中心気圧890hPaは何を意味するか
890ヘクトパスカルという数字は、台風の世界では「超えてはいけない壁」に近い。
日本の台風史上で最も強かった「室戸台風」(1934年)の中心気圧は911hPa。2013年にフィリピンを壊滅させたスーパー台風ハイヤンは895hPaだった。ラガサはその2つをともに下回っている。
PAGASAの予報官フアン・デ・ラ・クルスは声明の中でこう言った。「我々はこれをカテゴリー5相当と判定している。このような台風は10年に一度あるかないかだ」
ルソン島北部の沿岸低地では、高さ10メートルを超える高潮が発生する可能性があると当局は警告している。島の北端に位置するバタネス諸島では、橋が数本流されたとの報告が現地メディアに届いている。
台湾への上陸は22日夜の見通し
ラガサの進路予測では、フィリピンを通過した後に台湾東部へ上陸するのが9月22日夜から23日未明とみられている。
台湾の中央気象局は9月21日朝の時点でラガサを「最強クラスの台風」と位置づけ、東部・南部の沿岸市に対して避難準備の開始を指示した。上陸時の中心気圧は台湾通過後も930〜950hPa程度で維持される見通しで、2015年の台風スーデロール以来、最大規模の直撃になる可能性がある。
花蓮市や台東市では早くも住民への避難勧告が出ており、鉄道・バスの計画運休が始まっている。
中国南部への接近は23日以降
台湾通過後、ラガサは中国広東省か福建省へ向かうとみられている。
中国国家気象局は9月21日に「緊急警報(橙色)」を発令し、広東省・福建省・浙江省の沿岸部に最大10メートルの高潮と200ミリを超える降水を警告した。沿岸部の漁船入港と建設現場での工事中断も命じられている。
懸念されているのはサプライチェーンへの影響だ。深圳・広州を中心とする珠江デルタ地帯にはエレクトロニクス工場が集中しており、数日間の操業停止が見込まれている。iPhoneの部品製造や半導体パッケージングを担う工場もこのエリアに多い。台風の規模次第では、10月の出荷計画に影響が出る可能性があるとサプライチェーン業界の関係者は見ている。
なぜこの台風はここまで強くなったのか
2026年の西太平洋の海面水温は、過去の平均より1.5〜2度高い状態が夏から続いている。
台風は温かい海水から熱と水蒸気を補給しながら強まる。海面水温が高いほど、より深く発達する。ラガサは台湾東方の海上で急速に発達し、24時間で中心気圧が50hPa以上降下した。「急速強化」(rapid intensification)と呼ばれる現象で、今年の西太平洋ではすでに3回目の発生だ。
気候科学者たちは長年、温暖化によって台風の最大強度が上昇するという研究結果を出し続けてきた。WMOの2025年報告書では「カテゴリー4以上の台風の発生頻度が1980年代比で30%増加した」と記されている。ラガサはその傾向の最新の事例だ。
まとめ
超大型台風ラガサが9月21日にフィリピン・ルソン島北部へ上陸した。中心気圧890hPaは今年最強で、スーパー台風ハイヤンに迫る規模だ。フィリピンでは100万人以上が避難し、台湾・中国南部への影響も48時間以内に及ぶ。
- 中心気圧890hPaは近年の台風で最強クラスで、PAGASAはカテゴリー5相当と判定している
- 台湾への上陸は22日夜の見通しで、中国南部の珠江デルタのサプライチェーンへの影響も懸念されている
- 高い海面水温が台風の急速強化を促しており、気候変動との関連を指摘する気候科学者が多い






