算が悪化 |
| Broadcom | AI半導体売上221%増 | 第4四半期AI半導体売上217億ドル、全社売上348億ドルという会社予想との比較 | 専用チップの導入延期、見通し引き下げ、資金回収の悪化 |
表の予想値は各社の決算発表時点の公表値で、編集部の独自予想ではない。達成しても株価上昇が決まるわけではない。利益が30%増えても、投資家が利益に払う倍率が25%下がれば、単純化した計算では株価は2.5%下がる。「1.30×0.75=0.975」という関係だ。これは仕組みを説明する仮定で、3社の利益や株価の予測ではない。
PERの掲載値はAMD105.94倍、NVIDIA25.31倍、Broadcom41.55倍だが、決算の対象期間や会計上の調整が違う。速報の株価と更新途中の利益データが組み合わされることもあるため、売買前には各社の最新開示と利用する証券会社の数値を照合したい。円での収益は為替にも左右され、米ドルの株価が上がっても円高で利益が縮む場合がある。
本記事は2026年11月5日確認の公開資料に基づく企業・株価の解説で、特定の人に売買を勧めるものではない。目標株価や上昇確率は算出していない。比較期間の騰落率、会社予想、過去の類似例を、別々の判断材料として読んでほしい。
まとめ
- AMDは2か月では上昇、約1か月では下落した。銘柄を比較するときは、通貨と取引時間に加え、開始日・終了日をそろえると見誤りにくい。
- AMD・NVIDIA・Broadcomには決算で確認できる成長材料がある。会社の売上予想と利益率を次の決算で追い、成長の期待と株価の評価を一緒に確かめる必要がある。
- 過去のNVIDIAは売上と利益の拡大、Ciscoは通期増収の裏で進む需要急減を示す。類似企業は未来の値動きを当てる型ではなく、何を検証すべきかを知る手がかりになる。
出典・参考
- Stock Analysis「AMD Stock Price History」。データ提供:S&P Global Market Intelligence。2026年11月4日通常取引終値まで。
- Stock Analysis「NVIDIA Stock Price History」。同上。
- Stock Analysis「Broadcom Stock Price History」。同上。
- Stock Analysis「QQQ Stock Price History」。同上。
- AMD「Third Quarter 2026 Financial Results」、2026年11月3日。
- Stock Analysis「AMD Statistics & Valuation」、2026年11月5日確認。
- NVIDIA「Second Quarter Fiscal 2027 Financial Results」、2026年8月26日。
- Stock Analysis「NVIDIA Statistics & Valuation」、2026年11月5日確認。
- Broadcom「Third Quarter Fiscal Year 2026 Financial Results」、2026年9月2日。
- Stock Analysis「Broadcom Statistics & Valuation」、2026年11月5日確認。
- NVIDIA「Fourth Quarter and Fiscal 2024 Financial Results」、2024年2月21日。
- NVIDIA「2024 Form 10-K」Stock Performance Graphs、2024年2月21日。株主リターンの元データはFactSet。
- Cisco「Fiscal Year 2001 and Fourth Quarter Earnings」、2001年8月7日。
- Cisco「2001 Annual Report」、Provision for Inventory。
カバーはデータセンターのイメージ写真。撮影:Brett Sayles/Pexels(Pexels License)。本記事の3社の施設ではない。




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