商社志望から人材会社へ。最初の進路はどう決めたのか?
── 2017年に新卒でキャリアデザインセンターへ入社されています。就職活動では、最初から人材業界を目指していたのですか?
木村: いや、最初は商社に行きたかったんです。友達が入っていたというのもあるし、説明会で「何でもやります」「事業を作ります」と聞いて、面白そうだと思った。
いま考えると、就活をそんなに深く考えていなかったところもあります。
ただ、商社には受からなかった。それなら、事業をつくる側になるためのスキルが身につく会社はどこか、と方向を変えました。
人材業界に行き着いて、会った人事の人がよかったので、最初の会社を選んだんです。

── 人材会社を選ぶうえで、勤務地も気にしていましたか?
木村: 名古屋や愛知から出たい気持ちはありました。東京でなく大阪でもよかったんです。
就活中、名古屋駅、栄、伏見あたりを行ったり来たりしていたら、同じ景色に飽きてしまって。「これをあと40年は無理だな」と思った。場所を変えてみたかったんです。
── 入社先を決める前、人事担当者に離職率を詳しく尋ねたそうですね。社員の定着率を重視していたのですか?
木村: いえ、むしろ逆です。若手だけでなく、30歳くらいの人や管理職も辞めることがあるのかを聞きました。上のポストが空けば、早い段階で仕事を任される機会があるかもしれないと思ったんです。
やりたい事業が決まっていたわけではないけれど、いろいろやりたかった。実力以上の裁量を持てる機会が来るかもしれない。当時は、その可能性が魅力でした。
もちろん、誰かが辞めれば自動的に役割が回ってくるわけではありません。それでも、挑戦できる余地を見て入社を決めたんです。
営業で気づいた「納得してから動く」ことの限界
── 入社後は求人広告と新卒人材紹介を経験しました。[4] 二つの仕事は、どう違いましたか?
木村: 求人広告を売る仕事と、新卒の人材紹介で企業を開拓し、担当する仕事をしました。どちらも営業ですが、中身は全然違う。
両方やってよかったし、いまの仕事にもつながっています。
── 営業時代、いまも覚えている厳しい場面はありますか?
木村: 電話をかけてアポイントが取れたと思って社長のところへ行ったら、電話をかけすぎだと怒られたことがあります。その日はなかなか帰れなかった。厳しい営業の場面でした。
── 職場の人との関係で、印象に残っている場面はありますか?
木村: 1年目に先輩から呼び出されて、詰められる面談かと思ったら誕生日プレゼントを渡されたんです。大学のサッカー部から来た自分には、そういうことをする会社が新鮮でした。
あったかかったですね。いまも前職の人とは付き合いがあります。
── 仕事がうまくいかなかった頃、ご自身の進め方で変えたことはありますか?
木村: 同期にも「素直じゃない」と言われていました。自分の中で筋が通らないと、納得するまで問答してしまう。でも、それで売れていなかったんです。
学校みたいに、納得するまで教えてもらえると思っていた。いまはそこを反省しています。
仕事をして、言われたことをまずやった方がいい場面もあると分かりました。前よりは受け入れられるようになったと思います。
── 相手への伝え方にも変化はありましたか?
木村: 細かい話ですが、昔のLINEは「、」と「。」しか使わなかったんです。新卒の学生とやり取りする仕事で、それだと冷たく見えると知った。
頑張って「!」を使えるようになりました。いまはびっくりマークまでなら使えます。
仕事がなければ、プライベートの連絡もビジネスメールも句読点だけでいいと思っていたはずです。
人間関係が悪くなくても、仕事を変える理由はある
── 求人広告と新卒人材紹介を経て、独立しています。退職を決めたとき、何が背中を押したのでしょうか?
木村: 辞めること自体に、大きな不安はありませんでした。心境が劇的に変わったわけでもない。「もういいか」「結構やったかな」という感覚でした。
飛び抜けた成果を出していたわけでもないし、会社でやれることも残っていた。でも、そろそろ場所を変えようと思ったんです。
続いた先を想像すると、もう経験したような気持ちになる。実際はそうではないんですけど、ちょっと違うことをやりたくなった。
就活のときに同じ景色をずっと見たくないと思った話と、近いところはあります。
── 退職を考えるとき、職場の人間関係が理由になる人もいます。木村さんの場合はどうでしたか?
木村: 全くなかったです。人はいい環境でしたし、いまも仲がいい。
強いて挙げれば、最後は小さい部署で新しい人がたくさん入るわけではなく、環境が固定されていた。新鮮さを求めたところはあったかもしれません。
── 人間関係への不満はなく、会社での仕事にも余地があった。それでも環境を変えたかったのは、働き方に何を求めていたからでしょう?
木村: お金と、自分で選んだと思えることですかね。自分で決めたと思えたら、頑張ろうと思える。ちょっと頑ななんだと思います。
独立してよかったのも、自分の考えに合っているところです。会社員のときにも「こうしたら面白い」と思うアイデアはあった。いまは、それを実際にやっていい権利がある。
法律とお客さんのルールを守るなかで、成果を出す方法を自分で考えられます。
顧客の採用担当として、どこまで決められるか?
── 会社を離れても、仕事の軸は採用にあります。ハイロアは採用業務代行のほか、採用動画制作や採用ブランディングも掲げています。[2] 木村さん自身は、いま何を中心に担っていますか?
木村: 株式会社ハイロアを、いまは一人で経営しています。中心は採用業務代行、いわゆるRPOです。法人向けのAI研修やコンサルティングも少しやっています。
── 採用業務代行では、求人票作成やスカウト運用、候補者対応なども行うそうですね。[2] 木村さんは、顧客企業にどんな立場で入るのですか?
木村: お客さんの会社に入って、採用担当のように仕事をします。自分は「人事として浮かない」というか、比較的なじめる。これは、やり始めてから分かりました。
会社員の延長のような仕事でもあるし、身一つでできる。自分で決めたことなら納得してやれるのも、続けやすい理由だと思います。

── 独立しても、顧客企業のルールや求められる成果があります。仕事の中で、どこを自分で決められるのでしょうか?
木村: お客さんの成果を出す方法に、考える余地があるんです。自分で工夫したやり方で採用の数字が上がると、すごく気持ちがいい。
ただ、自由にできるといっても、お客さんのルールや法律の範囲内で、ということです。
木村氏のいう裁量は、顧客の採用という目的を預かり、成果に至る方法を考えられることだ。顧客のルールと採用の結果にも向き合う。
── 一人で事業を営むなか、新しい顧客との出会いはどこから生まれますか?
木村: 新宿三丁目で飲んでいたとき、隣に座った人と仲良くなって、商談して、お客さんを紹介してもらったことがあります。
いまもその人や紹介先との関係が続いています。相手がいい人だったのも大きいし、そういう縁はたまにあります。
一人で働くと、時間と人間関係はどう変わるのか?
── 仕事の進め方は自分で考えられる。一方、働く時間も自由に決められるのでしょうか。顧客の採用担当を担う立場では、どんな感覚がありますか?
木村: 僕は、会社員が働いている時間に自分が働いていないと不安になります。業務委託なので、お客さんが社員を雇う代わりに自分が入っている面もある。
朝9時から11時に用事を済ませて、11時から働くとして、それでいいんだっけ、と考えてしまう。これは仕事の仕方やビジネスモデルによると思います。
── 前職で築いた人間関係はいまも続いているそうですね。それでも、一人で会社を営むようになって、日々の会話や人との距離にはどんな変化がありましたか?
木村: 自分かお客さんとしか話さないので、さすがに寂しくなります。会社員のころは「俺」と言っていたのに、普段は「私」か「僕」になった。
前の同期と話しているときにも「僕は」と言って、自分でちょっとショックになることがあります。
寂しくて一人で飲みに行っても、初対面の人には結局「僕」になる。昔のように「俺」と言う機会は、1か月に何回もないんですよね。
── 採用実務には細かな作業もあります。自分が得意ではない部分とは、どう向き合っていますか?
木村: 細かなルーティンは、会社員時代から得意ではありませんでした。いまも課題です。業務委託の人やAIに助けてもらっています。
性格診断の「討論者」に、木村氏が感じたこと
木村氏が試した16Personalitiesは、MBTIとは別の方式を用いる性格診断だ。[5]
── 16Personalitiesの結果は「討論者(ENTP-A)」でした。[6] 最初にどう感じましたか?
木村: 「面倒くさそうな人じゃない?」と思いました。アイコンもそんな感じがして。でも、説明を読むと、自分にも思い当たるところがありました。
── どの部分が、仕事の選び方や進め方と重なりましたか?
木村: 「自分で決めて、いろいろ試せる」というところです。言葉は少し違いますけど、仕事を選ぶときの一番最初のモチベーションに近い。細かなルーティンを先延ばしにするところも、心当たりがあります。
ただ、アイデアを出すだけで終わってしまうんじゃないか、というところは気になりました。仕事で成果を出すには行動が必要なので、そこは気をつけようと思います。診断結果の良くない面も含めて、自分の仕事の仕方を考え直すきっかけになりました。

独立を考える読者へ
── 最後に、独立を考えている読者へのメッセージをお願いできますか?
木村: 僕は自分で決めたと思えたら、頑張ろうと思えるんです。会社員のときも「これができたら面白い」と思うことはあったけれど、いまは実際に試せる。
ただ、自由に決められるのは法律やお客さんのルールの中で、です。
仕事で成果を出すには、アイデアだけじゃなく行動も必要ですし、そこは僕自身、まだ気をつけないといけないと思っています。
まとめ
- 人材業界は、木村氏が最初から目指した進路ではなかった。商社志望がかなわなかった後に人材業界へ進み、入社先の人の入れ替わりも早く裁量を得る機会として捉えた。
- 前職の人間関係に不満がなくても独立を選んだのは、顧客の成果に向けて方法を自分で考え、試したかったから。一方で、一人で働く寂しさや、時間の使い方への不安も語った。
- 営業で売れなかった頃の頑なさを振り返り、相手への伝え方を変えた。独立後も、苦手なルーティンを人やAIに助けてもらう。自分で決めることと、一人ですべてを抱えることは同じではない。
出典・参考
- マイナビキャリアリサーチLab「マイナビ ライフキャリア実態調査 2026年版」(2026年7月24日公開):20代正社員の独立意向。調査は2026年4月、インターネットで実施。
- 株式会社ハイロア「会社概要・代表紹介・事業内容」(2026年10月8日確認)
- Wantedly「木村太哉のプロフィール」(2026年10月8日確認、掲載日不明)
- 株式会社キャリアデザインセンター「会社概要」(2026年10月8日確認)
- 16Personalities「MBTI vs. 16Personalities: What's the Difference?」(2026年10月8日確認):両者の方式の違い。
- 16Personalities「討論者 ENTP型の性格」(2026年10月8日確認):タイプ名の表記。木村氏の結果そのものは収録記録で確認。
収録資料:三茶ヨイヨイ放送局「木村太哉ゲスト回」、2026年10月4日収録。文字起こし原文および整理版は編集部保管の非公開資料であり、公開URLはありません。







