8月として過去最高になる
全米平均のガソリン価格は、この8月、1ガロン4ドルを一度も下回らなかった。8月の全日が4ドル超という状態は記録上はじめてになる。
これまでの8月の最高値は2022年だったが、今年はそれを上回る見通しだと報じられている。
原因はホルムズ海峡にある。世界の石油生産のおよそ2割がこの海峡を通るが、いま通過できている船は1日あたり数隻にとどまる。
産地が減ったわけではない。運べなくなったことで、届く量が減っている。
税制経済政策研究所(ITEP)の集計によれば、8月31日時点での米国の平均的な世帯の追加負担は629.95ドルに達した。5月末の時点では450ドル程度と報じられていたので、3カ月で180ドルほど積み上がったことになる。
ガソリンだけの話ではない
原油と天然ガスの価格が上がると、影響はガソリンスタンドの表示価格で止まらない。
発電の燃料費が上がれば電気代が上がる。天然ガスは肥料の原料でもあるので、肥料の値段が上がる。肥料が上がれば穀物の生産コストが上がり、食品価格に届く。
運送のコストも上がる。トラックの軽油代は、店頭に並ぶほぼ全ての商品の価格に薄く乗っている。
この経路は時間差で効く。ガソリンは翌週に反映されるが、食品は数カ月かかることが多い。
つまり今の629.95ドルという数字は、まだ全部が出そろった額ではない可能性がある。
誰に重く出るか
負担は世帯によって均等ではない。
所得の低い世帯ほど、家計に占める食費と光熱費の割合が大きい。同じ金額の値上がりでも、可処分所得に対する比率が違う。
通勤に車を使わざるを得ない地域に住んでいるかどうかでも変わる。公共交通が使える都市部と、車以外の選択肢がない地域では、同じガソリン価格が違う重さになる。
一方で、エネルギー価格の上昇が全ての世帯にとって同じ意味を持つわけでもない。エネルギー関連の株式や年金資産を持つ世帯には、値上がりが別の形で戻ってくる面もある。
平均値だけを見ていると、この分布は見えにくくなる。
日本の家計との違いと似ているところ
日本でも同じ経路は動いているが、見え方が違う。
政府は補助によって全国平均のガソリン価格を1リットル170円前後に抑える措置を続けている。高市首相は8月下旬、この措置を維持すると表明した。
財源は中東情勢への対応として組まれた2兆5000億円の予備費である。ただしガソリン補助に充てる分の残高は、7月末時点で2100億円程度まで減っていた。
つまり日本の場合、値上がりの一部が店頭価格ではなく国の財政に付け替えられている。米国の家計が629ドルを直接払っているのに対し、日本では価格が抑えられている代わりに予備費が減っていく。
どちらの設計が良いかは、簡単には言えない。価格を抑えれば生活は守られるが、消費を抑える力は働かない。米国のように価格に反映させれば需要は減るが、低所得世帯への打撃は大きくなる。
見ておきたいのは、日本の補助がいつまで続くかという点だろう。予備費が細れば、抑えられていた分が一度に出てくる可能性がある。
まとめ
- 米国の平均的な世帯がイラン戦争によるエネルギー価格上昇で追加負担した額は、8月31日時点で629.95ドルに達した。5月末時点の約450ドルから3カ月で積み上がっている
- 全米平均のガソリン価格は8月の全日で1ガロン4ドルを超え、記録上最も高い8月になる見通しである。原因はホルムズ海峡の通航が細っていることにある
- 日本は補助によって1リットル170円前後を維持しているが、ガソリン補助の予備費残高は7月末で2100億円程度まで減っていた。抑えられている分がいつ出てくるかが焦点になる
出典・参考
- ITEP(Institute on Taxation and Economic Policy)「Iran War Fuel Costs」(2026年8月31日時点)
- Deseret News「As Iran war hits 6-month mark, U.S. gas prices set to break August record」(2026年8月28日)
- CNBC「Iran war cost: Average U.S. household paying $450 more on gas and energy」(2026年5月29日)
- Center for American Progress「The War in Iran Will Raise Fuel Prices and Costs Throughout the Economy」
- The Japan Times「Japan to keep gas pump prices at around ¥170」(2026年8月26日)
- 内閣総理大臣官邸 高市首相 記者会見(令和8年度補正予算関連)



