「Opus級」という言葉の意味
マスクがXで使った「Opus級」という表現は、マーケティングのためのラベルだ。AnthropicがFable 5やOpus 4.8と命名する最上位モデル群と肩を並べるという意味合いで使っている。
ただ、何番目に並ぶかは明言しなかった。
独立ベンチマーク機関Artificial Analysisが7月末にまとめた評価では、Grok 4.5のIntelligence Indexスコアは54点。Claude Fable 5、GPT-5.5、Claude Opus 4.8に次いで4位だった。
「Opus級のすぐ隣にいる」というのが正確な表現で、超えてはいない。
Terminal-Bench 2.1では83.3%を記録した。首位のFable 5が84.3%なので1点差。コーディング専門の評価では実質的に横並びと言っていい。
SWE Marathonというエージェント型コーディングベンチマークでは首位に立った。「Claudeを超えた」と言えるのは、この1点だけだ。
Artificial Analysisのリードアナリストは評価報告でこう書いている。「Grok 4.5はコスト対性能比で見たとき、今年のベストチョイスになり得る。ただしそれはコーディングに限った話だ」
コーディングコスト80%減
マスクの主張でいちばん数字として正確だったのは、コストの部分だ。
Grok 4.5の料金は入力1Mトークンあたり2ドル、出力1Mトークンあたり6ドル。Claude Opus 4.8の出力料金と比べると、約76%安い。
Artificial Analysisが1タスクあたりのコストを試算すると、こうなった。
| モデル | タスク1件のコスト | 使用トークン |
|---|---|---|
| Grok 4.5(Grok Build) | 2.49ドル | 1.9M |
| GPT-5.5(Codex) | 5.07ドル | 6.2M |
| Claude Fable 5(Claude Code) | 11.80ドル | 7.2M |
タスクあたりの使用トークン数が4分の1以下なのが際立っている。Grok 4.5はコードを出力するとき、Fable 5の4.2分の1のトークン量で同じ課題を解いた。
「性能が高い」という話ではなく、「効率よく考えている」ということだ。
1日に100タスクをコーディングエージェントで処理するチームなら、月間コストの差は約27万円になる。日本円でおよそ30万円。これは月のAPI請求書として実際に効いてくる。
幻覚率が2倍になった
ここが今月いちばん報じられなかった部分だ。
Artificial Analysisの幻覚評価(AA-Omniscience)によると、Grok 4.3では25%だった幻覚率が、4.5では54%に上がった。
正確性スコアは35%から52%に改善されている。
ところが、誤りを自信を持って述べる頻度が倍以上になっている。「知識は増えたが、間違えたときの確信も強まった」という状態だ。
同機関は評価報告でこう記している。「このトレードオフは偶発的なものではない。モデルが幅広い知識を押し込むほど、不確実な领域での誤信頼が高まる傾向がある」
xAIはGrok 4.5のリリースに際して、モデルカードを出さなかった。ハルシネーション率について公式な数字は存在しない。Artificial Analysisのデータはひとつの独立評価機関によるものだが、複数の評者が同傾向を確認している。
「モデルカードなし」の選択
OpenAIはGPT-4oのリリース時に安全性評価書を公開した。AnthropicはモデルごとにFable 5、Opus 4.8と詳細な仕様と限界を記述したカードを出している。
これは今や業界の慣行になっているが、xAIは従っていない。
「透明性を下げることで速度を上げる」という選択だ。技術的な詳細を開示しないことで、競合が追随するための情報を与えない。同時に、第三者が安全性を評価するための基盤も失われる。
このモデルを企業の基幹システムに組み込む場合、幻覚率のリスクは自社で評価しなければならない。公式なドキュメントがないのだから、独立機関の評価を使うしかない。
リスク評価コストが増える分だけ、2ドルのランニングコストは手が届きにくくなる。
「安い」が通じる場面
精度だけを見れば、Claude Fable 5が首位にいる。Grok 4.5はFable 5に勝っていない。
ただし、コストの文脈では当たっている部分がある。
コーディングエージェントを大量に走らせる場面では、タスクあたり2.49ドルはFable 5の11.80ドルに対して、もう桁が違うほど安い。試行回数を増やして人間がレビューする体制があれば、幻覚率が高くても運用でカバーできる。
一方、正確性が95%以上必要な金融系や法務系の処理にGrok 4.5を使うのはまずい。幻覚率54%では困る場面が多すぎる。
どちらが正解かは、作っているものの性質による。
The-Decoderは7月の評価記事でこう書いた。「ベンチマーク上の差よりも、月のAPI請求書のほうが長く経営者の記憶に残る。その意味でGrok 4.5の賭けは、賢いかもしれない」
マスクが「Opus級」と言いたかったのも、おそらくそこだ。
ソース:
- Grok 4.5 Cuts Coding-Agent Cost 80%: Near-Frontier Speed, Higher Hallucinations — TechTimes (2026/07/09)
- Musk Called Grok 4.5 Opus-Class. Testers Ranked It Fourth. — Let's Data Science (2026/07)
- Grok 4.5: Benchmarks, Pricing & How It Compares — AIToolsReview (2026/08)
- Grok 4.5 is so cheap compared to Fable 5 and GPT 5.5 that benchmark gaps may not matter much — The Decoder (2026/07)
- Best AI Model for Coding: Grok 4.5 vs Claude vs GPT-5.5 — Valletta Software (2026/07)



