24発が落ちてきた夜
キーウ市内と周辺で、17人が死亡した。
前日の8月4日には、別の攻撃でキーウ地域の14人が命を落としていた。
2日で31人。ロシアとウクライナの戦争が始まって以来、最も激しい首都への空爆が続いた48時間だった。
ゼレンスキー大統領は5日の朝、声明を出した。
「引き渡しの遅れや、弾道ミサイル迎撃システムの提供を拒む姿勢が、まさにこのような惨劇を引き起こしている」
強い言葉だった。しかし同時に、現実を正確に描写していた。
「1発も落とせなかった」という事実
ウクライナが弾道ミサイルを迎撃できる唯一の兵器は、米国製のパトリオット防空システムだ。
問題は、そのパトリオットの迎撃ミサイルが尽きかけていることだ。
米国防省の内部資料によると、2026年上半期にウクライナへ供給された防空ミサイルの量は、2025年の同期比で3分の1以下に落ちた。
ウクライナのある国防当局者は「私たちは今、空腹のまま戦っている状態だ」と表現した。
その結果が今回の「24発全落下」だ。ロシアはパトリオットの在庫が薄いことを正確に把握した上で攻撃のタイミングを選んでいる、とNATO当局者は分析している。
| 兵器 | 発射数 | 迎撃数 | 着弾数 |
|---|---|---|---|
| 弾道ミサイル | 24発 | 0発 | 24発 |
| 対艦ミサイル | 4発 | 不明 | 不明 |
| シャヘードドローン | 115機 | 98機 | 17機 |
パトリオットの在庫が空に近い
なぜ供給が減ったか。
米国の国防予算を巡る議会の対立が長引いたことが一因だ。2026年前半、ウクライナへの軍事支援パッケージの承認が3か月遅れた。
もう一つの要因は、米軍自身の需要だ。中東でのホルムズ危機に対応するため、米軍は中東方面にパトリオットのユニットを展開させた。ウクライナ向けの余剰が減った。
欧州各国もパトリオットの補充に動いているが、生産能力の限界がある。製造元のレイセオンは「増産している」と言うが、工場の出荷ペースは需要に追いついていない。
ロシアが何を狙ったか
今回の攻撃でロシアが標的にしたのは軍事施設だけではない。
ロシア国防省の発表によると、「輸送・物流拠点」「ドローン部品の保管・流通施設」「電子戦システム」を狙ったという。
要するに、ウクライナが戦争を続けるための補給インフラだ。
ウクライナがこの1年で大きく依存してきたのが、小型ドローンを使った前線の偵察と攻撃だ。その生産・補給拠点を後方から壊すことが、ロシアの戦略の一部になっている。
ゼレンスキーが「ドローン部品の施設を狙われた」と発表したことは、この解釈を裏付けている。
この先で何を見るか
ウクライナにとって最大の課題は、防空の穴を埋めることだ。
ゼレンスキーはこの攻撃の翌日、改めてNATO加盟国に追加の防空システムの供与を求めた。特にドイツとオランダに「パトリオットをもう1セット」と直接要請した。
ドイツのショルツ首相は「前向きに検討する」と述べた。しかし「前向きに検討」は決定ではない。
ロシアはこの攻撃の後も、翌日以降に東部前線でのミサイル攻撃を続けている。
供給の遅延とロシアの攻撃のスピードを比べると、今のところロシアが速い。
ゼレンスキーは8月5日の声明の最後にこう付け加えた。
「我々は弾薬が届くのを待っている。毎日が待てない状況だ」
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