固定料金は消えても固定費は残る
ガスのstanding chargeは、使用量に関係なく毎日かかる固定料金である。英国政府は約2300万世帯からこの料金をなくし、2027年かその後のできるだけ早い時期に実施する方針を示した。政府試算では、契約世帯の約60%が年平均45ポンドを節約できる。[2]
ただし、配管、検針、供給維持にかかる固定費まで消えるわけではない。政府は固定料金で回収していた費用を、ガスの使用量に応じた単価へ移す考えだ。MoneyWeekは、使用量が少ない世帯は負担が減る一方、平均より多く使う世帯は支払いが増える可能性があると指摘した。[3]
このため「2300万世帯が45ポンド安くなる」とは読めない。2300万は制度の対象、60%と45ポンドは政府試算による節約層と平均額である。断熱性能が低い住宅、医療上の理由で暖房を多く使う世帯、在宅時間が長い世帯では単価上昇の影響を受けやすい。
政府は影響を受ける少数の世帯へ追加支援を設けるとしているが、対象条件と金額はまだ示していない。
蓄電池と電気自動車の二重負担を外す
法案には電力をいったん蓄え、送電網へ戻すときの料金を見直す権限も含まれる。現在は蓄電池や車から送電網へ戻すV2Gで、実際には最終消費していない電力にも一部の料金がかかり得る。政府はこの扱いが、需要の少ない時間へ利用を移す動きを妨げていると説明する。[4]
料金を外せば、再生可能エネルギーが余る時間に充電し、需要が高い時間に戻す採算が改善する。政府の影響評価では、V2Gだけで2025年から2040年の家庭向け累計節約額が約2億ポンドになる可能性がある。これは将来予測であり、実際の参加台数、機器価格、充放電の条件で変わる。[4]
企業にとっては、工場の蓄電池、電気自動車の車両群、冷蔵設備の運転時間を調整する価値が変わる。電気料金が安い時間へ動かすだけでなく、系統へ電力を返したときの費用まで含めて投資回収を計算できるようになる。
ただし、法案は料金をすぐに変更するものではない。大臣に制度変更の権限を与え、詳細は規則や業界コードで決める。企業が設備投資へ使うには、対象となる料金、開始時期、計測方法を待つ必要がある。
送電網と地域への利益を一つの法案で扱う
英国では発電設備をつくっても、送電網へつなぐまで長く待つ案件がある。法案は送電設備の許認可と土地利用を見直し、公的なGreat British Gridを法制化する修正も予定する。政府は接続を早める狙いだと説明している。[2]
再生可能エネルギーの開発事業者には地域へ最大20%の持ち分を提案し、便益を提供する仕組みも盛り込む。発電所を受け入れる地域が、補助金だけでなく事業の収益へ参加する考え方である。
一方で、新しい油田とガス田の探査免許は出さず、既存の免許区域ではTransitional Energy Certificatesを使って追加生産を認める。政府は約6000万バレルの生産を可能にすると見込むが、これも制度上の可能性であり、確定した生産量ではない。[5]
この法案は家計支援、送電網投資、再エネ事業、北海油田を別々に扱わず、エネルギーの価格と設備を同時に組み替える。その分、見出しの節約額だけで効果を判断すると、負担の移動と実施時期を見落とす。
企業が見るべき実施順
法案は11月4日に第一読会を終えた段階で、第二読会、委員会、両院の審議、国王裁可が残る。現在の本文が同じ形で成立するとは限らない。[1]
英国で拠点や電力設備を持つ企業は、次の順に確認するとよい。
- 法案の成立と修正内容
- 料金や系統接続を定める二次立法と業界コード
- 自社の使用量と時間帯に基づく電気・ガス料金
- 蓄電池、V2G、需要調整の投資回収期間
政府は法案と二次立法で226億ポンドの社会的便益を見込む。これは政府の影響評価を合算した推計であり、企業の個別利益を保証する数字ではない。[6]
まとめ
- 英国政府はEnergy Independence Billを下院へ提出した。法案は審議中で、ガス固定料金廃止の詳細も今後の修正と規則に委ねられる。
- 固定料金の費用は使用量単価へ移るため、少量利用者は節約しやすいが、大量利用者の負担は増える可能性がある。
- 蓄電池、V2G、送電網接続、地域持ち分まで同時に変える計画であり、企業は成立後の二次立法と料金条件を待って投資判断する必要がある。
出典・参考
- UK Parliament「Energy Independence Bill」2026年11月4日
- 英国政府「Energy reforms to cut bills and put power back in people's hands」2026年11月4日
- MoneyWeek「Will energy prices rise further in 2026?」2026年10月30日
- 英国政府「Removing charges to unlock energy flexibility」2026年11月4日
- 英国政府「Ending new oil and gas licences and introducing Transitional Energy Certificates」2026年11月4日
- 英国政府「Energy Independence Bill overview」2026年11月4日







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