「慣習法廷」が壊れるということ
ダルフールの慣習法廷は、植民地時代から続く「ナティブ・アドミニストレーション」制度の核心にある。
部族長や長老が調停役を務め、土地の境界線の確認、婚姻の認証、相続の裁定を行う。政府の正規裁判所が届かない農村の辺境では、この慣習法廷だけが唯一の法的な場として機能してきた。爆撃による建物の破壊は、その場所が長年かけて蓄えてきた信頼と秩序への攻撃でもある。
2023年4月にスーダン全土で内戦が始まって以来、ダルフールはRSF(即応支援部隊)が広範な支配を確立している地域だ。RSFの指導者ヘメダンティ(モハメド・ハムダン・ダガロ)の出身地でもあり、組織の人員と装備が集中している。今回の無人機攻撃はRSFではなくSAF側が行ったとみられており、これは政府軍が自国民の法廷を爆撃したことを意味する。
200人超が別の場所で
慣習法廷への攻撃と時期を同じくして、SHRCは別の報告を公開した。
8月上旬、RSFが北ダルフール州の複数の村で民間人200人超を殺害したというものだ。犠牲者の多くは女性と子どもだったとされ、大規模な集団埋葬が確認されている。
これらの報告が正確なら、8月のダルフールだけで200人を超える民間人が1週間以内に命を落としたことになる。SAFとRSFの両陣営がそれぞれ独立して民間人を攻撃しているという、この内戦の構造が、8月最初の週に凝縮して現れた形だ。
国連は8月5日、「ダルフールにおける民間人への暴力が急速に悪化している」とする声明を発表した。人道支援物資の搬入路が遮断されており、食料と医薬品が届かない地域が急拡大していると付け加えた。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年4月 | ハルツームで内戦が勃発 |
| 2023年秋 | RSFがダルフール州都エルファシールに侵攻 |
| 2024〜2026年 | エルファシールで包囲戦が継続 |
| 2026年8月2日 | ダルフール慣習法廷に無人機攻撃、35人死亡 |
| 2026年8月上旬 | RSFが複数の村で民間人200人超を殺害(SHRC) |
沈黙が続く理由
スーダンを実効支配するアブドゥルファッタハ・アルブルハン将軍は、今回の攻撃についてコメントを出していない。
2009年、前任者のアル・バシルに対して国際刑事裁判所(ICC)がジェノサイドの逮捕状を発行した。アルブルハンも国際的な批判を受けているが、西側の制裁は部分的にとどまっている。アラブ首長国連邦がRSFを、エジプトとサウジアラビアがSAFを間接的に支援していると言われており、国際社会の利害が錯綜している。
スーダンの内戦は、世界のメディアが大きく取り上げることの少ない紛争だ。ウクライナ、ガザ、ミャンマーが同時進行するなかで、取材リソースが分散している。
だが犠牲者数という点では、スーダンは現在進行形の武力紛争のなかで最大規模に属する。2023年4月以降、少なくとも1万5000人が死亡し、1000万人以上が国内で家を失った。難民の流入はチャド、中央アフリカ、エジプトに及んでいる。
ダルフールの慣習法廷で命を落とした35人は、その数字に静かに加えられた。
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