8月の氷河崩壊が3つの河川を同時に押し流した
8月下旬、ヒマラヤ山塊で大規模な氷河と岩盤の崩壊が起きた。[1] 崩壊した氷と岩は、ボテコシ川、上流トリスリ川、ナラヤニ・ガンダック川の3本に一斉に流れ込んだ。
3つの流域を洪水が同時に下り、橋や建物を次々と破壊した。 被害が広域に及んだため、ラスワ、ヌワコット、ダーディング、ゴルカ、チトワンの各地区が影響を受けた。
ヒマラヤ地域は世界平均の約2倍の速さで温暖化が進んでいる。[2] 今回の規模の氷河崩壊は、気候変動がリスクを高めている現象の一つだ。
今回の氷河崩壊で生じた土砂は下流の集落の基礎を直撃した。 通常の洪水よりも速い速度で流下し、逃げる余裕がなかった集落もあったと報告されている。
ラスワ、ヌワコット、ダーディングの3地区では橋の多くが流され、集落の孤立が続いている。 道路の修復には数ヶ月を要するとされており、冬を前に物資の確保が急がれている。
ネパール政府は被災した5地区に非常事態宣言を発令し、軍や警察を動員した。 しかし道路が寸断された地区では、地上部隊が現地に到達するまでに数日を要した。
洪水から6週間以上が経った今も、多くの集落では再建が始まっていない。 道路が寸断されたままの地域は、物資を空輸に頼るしかない状況が続いている。
ネパールは年間降水量の大半を6月から9月に受け取るが、今年は氷河崩壊が期末に重なった。 通常のモンスーン洪水では起きない規模の流量が3つの河川を同時に押し上げた。
「集落は戦場のような光景になっている」
国連のスタッフは、8月の被害を受けたラスワ地区を「戦争が起きた後のような光景だ」と表現した。[3] 橋が全て流され、建物の多くが基礎だけを残して跡形もなく消えていた。
84人の子どもを含む死者の数が確認されるにつれ、地域社会が受けた喪失の深さが浮かびあがってきた。 多くの家族が行方不明の親族の情報を求め続けている。
約5,300人が今もどこにいるかわからない。 外国籍の行方不明者も650人以上含まれており、国際的な捜索が続いている。[1]
行方不明の外国籍者には、ヒマラヤ登山のために入山していた登山客も含まれている。 トレイルの多くが崩壊しており、山岳地帯での捜索が難航している。
地域の農業も壊滅的な打撃を受けた。 8月下旬は収穫直前の農作物が育っていた時期で、洪水によって多くの農家が今年の収入と来年の種をともに失った。
捜索が続く中で、家族を失った住民の心理的な負担も深刻になっている。 国連はカウンセリングを含む心理支援のプログラムも支援パッケージに加えている。[3]
10月12日にゴルカ県で新たな洪水が発生した
8月の大規模災害から6週間後、ゴルカ県で別の洪水が起きた。 10月12日の山崩れがブディ・ガンダキ川をせき止め、川の水位が急上昇した。[2]
5人が行方不明になり、近隣の集落から95人が避難した。 国の災害対応機関は直ちに住民の移動を支援した。
8月の被害が大きかった流域と重なる地区もあり、二重に影響を受けた世帯がある。 既に住む場所を失っていた住民にとって、再び避難を強いられることは特に負担が大きい。
ゴルカ県では8月よりも小規模だが、上流の地形が不安定なため再発する可能性がある。 10月に入っても降雨が続いており、地盤の緩みが回復していない地区がある。
行方不明者5人の捜索は現地の救助隊が続けているが、水量が高いまま維持されており難航している。 川が引くまでの数日間は、陸上からのアクセスも制限される。
ゴルカ県での今回の洪水は、8月の被害地域から数十キロしか離れていない場所で起きた。 同じ地域での繰り返し被災は、住民が復興を始める前に再び避難を強いられることを意味する。
道路が使えない区域では、支援物資の届け先の特定から始める必要がある。 国連食糧農業機関(FAO)のドローンがその確認作業に使われている。
「ドローンが道路の届かない被害地域を上から調べている」
FAOは10月の支援活動に無人機を投入した。[2] 「ドローンが道路で到達できない被害地域を上から調べている」と国連の担当者は説明した。
人工衛星画像も同時に活用されており、国連人道問題調整事務所OHCAが分析を担っている。 地上に入れない状況下で被害の全体像を把握するための手段として機能している。
徒歩での到達に数日かかる山岳地帯では、ドローンで先に状況を確認してから支援を送る順序が現実的だ。 人員と物資の投入先を絞り込むためにも、空からの情報収集は欠かせない。
衛星データを使った被害推定は、被害面積と建物の崩壊率を算出できる。 地上部隊が入れる前に支援物資の必要量を概算する手段として活用されている。
ただしドローンや衛星が把握できるのは地上の状況だけだ。 生存者の数や医療ニーズは、実際に人が入らないと正確にはわからない。
今回の災害は、気候変動が高山地帯にもたらすリスクを改めて示すものとなった。 ヒマラヤの氷河が急速に溶けることで、同様の氷河湖決壊洪水が増える可能性がある。
UNICEF、WFP、FAOが援助物資を送り始めた
国連世界食糧計画WFPは、直接食べられる食料と救援物資を積んだトラック3台をゴルカ県に向けて出発させた。[2] 8月の洪水後には合計約80トンの食料を輸送し、9,200人が15日分の支援を受けた。
UNICEFは衛生用品キット、水処理用品、尊厳キット、冬物衣料、学用品を事前に集積している。 今回の10月の洪水にも、この備蓄から必要な物資が配給される予定だ。
精神的なケアも支援の一部として準備されており、UNICEFは心理的サポートのプログラムを提供する。 家族を失った子どもや被災後の長期避難生活が続く住民が対象だ。
特に緊急の支援を必要とする43,000人以上の女性と女児が確認されており、重点的なアプローチが求められている。[3] 出産を控えた女性や、衛生用品が確保できない状況に置かれた女児が多く含まれる。
出産を控えた女性には移動手段と医療スタッフの両方が必要だが、道路が通じない集落では届いていない。 UNICEFは助産師の派遣計画を立てているが、アクセスに制約がある。
学用品の配付は子どもが学校に戻るための準備でもある。 大規模災害後に学校が避難所として使われることが多く、子どもが教育から離れる期間が長くなりやすい。
WFPが配給する食料は15日分を1セットとして世帯に届けられている。 道路が使えない地区では次の配給が届くまでの期間が延びるため、物資の計画的な管理が求められる。
WFPは今後も追加輸送の計画を立てており、ゴルカ県の住民への継続的な支援を予定している。 食料の安定供給が確保できれば、住民が落ち着いて再建計画を立てられる環境が生まれる。
今回の災害対応では、国連各機関が初動から連携してドローン、食料、衛生用品を一斉投入した。 複数機関が役割を分担して動く体制は、今後の山岳地帯での支援モデルになり得るという見方もある。
南米でもエルニーニョによる洪水が発生しており、気候変動が各地の水害リスクを高めている。ネパールの事例は、その広がりを改めて示した。
まとめ
- 8月の洪水で1,400人以上が死亡し、約5,300人が今も行方不明のままとなっている
- 10月12日にゴルカ県で新たな洪水が発生し、国連はWFP食料、UNICEF衛生用品、FAOドローンによる支援を即日開始した
- 国連はドローンと衛星画像を組み合わせ、道路の届かない被害地域の状況把握から支援を進めている







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