インドが外交対応を取った
インドの外務省は9月19日、パキスタンの臨時代理大使サード・アフマド・ワライチを召喚した。
外務省の声明は「容認できない非専門的行為」という表現を使い、再発防止を強く求めた。
「INSコルカタが適切な航行を続けていたところに、PNSフナインが警告なしに接近し接触した」とインド海軍は説明した。接触の結果、コルカタ側に外板の軽微な損傷が生じたが、航行への支障はなかったという。
外交対応のタイミングが接触から4日後になった理由として、インド政府は事実確認に時間を要したと説明している。
パキスタン側の言い分
パキスタン海軍は別の説明をした。
「インド艦が我が海軍の演習区域に無断で進入した。PNSフナインはその旨を通告したが、応答がなかった」とパキスタン海軍は声明で述べた。
パキスタン側は、この海域での演習は事前に国際機関に通報されていたとも主張している。ただ、その演習区域がどの範囲を指すのかについての詳細は公表されていない。
5月以来の直接的な緊張
今回の海上接触は、2026年5月のインド・パキスタン間の直接的な軍事衝突以来、4ヶ月ぶりの緊張となる。
5月の「シンドール作戦」と呼ばれたインドによる越境打撃は、パキスタン領内の武装集団拠点を標的にしたもので、両国間の軍事的な直接衝突に発展した経緯がある。その後、国際的な仲介で火は収まったものの、両国関係は正常化していない。
現在もカシミール実効支配線付近での砲撃や无人機の飛行が散発しており、5月以前と比べて緊張水準は高い状態が続いている。
今回の海上接触は陸上の紛争とは別の文脈で起きているが、核保有国2国の軍同士が直接接触したという事実は、外交的に無視できる出来事ではない。
両艦の性能と「誰のミス」問題
INSコルカタはインドが国内設計・建造したコルカタ級誘導ミサイル駆逐艦だ。全長163メートル、排水量7,500トンで、ブラモスミサイルシステムを搭載している。インド海軍の主力水上戦闘艦の一つで、2026年時点で3隻が就役している。
PNSフナインはパキスタンが中国から調達したハンゴル級フリゲート艦で、中国の054A型フリゲートをベースにした設計だ。排水量は約4,000トンで、コルカタより一回り小さい。
インド海軍は「コルカタは正規の航路を航行していた」とし、パキスタン艦の接近が原因だと主張した。パキスタン海軍は逆に「演習区域への侵入があった」と述べており、どちらが正しいかは現時点で第三者の検証がない。どちらが先に機動したかを確認できる船舶自動識別装置(AIS)のデータは、両軍ともに公開していない。
アラビア海の「競合」が続いている背景
インドとパキスタンの海上活動は近年、アラビア海北部で重なる頻度が増している。
インドはグジャラート州沿岸からアラビア海にかけての海洋監視を強化しており、パキスタンはカラチを拠点に演習区域を設けてきた。双方の「通常運用」が地理的に近接しているため、偶発的な接触のリスクが構造的に存在する。
「海上での偶発的衝突を防ぐためのホットライン設置が議論されてきたが、5月以降は話し合い自体が止まっている」と、インドの安全保障研究者は述べている。通信チャネルの不在が、接触が外交問題に発展するリスクを高めている。
まとめ
9月15日の海上接触は、双方に物的被害をほとんど生じさせなかったが、インドが外務省を通じた召喚という外交手順を踏んだことで、正式な外交問題となった。
5月以来の軍事的緊張を抱えたままの両国にとって、海上での物理的な接触は火種の一つになる。偶発的衝突を防ぐための仕組みが機能していない状況で、今後の動向が注目される。
インドとパキスタンはともに核保有国だ。陸上での衝突が核の閾値に近づいたという評価が一部にあった5月と同じ緊張が、今度は海上にも波及しつつある。ホットラインや海上での行動規範の合意が、両国の間でいかに遠い存在かを今回の一件は改めて示している。
出典・参考
- インド外務省 声明(2026年9月19日)
- インド海軍 公式発表(2026年9月19日)
- パキスタン海軍 声明(2026年9月20日)
- インド安全保障政策研究機関 コメント(2026年9月)






