山田進太郎とは何者か
山田進太郎は、フリマアプリ「メルカリ」を生んだ株式会社メルカリの創業者であり、現在は取締役兼代表執行役CEOを務める。
一行で言うなら、日本で最も使われたフリマアプリを作り、いまは理系に進む女子中高生の支援に私財30億円を投じている経営者だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年 | 1977年 |
| 出身 | 愛知県瀬戸市 |
| 学歴 | 早稲田大学教育学部 卒業 |
| 現職 | 株式会社メルカリ 取締役兼代表執行役CEO |
| 代表企業 | 株式会社メルカリ(東証プライム・4385) |
| 過去の創業 | ウノウ株式会社(2001年設立、2010年に米Zyngaへ譲渡) |
| その他の活動 | 公益財団法人 山田進太郎D&I財団 代表理事 |
生年月日については日付まで記載する情報源もあるが、会社の公式プロフィールや法定開示では確認できなかったため、この記事では「1977年生まれ」までにとどめている。
メルカリ創業は、彼にとって2社目だった
ここが、山田進太郎を語るうえでいちばん見落とされる点だ。
2013年にメルカリを立ち上げたとき、彼はすでに一度会社を作り、育て、売却し、その買い手のもとを去ったあとだった。
新卒起業の成功物語ではない。むしろ、一度出した答えに納得しなかった人間の、二回目の挑戦として見たほうが実像に近い。
山田進太郎の学歴と原点
山田進太郎は愛知県瀬戸市の出身で、東海中学校・高等学校を経て早稲田大学教育学部に進んでいる。
学歴だけを並べれば、いわゆるエリートコースの一本道に見える。だが、彼のキャリアの起点は大学の講義室ではなく、当時まだ黎明期だったインターネット企業のオフィスにあった。
学生時代、山田進太郎は楽天でインターンとして働き、楽天オークションの立ち上げに関わったと本人が複数の媒体で語っている。この点は会社の一次資料では確認できないため、あくまで本人の証言として扱う。
ただ、事実として押さえておきたいのは、この経験の中身だ。
オークションは、企業が商品を売る仕組みではない。個人が個人にモノを売る仕組みである。彼はキャリアの最初期に、CtoC取引がどう回るのかを内側から見ている。
「人が人にモノを売る」という原体験
メルカリのプロダクトを見ていると、これがただの偶然でないことがわかる。
出品の手数を極限まで削り、写真を撮って値段を付けるだけで売れる状態にする。この設計思想は、CtoC取引において何がボトルネックになるかを知っていなければ出てこない。
学歴が教育学部であることも、後の活動を見ると無関係ではない。彼が私財を投じた財団の対象は、まさに「進路選択の手前にいる中高生」だ。
最初の挑戦と、その結末
2001年8月、山田進太郎はウノウ株式会社を設立する。24歳前後のことだ。
ウノウが手がけたのは、映画情報サイト「映画生活」と写真共有サービス「フォト蔵」だった。どちらも、ユーザーが自分でコンテンツを投稿して成り立つサービスである。
2009年には、ソーシャルゲーム「まちつく!」でゲーム領域に参入する。当時はモバイルソーシャルゲームが急拡大していた時期で、ウノウもその波の中にいた。
そして2010年8月、ウノウは米国のソーシャルゲーム大手Zyngaに買収される。
譲渡額は公表されていない。各所に金額の推測が流通しているが、根拠のある数字ではないためここでは記さない。
買収の2年後に、彼は辞めている
注目すべきは、そのあとだ。
山田進太郎は買収後もZynga Japanに残るが、2012年1月に退職している。買収から1年半ほどでの離脱だった。
そして退職の翌年、2013年2月に彼は株式会社コウゾウを設立する。これが後のメルカリになる。
会社を売って得たものを持ったまま引退することもできた立場で、彼はもう一度ゼロから作り始めた。この選択が、いまのメルカリの起点になっている。
メルカリはどう生まれたか
株式会社コウゾウの設立は2013年2月。創業メンバーは山田進太郎と富島寛の2名からのスタートだった。
富島寛は大学の後輩にあたるエンジニアで、自身も起業経験があった。5月には、米シリコンバレーで起業していた石塚亮が加わる。
この3人という座組は、いまも数字に残っている。メルカリの第13期有価証券報告書の大株主一覧を見ると、山田進太郎が24.02%で筆頭、富島寛が5.27%で第4位に名を連ねている。創業から10年以上経っても、初期メンバーが株主として残っている構成だ。
フリマアプリ「メルカリ」の提供開始は2013年7月。同年11月には社名を株式会社メルカリに変更している。サービス名を社名にするという決断を、リリースからわずか4カ月で下したことになる。
上場と、そのあとの「社長業」
メルカリは2018年6月19日に東証マザーズへ上場する。上場初日の終値ベースの時価総額は約7,172億円に達した。
ここで押さえておきたいのは、上場前後の役職の動きだ。
山田進太郎は2017年4月に代表取締役社長を退き、会長に就いている。CEOとしては残ったが、社長というポジションからは一度離れた。
そして2019年9月、彼は社長に復帰する。この間に何が起きたかは公開情報だけでは断定できないが、少なくとも「一度手放して、戻した」という事実がある。
2023年9月、メルカリは指名委員会等設置会社へ移行し、山田進太郎の肩書きは取締役兼代表執行役CEOになった。ガバナンス形態を変えたうえで、彼自身は執行のトップに残った形だ。
数字で見るメルカリ
経営者を評価するなら、結局は数字を見るしかない。
2025年6月期(FY2025)の連結業績はこうなっている。
売上収益は1,926億円で前期比2.8%増にとどまった。一方で営業利益は278億円と59.2%増、親会社の所有者に帰属する当期利益は261億円で94.0%増になっている。
売上がほとんど伸びていないのに、利益だけが倍近くまで増えた1年だった。
2026年6月期は、売上も戻ってきている
2026年6月期の第3四半期累計(2025年7月〜2026年3月)では、売上収益が1,672億円で前年同期比16.1%増、コア営業利益が348億円で同74.5%増となった。
利益だけでなくトップラインも二桁で伸びている。これを受けて、通期のコア営業利益予想は400億円以上へ引き上げられた。
なお、2026年6月期の通期実績はこの記事の公開時点でまだ発表されていない。発表され次第、数字は更新する。
経営者としての判断
経歴を並べるだけなら誰にでもできる。経営者を見るときに本当に効くのは、何を続け、何をやめたかだ。
判断1: 米国事業をやめなかった
メルカリの米国事業は長く赤字が続き、撤退を論じられ続けてきた領域だった。
その米国事業は、FY2025で通期黒字化を達成している。料金体系の見直し、不正対策、UIの改善によってユニットエコノミクスを改善させた結果とされる。FY2026の方針はブレイクイーブンの維持と、通期GMVの前年比プラスだ。
山田進太郎は米国事業の再編について、日経ビジネスの取材に「反省と諦めは違う」と語っている。
赤字を10年近く抱えたまま続けるという判断は、外から見れば理解しにくい。だが結果として、黒字化という一つの答えは出た。
判断2: メルカリ ハロは1年9カ月でやめた
一方で、やめたものもある。
スポットワーク事業「メルカリ ハロ」は、2024年3月の正式開始から約1年9カ月にあたる2025年10月14日に、年内での終了が発表された。
数字を並べるとこうなる。
| 指標 | メルカリ ハロ | タイミー |
|---|---|---|
| 登録者数 | 1,200万人 | — |
| 2024年の就業実績 | 約94.7万人 | 約1,805.3万人 |
登録者は1,200万人まで積み上がっていた。だが2024年の就業実績で比べると、タイミーの約1,805.3万人に対してメルカリ ハロは約94.7万人で、およそ19倍の差があった。
登録者は集まったが、実際に働く人の数では追いつかなかったということになる。
この撤退の当否をここで評価するつもりはない。ただ、「1,200万人の登録者がいる事業を1年9カ月で畳む」という判断が実際に下されたという事実は、この経営者を理解するうえで無視できない。
判断3: 国内の成長率に自分で不満を述べている
FY2025の国内GMV成長率は4%だった。
山田進太郎はこれについて、当初10%を目標に置いていたにもかかわらず下回ったと述べている。FY2026の目標は3〜5%に設定されている。
達成できなかったことを、目標より低い水準へ置き直したうえで公にしている。この種の開示は、外部からは検証しにくい経営者の姿勢が見える数少ない場面だ。
山田進太郎の資産と報酬はいくらか
ここが最も慎重に扱うべき項目になる。個人資産は法定開示の対象ではないため、公開情報から推定するしかない。
保有株式数は法定開示で確認できる
2025年11月28日に提出された変更報告書(大量保有報告書)によれば、山田進太郎および共同保有者の保有株式数は45,748,369株、保有割合は27.75%だった。
前回報告の27.82%から割合が下がっているが、これは発行済株式数が増えたことによるもので、株数そのものは変わっていない。つまり売却はしていない。
また第13期有価証券報告書の大株主一覧では、山田進太郎個人の所有割合は24.02%と記載されている。
| 順位 | 氏名・名称 | 所有割合 |
|---|---|---|
| 1 | 山田進太郎 | 24.02% |
| 2 | MSIP CLIENT SECURITIES | 7.61% |
| 3 | 日本マスタートラスト信託銀行 | 7.52% |
| 4 | 富島寛 | 5.27% |
| 5 | 株式会社suadd | 4.07% |
推定資産の算出式
メルカリ株式(4385)の2026年7月31日終値は4,290円、同日の時価総額は7,087億円だった。
これを使うと、次の計算になる。
45,748,369株 × 4,290円 = 196,260,503,010円
≒ 約1,963億円(推定)
ただし、この数字にはいくつも注意書きが必要だ。
- 45,748,369株は共同保有者を含む大量保有報告書上の株数であり、山田進太郎個人の保有分と一致しない
- 有価証券報告書における個人名義の所有割合は24.02%
- 株価は日々変動するため、この金額は2026年7月31日という特定日の時価による推定にすぎない
- メルカリ株以外の資産(現金、不動産、他社株式など)は一切含まない
したがって「山田進太郎の資産は約1,963億円」と断定することはできない。あくまで、法定開示された株数に特定日の株価を掛けた推定値である。
なお、Forbesは2019年3月時点で総資産1,440億円・日本33位、2022年版で日本8位と推計している。これはForbesの独自推計であり、法定開示に基づく数字ではない。
役員報酬は年間2億3,100万円
一方、役員報酬は有価証券報告書で開示されている。
FY2025における山田進太郎の報酬は231百万円で、内訳は固定報酬162百万円と変動報酬69百万円だった。同期の役員報酬総額は999百万円である。
保有株式の推定時価と比べると、報酬は3桁小さい。彼の経済的な立ち位置は、給与ではなく保有株式でほぼ決まっているということになる。
いま何をしているのか
「山田進太郎 現在」で検索する人が知りたいのは、たぶんメルカリの決算ではない。
2021年7月、彼は私財30億円を拠出して一般財団法人 山田進太郎D&I財団を設立した。翌2022年には公益財団法人へ移行している。2026年で設立5周年になる。
財団の中心事業は、理系を志す女子中高生への支援だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| STEM女子奨学助成金の累計支援 | 全国の中高生女子 約1,700名 |
| 2026年度の募集 | 500名程度に一律10万円(応募締切 9月30日) |
| 進学への効果 | 受給者のSTEM学部進学率が非受給者比で +26.6ポイント |
| Girls Meet STEM | 参加前後で理系選択意向が約58.6%上昇 |
注目したいのは、支援の効果を数字で出している点だ。
受給者のSTEM学部進学率が非受給者と比べて26.6ポイント高いという結果を財団は公表している。寄付額ではなく、進学率という結果で効果を示す設計になっている。
早稲田大学教育学部を出た経営者が、進路選択の手前にいる中高生を対象に選んでいる。この一致を偶然と見るかどうかは読む人次第だが、少なくとも彼が私財を投じた先はここだった。
発言から読む経営観
一次ソースが確認できる発言だけを拾う。
「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」
メルカリの現行ミッションだ。
初期のミッション「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」から刷新されたもので、対象がモノから「あらゆる価値」へと広がっている。フリマアプリの会社という自己定義から出ようとする意思が読み取れる。
「AI-Native Companyとしての組織基盤を構築し」
2026年6月期の経営方針として、本人がトップメッセージで掲げている表現である。
プロダクトへのAI搭載ではなく、組織の基盤としてのAIを先に置いている点が特徴的だ。
「反省と諦めは違う」
米国事業の再編について、日経ビジネスの取材に答えた言葉。
10年近く赤字を続けた事業を畳まなかった判断と、この一言は素直につながる。そしてその米国事業は、FY2025で通期黒字化した。
「僕は臆病すぎた」
Business Insider Japanのインタビューで、新経営体制と後継者について語った際の発言だ。
27%超の株式を持ち、創業から10年以上CEOであり続けている人物が、後継者を話題にし始めている。この事実自体が、次の10年を見るうえでの材料になる。
よくある質問
山田進太郎の学歴は?
早稲田大学教育学部の卒業です。中学・高校は東海中学校・高等学校とされています。学生時代に楽天でインターンとして働き、楽天オークションの立ち上げに関わったと本人が語っています。
山田進太郎の資産はいくら?
法定開示されていないため断定できません。大量保有報告書に記載された保有株式数45,748,369株(共同保有者を含む・2025年11月21日時点)に、2026年7月31日終値の4,290円を掛けると約1,963億円になります。これはあくまで特定日の株価による推定値で、メルカリ株以外の資産は含みません。
山田進太郎の年収は?
2025年6月期の役員報酬は231百万円です。内訳は固定報酬162百万円と変動報酬69百万円で、有価証券報告書に開示されています。
山田進太郎は何歳?
1977年生まれとされています。会社の公式プロフィールや法定開示では生年月日までは確認できないため、この記事では年までの記載にとどめています。
メルカリの創業者は誰?
株式会社コウゾウ(後のメルカリ)は2013年2月に山田進太郎と富島寛の2名で設立され、同年5月に石塚亮が参画しました。富島寛は現在も大株主一覧に5.27%で名前があります。
山田進太郎はいまメルカリの社長?
2023年9月に指名委員会等設置会社へ移行して以降、肩書きは取締役兼代表執行役CEOです。なお2017年4月に一度社長を退いて会長となり、2019年9月に社長へ復帰した経緯があります。
この記事の更新方針
この記事の数字は、時間が経てば変わる。
2026年6月期の通期決算が発表されたとき、大量保有報告書の変更報告が提出されたとき、有価証券報告書が公表されたとき、そして株価が大きく動いたときに、該当箇所を更新する。
経営者を理解するというのは、過去の年表を暗記することではない。いま何を決めているかを追い続けることだ。
山田進太郎は、1,200万人が登録した事業を1年9カ月で畳み、10年赤字だった事業は畳まなかった。次に彼が何を残し、何をやめるのか。それを見る材料として、この記事の数字を使ってもらえたらと思う。
出典
- 株式会社メルカリ IRライブラリ(決算短信・有価証券報告書)
- 2026年6月期 第3四半期決算短信(2026年5月11日)
- 株式会社メルカリ トップメッセージ(山田進太郎CEO)
- 株式会社メルカリ 会社概要・沿革
- 日本経済新聞「メルカリのコア営業利益45%増 26年6月期、国内フリマ好調で上振れ」
- 日本経済新聞「メルカリ、スポットワーク『メルカリ ハロ』終了」
- 日経ビジネス「メルカリ山田社長『反省と諦めは違う』米国事業再編の心境を語る」
- Business Insider Japan「メルカリCEO山田進太郎『僕は臆病すぎた』」
- 株探ニュース「メルカリ、山田進太郎氏らの大量保有報告書(変更報告書No.8)」
- 公益財団法人 山田進太郎D&I財団
- 山田進太郎D&I財団 STEM女子奨学助成金
- Impress Watch「メルカリ、スポットワーク撤退で収益改善 好スタートの第1四半期決算」


