「3日」で変わったもの
7月5日の段階では、Grok 4.5はSpaceXとテスラの社内で動いていた。公開APIはなく、外部のエンジニアやアナリストがベンチマークを取る手段がなかった。MuskのXへの投稿と、同社の「社内テスト中」という一文だけが外部への情報供給源だった。
3日後の7月8日、xAIは一般向けに公開した。
APIの料金は入力トークン100万あたり2ドル、出力は6ドルだ。xAIは「トークン効率が2倍」を主張した。価格帯で言えば、Claude Opus 4.8やGPT-5.5が属する「Opusクラス」と同じ領域に打ってきた。ただし、2倍の効率という主張の根拠となるデータは、7月8日時点では外部から検証できない状態だった。
外部からの評価が動き始めるのは、公開から数日後のことだ。Snorkel AIはGrok 4.5を実際のソフトウェアエンジニアリングタスクで検証し、KuCoinやArtificial Analysisがモデル間の総合比較を行った。主要なコーディングベンチマークの数値が出そろったのは、公開から10日ほど経った頃だった。
「64.7対69.2」が示したもの
コーディング性能の代表指標であるSWE-Bench Proでは、Grok 4.5は64.7%を記録した。比較対象となるClaude Opus 4.8は69.2%だ。4.5ポイント差で、このベンチマークではClaudeが上回った。
一方、より長い開発タスクを模したSWEマラソンでは、Grok 4.5が29.0%でClaude Opus 4.8の26.0%を上回った。職業的な知識や推論を問うタスクでも、Grok 4.5が29%のパス率でClaude Opus 4.8の21%に勝った。
Artificial Analysisのインテリジェンス指数では、Grok 4.5は総合4位(スコア54)だった。1位はClaude Fable 5、2位はGPT-5.5、3位がClaude Opus 4.8だ。
数字を一覧にまとめる(出典:各社公式発表・Snorkel AI・Artificial Analysis、2026年7月)。
| ベンチマーク | Grok 4.5 | Claude Opus 4.8 |
|---|---|---|
| SWE-Bench Pro | 64.7% | 69.2% |
| SWEマラソン(解決率) | 29.0% | 26.0% |
| 職業的推論(パス率) | 29% | 21% |
| 総合知性指数(Artificial Analysis) | 54(4位) | (3位) |
「Claudeを超えた」と言えるかどうかは、どの指標を選ぶかで答えが変わる。コーディングの難易度が高い問題では届かなかった。複数のタスクを横断するエージェント的な用途では上回った。「超えた/超えなかった」という二択に落とし込もうとすると、元々の主張が単純すぎたことが見えてくる。
価格の観点では、xAIの主張に一定の根拠はある。入力2ドル・出力6ドルは、同等の性能帯のモデルとして競争力のある水準だ。ただし、2倍のトークン効率という主張を定量的に検証した外部のレポートは、8月中旬の段階でも数少ない状態が続いている。
5週間後の「4.6」
Grok 4.5が公開されてから5週間後の8月12日、xAIはGrok 4.6をリリースした。
ベースとなるパラメータ数は変わらず1.5兆のままだ。改善は「ポスト訓練」の部分で行われた。xAIが「Grok Build」と呼ぶコーディングハーネスを使い、実際のコーディングタスクを使ったファインチューニングと強化学習が上乗せされた。ベンチマーク上のスコアは4.5より上がったが、料金は変わらず入力2ドル・出力6ドルだ。
同時期の8月11日には、Grok Botの公開ベータも始まった。元々はxAI社内の試作品として動いていたものが、一般ユーザー向けに開放された。Grok APIとは別軸の、会話UIとしての展開だ。
公開から5週間でGrok 4.5が旗艦の座をGrok 4.6に譲ったという事実は、xAIの開発サイクルが速いことを示している。旗艦モデルの「旬」が数週間単位になっている現在の市況で、どのモデルを使うかの判断サイクルも問い直される。
xAIが示す「2.1兆」
Grok 4.6のリリース発表には、次の予告が含まれていた。パラメータ数を2.1兆に増やしたGrok 4.7が「数週間以内」に来るという内容だ。Grok 5については2026年内の公開が目標とされている。
4sAPIのロードマップ分析によれば、xAIが現時点で訓練中のモデルは7本あるとされる。それぞれがGrok 4.7から5.0に至るバリアントで、スペックと用途を分けて並走している。
Grok 4.5が「プライベートベータ」から「パブリック」に切り替わった7月8日から、4.6の登場、Grok Botの公開まで46日が経った。1.5兆パラメータは実在した。「Claudeを超えた」という主張は、測る指標によって正しくもあり、届かなかった部分もあった。
2.1兆パラメータのGrok 4.7が次に提出する答えは、また出揃ったベンチマークを見てから判断することになる。
ソース:
- Grok 4.5 Benchmark Results vs GPT 5.5 & Claude Opus 4.8 — Snorkel AI(2026年7月)
- Grok 4.5 Outperforms Competitors in AI Coding Benchmarks — KuCoin(2026年7月)
- Grok 4.6: Benchmarks, Pricing and What Changed — Codersera(2026年8月)
- xAI Grok 4.6 Explained: Models, Cost and Roadmap — 4sAPI Blog
- Grok API Pricing: Every Model, Token Cost — Mem0(2026年8月)

