学生リストが52.65%
セルビア共和国選挙管理委員会の集計によると、学生リストは224万6423票を獲得した。ブチッチ氏の名を冠する「統一セルビア」は167万3241票で39.22%、イビツァ・ダチッチ氏の「安定要因」リストは9万2532票で2.17%だった。[1]
学生リストと与党連合の差は13ポイント超ある。AP通信によると、ブチッチ氏は25日夜に与党セルビア進歩党の敗北を認め、野党側で活動を続ける考えを示した。セルビア政治を14年間にわたって支配してきた勢力が、学生主導の運動に敗れた転換である。[2]
一方、26日時点の数字は集計途中の発表であり、議席配分の最終確定とは分けなければならない。国内選挙監視団CRTAは学生リストを138議席、与党連合を103議席と予測するが、それぞれ最終結果から2議席程度ずれる可能性があるとしている。[3]
駅事故から抗議が拡大
学生運動の起点は、2024年に北部ノビサドの鉄道駅でコンクリート製のひさしが崩落し、16人が死亡した事故だった。学生たちは事故の責任追及と公文書の開示を求め、抗議を各地へ広げた。APは、学生側が約2年にわたって抗議を続けた後、議会選挙で政権を担う勢力を破ったと伝えている。[2]
この運動は既存野党の有力政治家を前面に立てる方式を取らなかった。大学ごとの集会や市民参加を積み上げ、事故の責任、汚職、メディア、選挙の公正性を結び付けた。顔となる一人の指導者が見えにくいことは、政府側が個人攻撃で運動全体を弱めにくい利点になる。
同時に、選挙後には弱点にもなり得る。議会の多数を確保しても、首相候補、閣僚、政策の優先順位、各地域の代表を短期間で決めなければならない。抗議で共有した「責任を明らかにする」という要求を、予算、法案、行政人事へ翻訳できるかが次の課題となる。
高投票率が結果を動かす
CRTAは投票率を69%、投票者を440万人超と推計した。これは今世紀で最も高い水準だと評価している。学生リストの勝利を、若者だけの投票で説明することはできない。高い投票率は、学生の呼びかけが家族、地域、職場へ広がり、普段は投票しない層も動いた可能性を示す。[3]
SNS上の関心や街頭参加を、投票所へ行く行動と開票監視までつないだ点が結果を左右した。CRTAは、投票所の委員会に対立する政治勢力の訓練された代表が入り、市民も監視員や移動チームとして参加したことが、大規模な組織的不正を抑えたと説明した。
抗議の規模だけで政権は変わらない。候補者名簿、投票、監視、集計までを連続させたことで、街頭の支持が議席へ変わった。 これが、今回の結果を学生の一時的な熱狂だけで片付けられない理由である。
公正性の問題は残った
欧州安全保障協力機構(OSCE)の国際選挙監視団は、高い投票率と活発な競争を評価する一方、選挙運動機会の平等が深刻に損なわれたとした。与党の長年の優位、公的資源の重大な乱用、有権者への威圧や圧力、選挙活動の妨害が環境を損ねたと指摘している。[4]
CRTAも、投票用紙の撮影が2カ所に1カ所の割合で見られ、投票所の8%では本人確認が一貫して行われず、29%では二重投票防止のUVランプやマーキングが徹底されなかったと報告した。選挙人名簿の監査も完了していない。[3]
これらの指摘は得票差を直ちに無効とする判断ではない。監視団は投票結果を示すと同時に、次の政権が選挙管理、司法、警察、公的資源の使い方を改める必要があると述べている。勝利した側が同じ優位を引き継げば、政権交代が民主制度の回復にはつながらない。
EU加盟路線も試される
セルビアは欧州連合(EU)の加盟候補国である一方、ロシアや中国とも関係を築いてきた。新しい議会多数派は外交の向きを一夜で変えるより先に、法の支配、メディア、公共調達、汚職対策で具体的な成果を求められる。
欧州委員会の2025年版セルビア報告は、公共放送の主要ニュースで2024年に与党側が占めた放送時間が94%、野党側が6%だったと記録した。政治・経済勢力による編集への影響を深刻な懸念としている。[5]
選挙で多数を得たことは、加盟交渉の条件を自動的に満たすものではない。報道機関の独立、選挙人名簿の監査、事故関連文書の公開、公共事業の説明責任をどこまで進めるかが判断材料になる。学生運動が掲げた透明性を、政府自身に不利な情報にも適用できるかが試される。
勝利後の三つの確認点
最終結果が確定した後は、第一に議席数と首相候補、第二に少数派政党を含む議会運営、第三に選挙監視団の指摘への対応を確認したい。学生リストが単独過半数を確保する見通しでも、政策を実行する行政組織は既存制度の中にある。
ブチッチ氏と与党連合も39.22%を得ており、消滅したわけではない。APが伝えたように、同氏は野党として戦い続ける意向を示した。政権交代後の対立が街頭や制度の外へ戻らないよう、結果確定、異議申し立て、政権移行を公開された手続きで進める必要がある。
今回の選挙が示したのは、長期政権への不満だけではない。市民が高投票率と監視体制を組み合わせれば、不平等な競争環境でも政権を選び直せる可能性がある。 次の評価は、勝者がその参加を制度改革へつなげられるかで決まる。
まとめ
- 学生リストは選挙管理委員会の集計で52.65%を得て、長期与党連合に13ポイント超の差をつけた。
- 約69%の高投票率と市民による投票監視が、抗議運動を議席へ変える決め手の一つになった。
- OSCEとCRTAは選挙機会の不平等や手続き上の問題も指摘した。政権交代の評価は名簿監査、メディア、公共資源の改革まで見る必要がある。
出典・参考
- Government of the Republic of Serbia「Latest RIK data: Student List wins 52.65%, United Serbia 39.22% of vote」2026年10月26日(原文)
- AP News「Longtime Serbian leader Aleksandar Vucic was defeated by a student-led movement」2026年10月26日(原文)
- CRTA「Mobilization Against Electoral Engineering」2026年10月26日(原文)
- OSCE/ODIHR「Serbia’s early parliamentary elections saw high turnout amid a polarized environment」2026年10月26日(原文)
- European Commission「Serbia Report 2025」2025年11月4日(原文)







読者のコメント (0)
コメントを残す